中国語の方言 留学生のクセ(記事29)
中国に留学しようと思っても、どこで留学すればいいか迷う人ってけっこう多いと思います。
当然ですが、候補地のスタンダードは北京、上海ですよね。
でも、私はせっかく外国語を勉強するのだから、なるべく日本人がいない地域に行きたい、と思って重慶を選びました。1997年9月のことです。
当時はまだインターネットが普及していない時代、それどころか、携帯電話ではなくPHSを使っていた時代です(中国の学生はポケベルを使っていました)。重慶に関する生の情報はほとんどなく、実際に留学してみてビックリしました。教室で習う普通话(中国の標準語)が学校の外では使われていないのです。
重慶人が使うのは重庆话(重慶語)で、普通话とはかなり違います。
「地方に行けば方言が強い」とは聞いていましたが、「方言といっても聞き取れないほどではないだろう」と思っていました。ところが、そんなに簡単なものではなく、普通话を使う学校内と重庆话しか使わない学校外ではまったく別世界という状況で、「学んだことを日常生活で実践できないのでは意味がないのでは?」と思ったこともありました。留学して約一年後に北京を旅行した時、街の人々が話す言葉(基本は普通话)をかなり聞き取ることができて感動したものです。
とはいえ、重慶語(範囲を広げて四川語といっても差し支えないです)は標準語と同じ語系なので、方言の中でも簡単な方と言われています。
実際、広東語などは外国語といえるくらい全く異なる言語で、香港に行くと標準語を話すことができてもかなり苦戦します。
以前、家族で香港に行った時、小さな餐厅(レストラン)で「七喜(セブンアップ)」を注文しました。
ところが、私が「七喜」と言っても通じません。
私の中国語が下手だから通じないのかな、と思って妻(四川人。普通に標準語を話します)に注文してもらいましたが、やはり何度「七喜」と言っても通じません。
最後に私が「セブンアップ」と言ったら、やっとわかってもらえました。
妻や子供たちからは「英語ができるってかっこいい」なんて褒められたものです。実際は、英語の「Seven up」と言ったのではなく、日本語の「セブンアップ」って言ったんですけどね。
今、私は広東省にいます。
重慶で留学を始めた頃は重慶語の壁がありましたが、広東には四川から来た出稼ぎ労働者が大勢いるため、仕事をするようになってからは四川語をある程度聞き取ることができて、けっこう助かりました。
四川人や重慶人は四川なまりの標準語を話します。これを「川普(四川普通話)」といい、ソリ舌がなかったり、nとlの発音が同じだったり、微妙に声調が違っていたり、けっこうクセがあります。
広東人も広東語と標準語を話します。広東語は「白話(日常で使う言葉)」と呼ばれています。
そして、広東人の標準語もクセが強いです。
例えば、rとyの発音に差がないため、「肉(rou)」を「又(you)」と言ったり、「日本(ri ben)」を「一本(yi ben)」と言うことがあります。
以前、深圳航空のCAさんが「牛肉」を「niu you(牛又)」と言っていましたが、広東人だったのかもしれません。
留学中、北方(北京、西安、東北等)を旅行した時、「あなたの中国語は南方のなまりがある」と言われてショックだったことがあります。
重慶では「あなたの中国語はすごくきれいだ」と言われていたので。
でも、重慶で言葉を習ったのですから、なまりがあって当然ですね。
逆に北京で留学した日本人と会うとソリ舌がすごく強くて「ああ、さすが北京だなあ」と感じます。「オエッ」と吐いてしまうのではないか、と思うくらい舌を巻く人もいます。
言葉を聞いて「この人は北の人だなあ」とか「四川人かも」なんてことを想像するのも、けっこう楽しいです。
方言のこと、まだまだいろいろありますが、字数が多くなったので、今回はここまでにします。
いずれ、重慶語(四川語)についてもう少し詳しく書こうと思います。
写真は留学していた学校の一コマです。小さな映画館がありました。