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天風の剣

162
右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 …
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【創作長編小説】天風の剣 第162話

【創作長編小説】天風の剣 第162話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第162話 絶対、また会おうねっ。 ―

 翠……!

 キアランは息をのむ。
 四天王青藍の、爆発のような衝撃波の影響が消え、雪の大地があらわになる。
 つい先ほどまで、青藍の足にしがみついていた翠の姿は――、どこにもない。

「翠―っ!」

 空中に停止し続けるシトリンに、抱えられたキアラン。翠のいたはずの大地に向け、あらん限りの声を張り上げた。
 

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【創作長編小説】天風の剣 第161話

【創作長編小説】天風の剣 第161話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第161話 絶対命令 ―

 凄まじい音が鳴り響き、明滅する空。

 翠……!

 翠と四天王青藍が激突していた。地上のキアランは、どうすることもできない。
 ただ空を見上げることしかできないキアランの耳に、翠の怒鳴り声が届く。

「キアラン! 足を止めるな! お前は進め!」

 キアランは、ハッとした。

 翠が上空で戦っているのは、私を守るためでもある

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【創作長編小説】天風の剣 第160話

【創作長編小説】天風の剣 第160話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第160話 友だちだから ―

 意識が遠のいていく。

「うっ……!」

 シルガーは、うめき声を上げた。口から血があふれ出る。
 シルガーは、岩に激突していた。
 青藍の衝撃波によって、シルガーもシルガーの背後の木々も、それから近くの木々も吹き飛ばされていた。そのため、シルガーはずいぶん遠くの岩まで飛ばされていた。
 
 青藍の攻撃を、まともにくらって

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【創作長編小説】天風の剣 第159話

【創作長編小説】天風の剣 第159話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第159話 敗北と、希望と ―

 風を切る。
 急降下するシトリンの頬を、かすめてなにかが飛んで行った。

「ふん。邪魔くさい」

 シトリンは、動じることなく飛行を続ける。
 ほどなく背後から爆発音が聞こえる。シトリンの頬をかすめた物体は、白銀によって弾かれた、黒裂丸の弾丸のような攻撃だった。

「花紺青おにーちゃん、私は黒羽おねーちゃんのほうへ行く!

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【創作長編小説】天風の剣 第158話

【創作長編小説】天風の剣 第158話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第158話 目の前のチャンスなら ―

 シルガーの眼前に立つ、新しい王。
 それは、四天王青藍。
 シルガーは、血に染まった青藍の六本の腕を見つめながら、叫んでいた。

「逃げ切れないわけでも、危機的な状況でもなかった。それなのに、自ら主を殺すとは……! やはり貴様は、初めから――!」

 青藍が、くっ、と笑う。

「別に、珍しいことではないでしょう。我

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【創作長編小説】天風の剣 第157話

【創作長編小説】天風の剣 第157話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第157話 闇より深い黒 ―

 光が走る。
 辺り一帯の空気が、熱を帯びる。吹雪の中、空は、恐ろしい戦いのエネルギーで燃えていた。
 四天王シルガーと青い翼の従者、それから四天王レッドスピネル。三つの大きな破壊のエネルギーが入り乱れる。

「……思いのほか、時間をかけていらっしゃるように見受けられます」

 口を開いたのは、青い翼の従者。

「……なんの

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【創作長編小説】天風の剣 第156話

【創作長編小説】天風の剣 第156話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第156話 赤朽葉と、黒羽 ―

 大きな音を響かせながら、大木が倒れる。衝撃で、辺り一面煙のように雪が舞い上がる。
 赤朽葉の鋭い爪が、木をなぎ倒していた。
 赤朽葉が切り裂くはずだった標的は、黒羽。黒羽は、爪が襲いかかる一瞬前にその場から飛び避けていたのだ。
 黒羽の艶やかな赤い唇が動く。刃とも弾丸ともなる魔の力の加わった、呪文となる言葉を、生み出そう

