新御徒町の近くに佐竹商店街というアーケードがあります。日本で2番目に古い商店街。地元の人に訊いたら「日本一古い商店街を名乗っているところはたくさんあるけれど、ウチは2番目ってことでやってるから」と笑っていた。アハハ、たしかに個性でている。
その佐竹商店街の通りを挟んだ向かい側にある、ひとつの都営住宅、台東小島アパート。1年前から建て替えに向けた動きが進みつつある。動き出した時計の針はもう誰にも止められない。いまのうちに、この目に焼き付けておこう。
音量注意!
これ、バイオハザードとかで見たことある気がする……。緊張感が半端ないです。
倒壊の危険性や耐震基準、治安、維持修繕費、景観、機能面での立ち遅れなど、いろんな理由によって古い建築物は取り壊されていき、この小島アパートも例外ではないです。
物理的に保存し続けることは現実的でないけれど、情報をデジタル化し、精巧なレプリカとして仮想現実の中で再現できれば、こんなに素晴らしいことはないと思うんだ。
いまの技術を考えると、「再現」することに関しての進歩は目覚ましいよね。最新のゲームエンジンで描かれる世界なんて、写真と見分けがつかないほど精密だし、3Dサウンドで背後からも声が聞こえるし、VRで没入する世界はそこに自分が存在するかのように錯覚させてくれる。
でも、その「再現」の前工程である「アナログな現実を子細に読み取って正確にデジタルデータ化すること」が非常に困難なんだよね。言い換えると、現実世界を設計図に描き起こすことが難しい。
だって、目の前にある世界の情報(座標と音だけでなく、におい、味、触り心地も)を、自分が知覚していないレベルまで含めて正確に把握する手段が、まだ存在しないからね。
ただ、これも現実を写し取ろうとするから無理が出るんであって、現実を予想する、おそらくこうだろうと想定する、のであればすでにAIで実現可能になっている(教師あり学習)。要は発想の転換。アタマを柔らかくして考えれば、やり方はある。「それは厳密にいえば保存ではない」と言われるかもしれないけれど、何のために保存するのかと考えると、そういう方法もアリじゃないかと思うんだよね。
近代建築物の保存活動は今のところ厳しい状況だけれど、未来に小さな光が見える気も、なんとなくしているわけです。