コミュニケーション能力はあるに越したことがないと思うのですが、これはどこまで遺伝でどこまでが環境によって決まるのでしょうか。 ある研究では双子を対象に調査を行い、コミュニケーションの様々な要素について、どれが遺伝的影響が強いかについて調べています。 この研究では、コミュニケーション適応性尺度(Communicative Adaptability Scale (CAS))と呼ばれる質問紙を使って、コミュニケーション能力を図っています。 この評価尺度で測っているのは、以下の
自己超越性というのは、自分という感覚が、空間的にも時間的にも拡大した状態を指します。 一説によると、この自己超越性が高いほど、人は無条件的な利他性が高まり、社会の発展や世界の平和などに身を尽くすとも言われています。 また別の見解によると精神疾患などと共通の因子があるのではないかとも言われています。 ではこの自己超越性に関わる生物学的要素とはどのようなものなのでしょうか。 韓国で行われたある研究によると、自己超越性はセロトニンに関わる遺伝子に関連していたことが報告されて
人間は基本的には自分は自分という感覚を持っています。 しかし時に瞑想などで自我の境が消えるような経験をしたり、あるいは自分は宇宙の一部だという感覚を抱くこともあります。 このような感覚の持ちやすさは人により様々ですが、心理学的にはこの傾向は自己超越性と呼ばれています。 では、この自己超越性と関わりのある遺伝子というものはあるのでしょうか? ある研究では、200名の男性(81名の大学生と119名の依存症治療施設の患者)を対象に、ドーパミンに関わる遺伝子と自己超越性の関係
人間、欲がなければ生きていはいけないが、自分の人生が自分の欲だけで終わってしまうのは、あまりに切ないものがある。 心理学的には自己超越性という概念があり、これは端的に言えば自分をより大きなものの一部として捉えるような心持ちである。より具体的に言えば、自分の体の境界を超え、自分が生きている時間を超え、さらには物質的概念すら飛び越え、自分を超越的に捉える傾向が自己超越性と呼ばれるものになる。 この自己超越性は、ある心理学的検査で定量的に評価することができるが、メンタルヘルスと
マズローといえば、欲求の5段階が有名だが、実は晩年、自己実現の上の段階として自己超越性というものを考えていたという。 しかしながら、この思想はマズローの体調が芳しく無かったことや、発表された雑誌がマイナーなものだったこと、また当時の心理学界隈では、その思想を受け入れる準備ができていなかったことから、長く埋もれたままであったという。 自己超越性とは、自分を超えて、自分が所属するコミュニティや思想、社会のために自分を殉ずるような態度である。 この超越的な態度はマザーテレサや
マズローの欲求の階層は有名だが、彼は晩年、自己実現欲求の上に来るものとして、自己超越という概念を提唱している。 この自己超越とは、社会や世界など、自分を超えた存在をよりよい状態にしたいという欲求だが、どのような要因が自己超越感覚に影響しているのだろうか。 ある研究では、愛の未熟さと文化的要因が自己超越とどう関係するかについて調べている。 ちなみに愛の未熟さは以下の質問票で測られる。 1. もし配偶者や恋人が私を愛さなくなれば、私も相手を愛さなくなるだろう。 2. 親し
「心の理論」というものがある。これは相手の心を理詰めで考えるような能力で、いわゆる心理戦で必要なものになる。 しかし、この「心の理論」とは脳にどのような形で実装されているのだろうか。 私達の脳には主観的な視点を形作るシステムがあり、これはデフォルトモードネットワークと呼ばれている。自分の目や耳を通して見聞きしている時の感覚に関わるものである。 しかし、相手の視点で物を考えるためには、デフォルトモードネットワークだけでは十分ではない。なぜなら相手の心を読み解くためには相手
人間は人間に囲まれて生きている。 味方になるのも人間であれば敵になるのも人間、それゆえ人間のことをよく理解することで、生きるのも大分楽になる。 相手の心を理解する能力は「心の理論」と呼ばれている。これはシャーロック・ホームズのように相手の心を推理する力である。 この能力があるからこそ「今、話しかけていいかな?」とか、「信じてもらえているかな?」などと類推しながら相手と話を進めることができる。 自閉症者においては、知能とは関係なく、この「心の理論」が十分発達していないこ
