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【粗製土器】文様がないだけの土器
縄文土器って、すごい土器
みなさん、縄文土器は、日本どころか世界でも最古になる土器のひとつだとご存知のことでしょう。
今のところ、日本最古の土器は、青森県外ヶ浜町大平山元 I 遺跡出土土器が、科学分析の結果で、約15,000年前のものだと分かりました。
土器分類ってのがあります
そんな素晴らしい縄文土器には、精製土器と粗製土器という分類があるんです。
精製土器とは
精製土器は、文様のある土器です。もっというと、文様を施すエリアである文様帯がある土器のことです。
下の写真の土器を見てもらうと
上の段は、三角形
次の段は刻みのある楕円形
次の段は飛び出した瘤のような突起とその間を結ぶ沈線
最後の段には、うねうねと階段状になる文様である入組文
という具合に、土器の上下の範囲で同じ文様を施すエリアが決まっています。
文様帯を持つ土器のことを、精製土器と呼んでいます。
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上から帯のように、別の文様が施される場所が決まってます
粗製土器とは
そして、粗製土器ですが、文様が施されない土器のことです。
地紋と呼ばれる模様である、縄文のみが全体的に転がされているだけの土器という風にされています。
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地紋である縄文のみ
土器研究方法は、生物学の分類法にならっての型式学、様式論という分類方法で、土器文様の特徴を研究しています。
型式学の分類の第一歩目が、この精粗の分類なのです。しかし、例外はつきものですよね。
半精製?半粗製?
文様はあるけど、はっきりした文様帯がないという土器も、もちろんあるのです。
半精製土器?
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櫛歯状の工具で、曲線が描かれています。
上の写真の土器は、櫛歯状の工具で、波打つような曲線が描かれています。同時期の精製土器では、入組文とよばれる、階段状になる線の間に縄文を充填した文様なのです。
つまり、この半精製土器のための専用の工具があるのです。
逆に、特別な土器じゃないの?と思ってしまいますよ、半精製土器。
半粗製土器?
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口縁部のみ横方向の撚糸文で、他は縦方向の撚糸文
粗製土器なんだけど、口縁部だけ縄文を横方向にしているとか、口縁に一本だけ横方向の線を引いているとか文様は描いていないけど、文様帯を意識している?っという土器のことです。
そして、半粗製土器、半精製土器という区分自体、各研究者の感覚的な部分が多く、はっきりしていません。
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突起はあるけど、文様はない。。。
半粗製土器と半粗製土器のはざま
粗製土器から見る縄文土器の世界
みなさんのよくみる土器は、精製土器と呼ばれる文様がついた土器でしょう。火焔型土器のようにダイナミックな突起や文様は、目を引きます。
しかし、土器の多くは、地紋のみで無文の粗製土器です。
大多数の粗製土器からは、その簡素さから、とりだせる情報が少ないです。その為か、土器研究者からも放置されている場合もあります。
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縄文時代後期ごろから埋設土器という幼児のお墓の棺として、土器が用いられます。
埋設土器は、精製土器も粗製土器もあるのですが、大きめのものが多いからか、作り置きの比率が多いからか、粗製土器のほうが多く用いられています。
棺に用いられるものですから、縄文人の意識としては、「粗製」ということでなかったのではないでしょうか。
精製土器も粗製土器も、スス・コゲの付着状況から、煮炊きの道具として、日常的に使用されていたことが分かっています。
縄文人の中では、精粗の区別がなかったとも考えられますが、
一方で、精製土器の中には、良質の粘土や器面調整が丁寧に行われていたり、炭化還元焼成で黒くしたりと、土器製作において、精力を傾けていたのではないかと考えられます。
やはり、文様を持つ土器と持たない土器には、縄文人の中での意味合いの違いはあるのでしょう。そして、どちらの土器も大切な土器なのでしょう。
粗製土器をじっと見る
漆がぬられる?
土器装飾の可能性の中には、漆による彩文があります。漆ぬりで、文様を表現するのです。
山形県高畠町押出遺跡や福島県川俣町前田遺跡の彩漆土器は芸術的で、縄文人のセンスに脱帽です。
粗製土器とした中には、漆ぬりされたものがある、はず、きっと、たぶん、おそらく、パハップス。。。
粗製土器の最大の特徴
粗製土器のもっとも個性を表しているのは、縄文です。
そう、縄文土器の縄文たるゆえん、縄文です。
縄文も、その原体(縄文の痕をつける工具)により、幾種類もの特徴をもった縄文があるのです。縄文は、出土土器の地域独自の広がりがあるのです。
前回紹介した押型文もそうですが、
網目状撚糸文や右下がりになるRL縄文などもその地域独特だったりして、同時期の文様とは、また違う地域の広がりの中にあることが分かる場合あります。
縄文の種類をみてみましょう。
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よくある縄文。右上がり。
右利きの人がなにも言われず、紐を撚ると、だいたいLR縄文になります。
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LR縄文と逆回転で撚る紐です。
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LR縄文とRL縄文を交互に施文し、鳥の羽のよう
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LR縄文の紐とRL縄文の紐が端っこで結合した羽状縄文で
いっぺんに羽状縄文が転がすことができます。
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紐の端部、または中央で結び目をつくり、押し当てながら転がすことで、
S字が横になったような痕がつく縄文です。
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LR縄文とRL縄文の端部を結んだものです。
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木の棒に縄文の紐を巻き付け、転がしたものです。
転がす方向と線に痕が一致することや一転がしで長く、安定して施文できます。
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木の棒に縄文の紐を、2本を交互に、ななめに巻き付けたものです。
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縄文の紐に縄文の紐を巻き付けたものです。
いろいろな縄文がありますよね。
これらは、奥三面遺跡群元屋敷遺跡から出土した土器群で、縄文の種類から、後期、晩期、晩期後葉といった時期の目安になったりします。
網目状撚糸文は、関東とのつながりが分かったりと、粗製土器独自の特徴があるのです。
博物館で、でんと置かれた文様のない土器には、縄文人の日常生活の一端を担っていた、ススコゲという証しのほかに、
施される地紋の縄文がその地域独特であったり、器形が独特であったり、どこにでもあるごくごく普通の縄文土器であったり。
違わないこと、違うことが、綯い交ぜになった縄文土器。
そう、それが、粗製の縄文土器なのです。
あなたの出会う縄文土器には、多くの謎がまだまだ含まれているのです。
粗製の縄文土器は、いつもただそこに在るだけです。
受けとるのは、あなたなのです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
あなたの縄文ライフに幸多からんことを。。。
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