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【創作長編小説】天風の剣 第155話

【創作長編小説】天風の剣 第155話

第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ
― 第155話 黒裂丸と白銀 ―

 押し寄せる、ひりひりとするような強い圧迫感。
 キアランも、感じていた。激しい戦いの波動を。

「翠、あれは――」

 キアランは、自分を抱えて飛んでくれている翠に大声で尋ねていた。もしかしたら、人とは違い魔の者である翠たちは、どんな状況下でも問いかけを正確に理解できるのかもしれない。しかし、吹雪の空の中を移動しているため

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【創作長編小説】天風の剣 第1話

【創作長編小説】天風の剣 第1話

第一章 運命の旅
― 第1話 黒の剣士、キアラン ―

  闇夜を切り裂く、光――。それは、鋭い剣の軌道だった。

 ガアアアア……!

 咆哮と共に、巨大な獣が音を立て大地に伏す。
 天高く輝く三日月だけが、すべてを見ていた。
 剣を振るったのは、すらりとした黒髪の男。
 その男の瞳は、右目が金色、左目が黒色という不思議な輝きを放っていた。
 男は、剣を大きく振り血を払うと鞘に収めた。

「ふむ

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【創作長編小説】天風の剣 第2話

【創作長編小説】天風の剣 第2話

第一章 運命の旅
― 第2話 旅の始まり ―

 冷たい風が吹きすさぶ。荒涼とした大地には、風の道を遮るものがなかった。
 流れる黒い雲のすき間から、時折月が顔を覗かせる。月は、果てしない荒野の中にある、男と少年――キアランとルーイ――を静かに照らしていた。
 キアランは、持っていたテントを設置していた。長年使いこまれ、すっかりくたびれてはいたが、持ち主の最低限の安全は守るという機能は果たしている

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【創作長編小説】天風の剣 第3話

【創作長編小説】天風の剣 第3話

第一章 運命の旅
― 第3話 魔法使いの少年、ルーイ ―

 キアランは、朝日に輝く雲を見ていた。それは、美しい金の色を宿していた。
 頬に当たる冷たい風が心地よい。あれほど一晩中吹き荒れていた風も、今は穏やかになっていた。

「おはよー、キアラン! 今日はいい天気になりそうだねっ」

 うん、と伸びをしながら、ルーイが隣に並ぶ。ルーイが目覚めないようにそっとテントから出たつもりだったが、起こして

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【創作長編小説】天風の剣 第4話

【創作長編小説】天風の剣 第4話

第一章 運命の旅
― 第4話 「四聖」を守護する者 ―

 闇の中にいた。
 キアランの意識は、内奥深くにあった。
 
 私は――。

 外界と繋がる表層的な部分の感覚、肉体的感覚がなかった。ひどく負傷したはずの背中の、痛みもなかった。まるで、魂だけが宙に漂っているかのようだった。
 もしかして、これが「死」というものなのか、キアランは恐怖も執着も後悔もなく――、感情を生み出すことなく、ただぼんや

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【創作長編小説】天風の剣 第5話

【創作長編小説】天風の剣 第5話

第一章 運命の旅
― 第5話 亜麻色の髪の、アマリア ―

 突然、不気味な地鳴りがし、大地が揺れ始めた。
 キアラン、アマリア、ルーイに緊張が走る。

「新たな魔の者が……!」

 アマリアがいち早く魔の気配を察知し、叫んだ。

「なに……!?」

 キアランは驚く。いくらここが危険な空気をはらんだ場所とはいえ、これほどたて続けに魔の者が出現するとは、通常考えられないことだった。

 まさか、本

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【創作長編小説】天風の剣 第6話

【創作長編小説】天風の剣 第6話

第一章 運命の旅
― 第6話 地底からの使者 ―

 轟音と共に、大地が激しく揺れた。
 
「あっ……!」

 振り返るルーイの小さな体は、たちまち黒い影に覆われる。土埃を立て、地中から巨大な怪物が姿を現したのだ。

「魔の者……!」

 それは、異様な姿だった。
 長い鎌首をもたげるように顔を出した怪物。外見といい質感といい、まるで巨大な芋虫だった。
 地上に現れた部分だけでもキアランの背丈をゆ

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