小さい頃の家族問題は、ものの見方を歪める
幼少期の不利な経験と成人期の初期の不適応スキーマ:系統的レビューとメタ分析
Adverse childhood experiences and early maladaptive schemas in adulthood: A systematic review and meta‐analysis
ヒトは信念の生き物である。空から天が落ちてくる杞憂の話でもないが、世界というのは未確定、不明瞭であり、1秒先、一歩先を保証してくれるものは何もない。
それにもかかわらず私達があまり苦もなくいろんなことを決められるのは、その人なりの世界の見方、世界のフレームというものがあるからだろう。
駅に行けば駅員は定価で切符を売ってくれるのがわかっているので私は駅で切符を買うのに躊躇しないし、人は平常時には殺し合いをしないと信じているので人を過度に警戒することもない。
こんなふうに世界の見方というのはその人の行動にいろいろと影響を与えるのだけど、この見方がずれていると色々と不都合が生じてしまう。
今回取り上げる論文は幼少期のしんどい思いがどれだけ、その人の見方を歪めるかについて調べたもの。
この研究では幼少期のしんどい思いと青少年になったときの認知的歪みの関係について調べた研究を集めて見直し、まとめている。
結果を示すと、
・幼少期の感情的ネグレクトや感情的虐待は、認知の歪みに中等度に影響する。
・幼少期の身体的ネグレクトや身体的虐待、性的虐待は、認知の歪みに軽度の影響を及ぼす。
とのこと。
ちなみにこの認知の歪みは正しくは初期の不適応スキーマと呼ばれていて、ウィキペディアの内容を貼り付けると以下の通り
第一領域:切断と拒否(人とのかかわりが断絶されること)
見捨てられスキーマ
不信・虐待スキーマ
「愛されない」「分かってもらえない」スキーマ
欠陥・恥スキーマ
孤立スキーマ
第二領域:自立性とパフォーマンスの障害(「できない自分」にしかなれないこと)
無能・依存スキーマ
「この世は何があるかわからないし、自分はそれにいとも簡単にやられてしまう」スキーマ
巻き込まれスキーマ
失敗スキーマ
第三領域:他者へとの方向性(他人を優先し、自己を抑えること)
征服スキーマ
自己犠牲スキーマ
「ほめられたい」「評価されたい」スキーマ
第四領域:過度の警告と禁止(物事を悲観し、自分や他人を追い詰めること)
否定・悲観スキーマ
感情抑制スキーマ
完璧主義的「べき」スキーマ
「できなければ罰せられるべき」スキーマ
第五領域:壊れた限界(自分勝手になりすぎること)
「俺様」「女王様」スキーマ
「自分をコントロールできない」スキーマ
Q: この論文で触れられているスキーマ療法って何?
明日目を通す論文:
気分障害と不安障害におけるスキーマ理論とスキーマ療法: レビュー
Schema theory and schema therapy in mood and anxiety disorders: A review.
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