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『短編 仔猫シリーズ』photo by lemonysnow

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吉祥寺のとあるバーを舞台にした、マスターと仔猫の物語。不定期連載中。
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#恋愛小説

短編Ⅳ | 家出猫 2/2

マンションの階段を駆け上がると、玄関ドアの前に仔猫がしゃがみ込んでいた。俺が家を出てから…

短編Ⅸ | YOU 2/5

俺と仔猫は、ゴールデンウィーク前の平日に中禅寺湖に行くことにした。 東武日光駅まで電車で…

短編Ⅸ | YOU 3/5

仔猫が妊娠しなかったことに俺は一旦安堵したが、苦悩は更に続いた。 再び排卵期を迎えたとき…

短編Ⅸ | YOU 4/5

東京駅から吉祥寺駅に戻って来たときには、すでに開店時間を過ぎていた。雨は夕方から本降りと…

短編Ⅸ | YOU 5/5

俺は、女亭主にうまく言いくるめられただけのように思いながら、それでも、少し気持ちが楽にな…

短編Ⅹ | 希望の轍 1/2

「あれ、今日は、お嬢ちゃんはいないのかい」 店に入るなり、親父さんが尋ねた。 「ええ、今…

短編Ⅹ | 希望の轍 2/2

八月初旬の、定休日の夜。 俺たちは月窓寺の門前市をひやかした後、住まいのある牟礼まで、徒歩で帰った。「夜の玉川上水を歩いてみたい」と仔猫が言うので、サンロードから七井橋通り、そして井の頭公園から西園へと進んで、玉川上水沿いの緑道に入った。 玉川上水沿いの緑道は、明星学園通りを渡ったあたりから、街灯のない細道になる。木々は鬱蒼として、民家から漏れる灯りも乏しく、ひたすら暗い。その暗がりの土の道を、俺と仔猫は並んで歩いた。 去年の秋の夜更け、俺はこの道を、木の根っこに蹴躓きな