音楽の授業で「思考力・判断力・表現力」を育てる
「もう少しでできそう」にチャレンジする
音楽は音を楽しむもの。
でも、だからと言って、音楽になんとなく合わせて、ただ太鼓を叩く、鈴を鳴らすだけの授業をしていませんか?
授業は、「できていること」と「一人ではまだできない」の間、「もう少しでできそう」なことを、教師と一緒にチャレンジする活動です。
つまり、「発達の最近接領域」(図)へのはたらきかけです。
音楽は、みんなで音を合わせる楽しさ、気持ちよさ、そしてできた時のうれしさを感じることができる教科です。
授業では、「できそうなこと」を達成するステップを設定します。
一つの曲でも、それぞれの子どもが取り組む課題は異なります。
Aくんは、テンポを合わせる。
Bさんは、メロディをよく聴いて、タイミングを合わせて叩く
…などなど
「目標・指導・評価の一体化」で、評価できる目標にターゲットを絞ります。
音楽は、自分のペース(マイペース)だけではなく、みんなと一緒に音を合わせること(ユアペース)を目標にします。
ユアペースに合わせることができるようになると、選択肢が広がります。
「マイペース」を「個性を尊重する」ことと勘違いしないようにしましょう。
一人でできそうなことが、できるようになることで、楽しくなる、うれしくなる、感動できるような活動を用意します。
音楽の授業で「思考力・判断力・表現力」を育てる
題材(コンテンツ)は、「教える」ものではありません。
題材は、「思考力・判断力・表現力」を育てる、引き出すための手段です。
音楽の授業で「思考力・判断力・表現力」とはなんでしょうか?
例えば、テンポに合わせてリズムを打つ。
リズムを[聴く]→[頭の中で数える](思考力)
テンポに合わせて[待つ](判断力)
リズムとテンポわ合わせて[打つ](表現力)」
このように、音楽で思考力、判断力、表現力を育てることができます。
「リズムを打つために待つ」ことは、楽譜では休符とは言います。単なる「休み」ではありません。
次の打つタイミングを、頭の中でカウントして、準備しておく必要があります。
「拍を数えて打つ」とき、打てていても数えていない、または、数えていても打てないなどを見極め、子どもに応じて目標を設定します。
リズムで「思考力・判断力・表現力」を育てる
リズムにはパターンがあります。
そして、子どもの実態に応じて組み合わせを変える必要があります。
例えば、♪カエルの歌。
次の図は、そのリズム譜です。
子どものリズム打ちでは、次のような実態が見られます。
例)
・合わせられずに速く打ってしまう
・わかっているが身体が追い付かない
・ワーキングメモリが働かない=数える、タイミングを覚える、待つ、聴く、打つなどの操作を頭の中で処理することが難しい
・リズム譜に工夫が必要
…など
リズム打ちの難易度は、子どもの認知、運動面の力によって同じではありません。
例えば、ゆっくり打つのは、速さを合わせなければならないため、実は難しいのです。
また、一定の拍を保つことも難しいパターンの一つです。
リズム打ちとは、「教材研究」のやりがいのある課題です。
このように、音楽は、音を楽しむために「あたま、からだ、こころ」を最大限に働かせる、つまり、「思考力・判断力・表現力」を育てることができる教科です。