「春」と「雨」そして「桜」
真夜中過ぎにゴロゴロと地鳴するような雷の音で目が覚めた。
風も強く屋根や窓をまさしく叩く結構激しい雨も降っている。
ママは眠剤でビクともしないが、愛犬たちのうちの先ず若い方、リクは直ぐに私を追って擦り寄り、古い方のメイはキュゥ~ンと寂しそうに鼻を鳴らした。
どうでも良さそうな補足だが、いや蛇足だろうか、いつもはブラックコーヒーで始まるのだが、今日は甘めのスティックタイプのカフェラテに粉末コーヒーをスプーン一杯足し、苦味を強調した。
ヤカンをコンロに掛けて沸騰を待つひと時に、色んな言葉が頭に浮かんだ。
「春雨じゃ濡れて参ろう」
月形半平太が祇園の芸妓染八に声を掛ける名台詞。
物語の最後で潔く散る半平太が、今夜の雨に打たれて散るであろう桜と重なった。
ただ、三寒四温の頃に相応しい霧雨が詠われているとすると、この台詞は少し時が遅いだろうか。
2月の終わりから3月の初め頃が適期といえる。
「春雨で夜は鍋にしよう」
これが本質のキャラかと静かに苦笑しつつ、もちろん季節外れの二つの単語が気になるが降る雨ではなく食べる雨に意識が飛んだのは血糖値が原因であろうか。
春雨の原料は緑豆や馬鈴薯、さつまいも、とうもろこしを原料にしているため、血糖値の上昇度合を表現するグリセミック指数(GI値)が低く、インスリンの過剰な分泌を防ぐ効果がある。インスリンは脂肪を蓄積する作用があるため、結果的には春雨によってダイエット効果を期待できる。
「八分桜」
昨日のママの病院の帰り道。桜の具合は如何ほどだろうかと少し足を伸ばし、地元で言わずと知れた桜街道を走り抜けてきた。未だ満開とは言えない八分咲き。真っ白(薄ピンク)の光景を期待していたが「残念」という台詞よりは、「満開はもう少し先ね」という台詞が妙に心に沁みた。そんなひと時を思い出した。
「春爛漫」
まさしく春、この4月にぴったりの季語。園児も生徒も学生も、そして社会人も「新」を冠にした一年生が社会へ街にと繰り出す。みんなが心に抱く色は虹色。七色に彩られた希望と期待、少しの不安が入り混じる甘味が勝った甘酸っぱい季節。出来よりも思わず五七五で表現したい衝動に駆られた。
咲き誇る
春爛漫の
心向き
苦味をきかせたカフェラテもすっかりと飲み干した。
いつしか雨音は消え、時折吹つける風の音だけが耳に入る。
今日は珍しく煙草一服の瞬間が少なかったように感じる。
よほど没頭、集中していたのだろうか。
そういえば無意識のうちに赤外線ヒーターのスイッチも押さなかった。
室内温度で16℃ともなれば当然だろうか。
薄々気付いてはいたが、確かに季節は一つ前に進んだようだように感じる。
せっかくの八分咲きだった桜の姿を、今日は直視できい心境だ。
春の雨
人も草木も
伊吹立つ
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
善き一日となりますように。
※トップ画像はPixabayのgiselaatjeによるもにCanvaでテキストを加えました。