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中国語の方言 ナナとララ 重慶語(記事30)

私は1997年9月から中国重慶市で留学しました。
前回も書きましたが、重慶の日常生活では重庆话(重慶語。四川語に属します)が使われており、授業で習う普通话(中国の標準語)とかなりの差があるため、なかなか苦労したものでした。
とはいえ、重慶語(四川語)は標準語と同じ語系なので、発音や声調の規則を理解できればある程度は聞き取れるようになります。

重慶語、というより中国南方の方言で共通する特徴に、「そり舌がない」「nとlの違いがない」という2点があります。

「そり舌」は日本語にも存在せず、解説が少し難しいので、今回は「nとl」の発音についてすこし書きます。

「nとlの違いがない」というのは、簡単に言うと、日本語の「ナニヌネノ」と「ラリルレロ」の区別がない、ということです。
これは日本語学部の学生たちにとって、大きな壁になっていました。
日本語の数字を習う時、1から7まで発音するとこうなるのです。
「イチ、ニ、サン、ヨン、ゴ、ロク、ララ」
一般的に「ナニヌネノ」が「ラリルレロ」になることが多く、耳も「ナナ=ララ」と認識するようになっているため、違いを聞き取れないという学生がけっこういました。

以前、職場の部下に名前が「胜兰(勝藍)」という女性がいました。
発音は「sheng lan」で、「シェン ラン」に近い音です(実際は「シェン」はそり舌なので、カタカナ表記はあくまでも参考です)。
しかし周りの四川人たちは「兰(ラン)」を「男(ナン)」と発音していたため、それを聞くたびに私は「剩男(残った男。結婚できなかった男)」という言葉を思い出し、「女なのに剩男って、かわいそうだなあ」と思ったものでした。

「nとlの違いがない」というのは、日本人にとっては信じられないことですが、逆に日本人が苦手とする中国語の発音もあります。
その代表が「nとng」だと思います。私はいまだにうまく発音できませんし、聞き取ることもできません。
留学中、中国人の友人と一緒に長江を船で下った時、「我们快上船吧」と言ったら爆笑されました。
「早く船に乗ろう」と言ったつもりだったのですが、「船(chuan)」の発音がうまくできないため、「床(chuang)」になっていたのです。
「上船(船に乗る)」と「上床(ベッドイン)」では大違いなので笑われて当然ですね。これ以降、単語の発音にいっそう注意するようになり、ややこしい言葉はなるべく使わないか、違う言い回しを探すようになりました。

ちなみに、「nとng」は中国人でも混乱することが多いです。日常会話では問題なくても、スマホでピンインを入力する時、「あれ?このピンインってgがついたっけ?」と迷う中国人はけっこういます。

逆に日本人は会話で「nとng」の違いがよくわからなくても、ピンインで間違えることはまずないです。よく知られていることですが、日本語の読み方にして「ん」で終わる漢字はピンインも「n」で終わります。それ以外は「ng」になります。
例えば
「长安(長安/chang an)」の「長(ちょう)」は「ん」で終わらないので、ピンインは「g」がつき、「安(あん)」は「ん」で終わるのでピンインは「g」がつきません。

「动漫(動漫/dong man)」の「動(どう)」は「g」がついて、「漫(まん)」は「g」がつきません。
「重庆(重慶/chong qing)」は「重(じゅう)」も「慶(けい)」も「g」がつき、「晚安(wan an)」は「晚(ばん)」も「安(あん)」も「g」がつきません。
(「动漫」はアニメ、「晩安」は「おやすみなさい」の意味です)

中国語は発音が難しい言語ですが、こういう規則の存在は、中国語を少し身近なものに感じさせてくれます。

字数が多くなったので、今回はここまでです(一回の文字数を1500~2000にしています)。
写真は重慶の小学校の教室です。留学中に撮ったフィルム写真をスキャンしました。

2000年6月11日撮影

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サノマ(中国生活をつづったり、写真・画像を整理するノート)
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