人間は鬼にも仏にもなれる生き物である。 仲間を助ける人たちはあたかも仏のように振る舞えるが、そのような人でも他所者に対しては鬼畜の振る舞いをすることがあるからだ。 このような行動の背景には共感性が関係しているという。共感があれば他者に優しくできるが、他所者と認識することで、この共感性が発動されないというのだ。 この共感性について、ある研究ではチンパンジーのあくび伝染現象を使って調べている。 あくびの伝染現象とは他者のあくびを見ていると、ついつい自分もあくびをしてしまう
ヒトは独りでは生きられないとは言うが、たしかに私達は助け合うことでこの生を紡いでる。 この助け合い行動は他の霊長類でも見られるが、チンパンジーなどではいくらかヒトとは違うことも知られている。例えば、頼まれない限り手助けすることはない、食べ物については自発的に分け合うことがない、などである。 しかし、ボノボはいくらか毛色が違う。かれらは頼まれなくても自発的に手伝うこともあれば、食べ物をすっと差し出す優しさも持っている。 この辺の違いがどこにあるかというと、一説には脳の違い
人間は助け合う動物だが、チンパンジーもそこそこ助け合うことができる。しかしチンパンジーは人と違って、相手の心の中を詳しく覗き込むことは出来なようだ。 人間であればちょっとした仕草や表情から相手の気持を感じ取ることができる。なので、以心伝心、言わなくても心が通じることがあるが、チンパンジーはそこまでのことはできない。相手のチンパンジーから援助してほしいというサインがなければ助けることはほとんどないという。 このような違いが出る背景には共感機能の違いがあるのではないかと考えら
人間と他の動物の違いはいろいろあるが、一つはどれだけ協力できるかということがあるだろう。 人間が他の動物をのして、ここまで地球上で幅を利かせているのは、マンモスを追いかけるような協力性があったからではないだろうか。しかし、この協力性とは人間の専売特許なのだろうか。 ある研究ではチンパンジーの協力行動を詳しく調べている。この研究では2,3本の紐を一緒に引っ張ることで餌をもらえる実験を行っているのだが、チンパンジーは見事協力行動を示したという。 しかも、協力の足を引っ張るよ
昔と比べて転職離職が一般的になっているが、人はなぜ仕事を辞めるのだろうか。 ある研究では、離職はアイデンティティと関連しているという。 アイデンティティは何かというのは難しい問題だが、その研究はアイデンティティを、目的、表現、差別化、軌跡、受容、関係性の要素で説明している。 目的というのは、最近よく聞くパーパスである。人生の目的というべきものが仕事で満たされなければ人は仕事をやめたくなる。 表現というのは、自己表現のことである。仕事は自分の能力や資質を表現するには最適
意味のある人生とはなにか? これは難しい質問である。お金を稼ぐことや有名になること、美味しいご飯を食べることは楽しいことかもしれないが、それは意味のあることなのだろうか? アイデンティティと幸福を巡ってなされたある研究では、意味を定量的に捉える実験を行っている。 その実験では被験者にいくつかの質問をして、その人がどれだけ意味のある人生を送っている(と感じているか)を評価しているのだ。ちなみに以下のが具体的な質問項目の例である。 a) 個人的成長 「自分は成長し続け
人間とは何かということを一年中考えている。そこでしばしばテーマに上がるのがアイデンティティだ。 アイデンティティはヒト特有である。イヌは自分はどのようなイヌであるかの自覚を持たない。おそらくサルもキジもアイデンティティを持たないだろう。なぜヒトだけがアイデンティティというものをもち、これを巡って一喜一憂するのだろうか。 ある研究では、自分の民族的アイデンティティを明確に持っている方が幸福度が高いことが報告されている。 アメリカの青少年を中心にしたアンケート調査の結果から
最近、『ゲーテとの対話』という本を読んでいる。内容は若き文学者と晩年のゲーテとの語り合いが記されたものだ。老ゲーテの深い洞察が散りばめられている。 週刊誌の対談記事でも読むような語り口で、フランス革命後の世情やヘーゲル、カントなどの哲学者の様子が語られるのも楽しい。 この本を読んでいて感じるのは、ゲーテが持つ解像度の高さである。人や出来事のありかたについて、微細に、かつ巨視的に、本質をつかみ取り、提示する。 ある研究によれば、幸福な人生を送るためには大事なものが2つある