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中国語学習の思い出 「肉体」とか「夢」とか「安全…」とか、言い間違えいろいろ(記事119)
私は1997年から中国で留学しました。
日本ではNHKの中国語講座を少し見ただけで、全くの素人でしたが、ゼロの状態で中国の先生から発音を教えていただけたのはよかったことだと思っています。
当時、日本国内での中国語学習では、「中国語には濁音がない」という教え方をしていたため(今もそのような教え方をしているかどうかは分かりません)、日本で少し学習してきた日本人留学生の中には「对不起」を「トゥイ プ チー」、「再见」を「ツァイ チェン」といった感じで発音する癖がある人もいました。
言語学的には、中国語の「bu(無気音)」と日本語の「ブー(濁音)」は違うのかもしれませんが、耳で聞く分には、「bu」は「ブ-」なので、「中国語には濁音がない」という教えは、あまり重視しなくても大丈夫です(むしろ忘れた方がいいです)。
留学当初、中国語がまったくできなかった私、「谢谢」は「シェイ シェイ」だと思っていた私は(実際は「シエ シエ」に近いです)、まず日本語学部の中国人学生と仲良くなりました。
相互学習ということで、留学生と外国語学部の学生に交流の場を設ける活動はどこの学校でも盛んに行われていると思います。
初めの頃は私が中国語を話せないので、日本語メインの会話でしたが、半年ほどで立場が逆転しはじめました。そして、一年ほど経つと会話の中心が完全に中国語になり、交友関係も日本語学部から他の学部へ広がっていきました。これは自分の成長を実感できるとても楽しい経験でした。
さて、ここまでは(長くなりましたが)前置きです。
今回のテーマは、言い間違えの思い出です。
日本語学部の学生たちと話をしている時(ちなみに学生は女子が多いですし、女子の方が積極的に話しかけてきます)、日本のアルバイトの話になり、私が「我也做过肉体劳动(肉体労働もしたことがある)」と言ったら、女の子たちが笑い出しました。
私は日本で引っ越しのアルバイトなどもしたことがあったので、日本語の「肉体労働」をそのまま「肉体劳动」という中国語に置き換えたのですが、「意味は分かるけど誤解を招くから『体力劳动』って言った方がいいよ」とのことでした。
なるほど、中国語の「肉体(ròu tǐ)」って、確かに日本語の「にくたい」にはないイメージがあるなあ、と思います。
次は「夢」です。これは日本人ならよく間違えると思います。
「昨晩、不思議な夢を見た」という意味で「昨天晚上我看了奇怪的梦」と言ったら、「中国語は『看梦』じゃなくて、『做梦(zuò mèng)』が正しい」と直してもらいました。
当初は、「夢を見る」ではなくて「夢を作る」というのは、なんともおかしな表現だなあ、と思いましたが、考えてみれば、夢というのは実際に目で見ているのではなくて、脳が創り出しているものなので、「做梦」の方がふさわしいのかなあ、とも思うようになりました。
似たような話で、「脏」という単語の思い出です。
私より半年ほど後に来た日本人留学生(男)が、中国人学生たち(女子)と話している時、「もてるでしょ(日本語)」みたいな会話になりました。
すると彼は、「え~、もてないよ(ここまで日本語)。我的脸脏」と答えました。
中国語の「脸(liǎn)」は「顔」の意味、「脏(zāng)」は「きたない、汚れている」という意味なので、それを聞いていた私は、彼の顔のどこが汚れているのか、いろいろ見てしまいました。
中国人学生たちは「そんなことない」と言いながら笑っています。
私は「彼の顔が汚れているってどういうこと?」と不思議に思っていたのですが、かなりしばらく経ってから、日本語の「顔がきたない(かっこよくない)」を「脏(物理的にきたない。ゴミがあるとか汚れているとか)」と言ってしまったんだな、と気がつきました。
あの時、中国人学生たちが理解できていたかどうかはナゾです。
ちなみに、彼の「顔がきたない」というのはかなりの謙遜で、なかなかもてていました。
ついでに、「顔がきたない」という時は、「丑(chǒu)」、もしくはもっと単純に「不好看(bù hǎo kàn)」などを使います。
最後は結婚してからの事です。
我が家は私が免許を持っていないため、車は妻が運転します。
ある時、どういう流れだったか忘れましたが、私が「シートベルトをしっかりしめよう」という意味で、「系好安全带(jì hǎo ān quán dài)」と言うところを、「安全套(ān quán tào)」と言ってしまいました。
車の中は大爆笑です。
「安全带」はシートベルト、「安全套」は…。気になる方はご自分でお調べください。
ということで、少し長くなってしまったので今回はここまでです。
中国語を学び始めてから今日まで、単語も文法も発音もいろいろ言い間違えをして、それを繰り返すことで正しい使い方を覚えてきました。
外国語学習者はまず習った言葉を積極的に使ってみること、そして、たくさん間違えてたくさん直してもらうこと、これが成長の近道だと思っています。
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