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年賀状のお年玉
小学生の時に、親父から年賀状の裏に印刷する木版画を教えられた。
彫刻刀でその年の干支を堀リ、墨や絵の具をつけて一枚一枚印刷した。
木版から彫りやすいゴム版に変わり少し楽になった。
更に一大革命のプリントゴ◯コが登場し、枚数も増え、乾かすのに床がハガキだらけとなった。
今思えば途方もない時間と労力をかけて作っていたもんだ。
その手間が無くなったのがパソコン登場。
あっという間にできてしまうが、それでも図案を考え、結構凝った賀状にした。多い時には200枚を超えていた。
しかし時勢の流れもあり、昨年はいよいよ、これで年賀状じまいですと書いた。
なので、年末には一切何もしなかった。
ところが、元旦には年賀状40枚近くが我が家に届けられた。
一応ラインで挨拶はしているものの、返信はせなとコンビニに年賀状を買いに行く。が、全て裏面に図柄が印刷されたハガキしかない。
今までは全て手作りしてきたものだから、何も印刷されていない無地のハガキでないと、なぜか気がすまない。
(何が年賀状じまいや、、、書く気満々やな)
郵便局がやっと開いた6日に買いに行く。
「もう10枚しか残ってません」
「え〜皆、年賀状は書かないんで少ないのはわかるんやけど、もう無いの?」
急いで別の郵便局に向かい残りの30枚を買う。年賀状のためにハシゴやて。
ここにきてえろうせわしくなってきた。
無地を買ったといって、一からパソコンで作る気はもう起こらず、一枚一枚、筆で書くことにした。
出す相手によって色々と書く内容が違ってくるので、結局、丸一日掛かってしまった。
次の朝
ポストに入れようとすると、既に年賀状用の受け口はなく、平生の体裁となっていた。
『もう遅いんかい!確かに七草や』
といって出さんわけにもいかず40枚を入れたビニール袋ごと投函した。
ま、遅うなっても届くやろな。
次の日
郵便局から一通の封筒が届く。
正月早々、巳年で定期貯金でもせえゆうんかいな。
『お出しいただいた年賀状の中に写真が混ざっていましたのでお返しします。◯◯郵便局』
見ると投函したビニール袋の中に一枚の写真が入っている。
あっ!
年賀状を書いている間に、引っ張り出してきた30年前の写真や!
友達の家族と花見にいった時のもので、満開の桜の木の下で30人位の懐かしい顔が笑顔で写っている。
皆若い。当時幼稚園だった子が今では親となっている。
年賀状と一緒に写真をポストへ入れた自分のうっかりはさておき、写真が戻ってきた喜びが大きい。
というより、写真をわざわざ送り返してくれた思いもかけない行為の方が、心に響いた。
直ぐに郵便局に電話をする。
すると、余りにこっちが興奮して要領を得なかったのか、相手は、苦情の電話だと思ったらしく終始怪訝そうに暗い声で話す。
「あのな、これお礼の電話や。気づかずポストに入れた写真を、わざわざ届けてくれてありがとうと言ってんや」
そこで初めて、安心したのか相手の声が急に明るくなる。
「え!良かったですね」
郵便といえば誤配や遅配など苦情の電話しかあらへんやろうし、感謝のお礼などないやろうな。
なんか正月早々お年玉あげた気分や。
いや逆や、お年玉をもろうたんわワテの方やった。
そう言えば今日1月8日は勝負の日やそうな。
一か八か、お年玉年賀ハガキが当たるんとちゃうか!
ま、いつもの切手シートやろうが!