Design - The Birth of Lifetailor 〜CIデザインの思考法 / ロゴデザインの作り方〜
「自分が培ってきた経験で、弱った人の状態を改善したい」そんなコンセプトで立ち上がった クライアント「ゆこさん」のブランド「Lifetailor」。
デザインのインサイトを探るため何度も会話を重ねていく中で、あるキーワードに辿り着きました。それは「私達が日々過ごしている世界で、圧力に寄る緊張状態と自分をどう賢く保つか・ストレスと上手く共存していくかは、波上でバランスを保っているイメージと同じで、弾性と外部環境因子を掴むことが鍵」ということです。
そこで、流体力学や分子生物学で語られる「動的平衡バランスと中間累積結果の概念」からデザインを導くことにしました。
特に立命館大学理工学部 和田 浩史教授の論文「かたち・動き・成長の生物物理学」とフィリップ・ボール著の「枝分かれ」「かたち」は深く形成するヒントになりました。(これらはその時のスケッチ一部です)
具体的に、ロゴの頭文字「L」の背景には、逆上がりをする様に。最初は練習の様に。ゆこさんが伴走をする様に。全てを認める様に。そんなイメージが隠れています。最初の文字と残り文字との間にある違和感は意図的に作ったもので、残り文字の背景はもっと流動的なイメージ(リズム・波・快活・自立・動的)を含んでいます。
課題も解決方法も非デザイナーの発注人が決めていることが多々ある
人は何にでも意味のないものに意味を見出そうとする習性があるので、デザイナーを職業にしていると常に作品の意味や意図を求められます。意味の無い所に意味を創ったのだから要求をされるのは当然ですが、例えそれが正しい答えでなくても、発注者は理解したり、理解した気になったりで満足を得ます。時には後から綺麗なコンテキストを作るデザイナーも少なくありません。
「デザインをロジカルに説明する事が正義」という方程式が成り立つとすれば「目の前の発注人だけの満足を得る為のHowTo」が潜んでいると疑って良いかもしれません。
ある課題があり、その解決として、「非デザイナーの発注者」が「ただただ道具としてデザイナーを使いたい」と最初から方法を決めています。
これが現状業界の殆どで罷り通っている「発注人(クライアント)が考えるデザイナーとの関係」です。そして、その言語しか知らないデザイナーが応えることでビジネスが成り立っているのでネジレが生まれています。
ロゴをデザインすることだけが解決方法だと、それだけにフォーカスしているので、「デザイン」と「支払い」の関係もネジレていきます。デザイナーだから何でも出来るだろう。という勝手な期待の元、ただ何が出来るかわからないのに、出来上がったものを「長期」で使っていかなければならない恐怖心があるんだろうと考えています。 と思っています。
しかし許し難いのは、完成した物を見て「問題は解決出来ていない」とデザイナーを責めることです。課題・解決方法・デザイン定義さえ発注人による意思決定にも関わらず、デザイナーの価値は下がっていきます。
UX CollectiveというブログにRubens Cantuni氏が残した言葉があります。
意訳すると、
事業主は、創業時の事業計画書に「ロードマップ」を書きますが、これは高次元のパラダイムを考慮したタイムラインであるべきです。
市場の定点観測と未来予測ができていれば、ユーザーの変化に連れて、その製品が変化し、周りの世界が移り変わっていく事は容易に想像ができると思います。
固定資産と決めた割に短期消費物の支払いでデザイナーを利用する。
「そもそも支払いたくない」という欲が隠れているのではないでしょうか。
ビジネスそのものがデザイン
もしビジネスの中でデザインを広義な意味に捉えるとすれば、スタティックな物として捉えるのは勿体無い気がします。
残念ながら多くの意味で捉えられているロゴデザインとは、狭い視点から生まれ、短期消費物として支払い対価と捉えられながら、実は固定資産のように使われています。
タイムバリューとデザインが切り離された人と古いデザイン言語を話すデザイナーでビジネスが行われているんだと感じています。お金と時間の関係整理が出来ていれば少し解消してくるかもしれません。
僕もゆこさんもイメージを定着させたい=ロゴを作ればいい(アプリケーションを使いビジュアルコミュニケーションを図る)とは思っていません。
「頭のなかにある多次元的な宇宙空間の中で、Lifetailorとは何かの定義を見つけられるよう、想像人の推力を最適化するアルゴリズムをデザインする」こともデザイナーのミッションですし、ロゴの定義を見直すことができる細胞を作り、そこからエコシステムを作ることだってデザイナーの仕事だと思います。
さて、最後になりましたが、
散々語ったデジタル上の方程式に反し、ゆこさんは完成したデザインを「永久に使いたい」と仰ってくださいました。
ここまで難しい哲学からデザインを導いておきながら、時に「言葉にできない」という言葉があるように、壮大な自然美や人口造形物を見た時・人が込めた強い思いを知った時は、意味を見出したり言葉にするよりも速いスピードで内容が伝達することがあります。
これまでの理論や方程式を越えるデザイン。それもまたデザインだと1つ学び・感じたプロジェクトでした。
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