最近読んだ本のなかで、あまりにもよかったので書かずにはいられない。 この本の書名を知ったのは、かなり前だった。 誰の本か忘れたが、この本を下敷きにして発想したと、どこかに書かれていたのだった。 たしか宇月原晴明の『安徳天皇漂海記』だったような気がする。 発想がおもしろそうだと図書館で借りて読もうとしたが、歯が立たなかった。 だいたい宇月原晴明の本はぜんぶ読めたためしがない。 デビュー作の『信長』も短編集『天王船』も買ったきり放りっぱなしだ。 難し気な言葉を駆使して、わけの分か
最近、ふと手塚治虫のついて思い出したことがあった。 『ロック冒険記』という初期の作品は、カレル・チャペックの『山椒魚戦争』というSF小説を下敷きにして書かれた、と聞いたのがきっかけだ。 よく考えたら『ロック冒険記』は、ちょっとカニバリズムっぽい描写があるなあ、と思った。 『ロック冒険記』を読んだことのない人向けに、かんたんにあらすじを説明する。 ロックという主人公が宇宙探索に出かけて、鳥人の住む惑星を発見する。そこで鳥人と交流するようになるが、大々的に交流が始まると、悪い地球
長年、積んであった本を片付けにかかっている。 とはいえ、それほど早く読めるほうではないので、一冊一冊牛歩のごとくに読み進んでいる。 ずっと気になっていたが、なぜか二度も挫折した『マイナス・ゼロ』をやっと読み終わった。 ぜんぶで500ページほどあるので、厚い本ではあるが、文体は軽く読みやすい。けっして難解な小説ではない。 この作品は、タイムマシンものの傑作と言われていて、いずれ読みたいと思って積んでおいた。 何度か手にとって最初の数ページを読んでみたが、いつもひっかかる箇所があ
おひさしぶりです。なかなか書く手が進まないぼくです。 今日は去年の11月にした、へんな旅の話を書きます。 どうしてこうなってしまうのか分かりませんが、ぼくが旅をするとたいていはこんな具合におかしなことになります。 とある事情により、滋賀県に行くことになりました。 歴史が好きなので、グーグルで検索して、ある民泊に泊まることに決めました。 その民泊は、江戸時代から伝わる商家を改築した建物で、昔ながらの造りになっているそうです。 玄関先の土間には、甲冑とか和服とか、その土地の歴史に
読むって行為は、とても不思議な行為だと思います。 ここに一冊の本があって、文字が書いてあって、ぼくはそれを読むことができる。 ただそれだけの行為ですが、ぼくの内面で何が起こっているのか、ぼく以外の誰も知りようがありません。 本当に読んだのかどうかすら、分かりません。 長編小説を読み終わって、感想を言ったりあらすじを説明したりすれば、他人は「ああ、この人はこの本を読んだんだな」と勘違いしますが、実はネットで事前に内容を調べておいただけかもしれない。 速読について調べたときに、そ
昨日は、当て所なく街をうろうろしていたわけです。 いやまあ、当て所なく、というのはウソで、例によって古本屋などを巡りながら、ときどき喫茶店に寄っては、戦利品を眺めてにやにやする、という作業をくりかえしていました。 昔、植草甚一が好きで、自分を植草甚一に準えて悦に入っていたものですが、昨日は久しぶりにそんな感じに振舞いました。 しかし、じつをいうと、ぼくの心はそんなふわふわした楽しい気分ではありませんでした。 ぐろぐろと得体の知れない不安が渦巻いている。 この不安をなんとかした
松本人志さんの悪行が話題になっていますね。 人によっては、日本版MeeToo運動とも言います。 松本さんは、文春に書かれた記事の内容を認めていないようですが、数々の証言が上がっていることから、見解の相違はあるにしても、事実そのものはあったのではないかと思われます。 少し前に、園子温監督の、似たような悪行も話題をさらいました。 園監督の映画が好きだっただけに、とても残念に思うと同時に、映画の内容を考えると、「さもありなん」とも思いました。 どうも、こういう事件は芸能界にはありが
これはぼくが、むかしアルバイトをしていた警備会社でのできごとです。 警備員には、いくつかの種類があります。 工事現場の警備員もいれば、要人警護なんていう煌びやかな仕事もあります。 ぼくがやっていたのは施設警備でした。 24時間張り付いて、廃墟になったホテルを見張るのです。 倒産したホテルに、一年契約して宿泊料を先払いしている住民がいました。 ホテルは倒産したので、宿泊料を返せません。 しかし住民は納得がいかないので、自分の泊まっていた部屋にそのまま居座ったのです。 ホテルの経
創作術の本をたくさん読んでいます。 どれくらい読んでいるかというと、たぶん千冊くらい。 小説の書き方、シナリオの書き方、戯曲の書き方から、プレゼン術、TEDトークの本、文章の書き方、ブログの書き方などなどなど。 そんなに読んでどうするの? ってほど読んでます。 ほとんど創作術マニアです。 そんなぼくが最終的に「これに尽きるな」と思った本が、 スティーブン・キングの『書くことについて』です。 「なんだ、超有名な本じゃないか」 とがっかりされた方がいるかもしれません。 でも、いい
こんばんは。 最近は投稿をがんばっています。 いままでは、ぼくのやってきたことや考えを(なぜか)なるべく外に出さないようにしてきました。 なぜかはよくわかりません。 出しちゃいけないような気がしてきたのです。 親の教育のせいか、人生の紆余曲折のせいか、さまざまなことに興味を持ち、いろいろなことをしてきたのに、全部、誰にも何も言いませんでした。 なぜだろう。なぜなんだろう。どうしてぼくは自己開示できないんだろう。 そこで今まで全く語ることがなかった件について、初めて語りたいと思
※これは、以前ぼくが書いた小説です。おもしろいかどうかわかりませんが、ここに発表します。 ================================ 由藻氏はよく金賀堂古書店に通った。 N駅という、由藻氏の自宅の近所にある駅は、JRと地下鉄のそれぞれの駅が重なっており、近隣地域のターミナルとして機能している。それなりに大きな駅の駅前に古くからある金賀堂古書店は、そこそこ客が入ってはいるものの、あまり商売上手とはいえない店主の施策により、廉価なリサイクル本をあまり
こんばんは。まじめなタイトルですが、タイトルで期待してはいけません。 どうせ、ぼくの戯言ですから、お時間の許す人だけ、ゆるゆると読んでくださいね。 『樅ノ木は残った』を読んで以来、山本周五郎にハマっていまして……というほど読んでいないっちゃあ、読んでいないんですが、『さぶ』も読んでみました。 いまのところ、一番好きな作品かもしれない。 文庫本で一冊で終わるところがいい。 栄二とさぶの友情の話がいい。 どうして山本周五郎が好きなのかって考えたときに、思い出したのがケストナーです
最近になっても、宮藤官九郎さんが『季節のない街』を映画化するなど、人気の作家、山本周五郎。 漫画家の望月ミネタロウさんも、『ちいさこべ』を原作にした漫画を書くなど、一部に根強いファンがいる山本周五郎ですが、一般の読者、特に若い読者は読んでいるのでしょうか。 ぼくはもともと黒澤明監督のファンなんですが、黒澤監督は生涯に監督した30本の映画のうち、3本(『椿三十郎』『赤ひげ』『どですかでん』)が山本周五郎の原作であり、遺作として遺した脚本(『雨あがる』小泉堯史監督作品)の原作も山
手塚治虫の『ブッダ』ってすごいなーという話 いまさらですが、手塚治虫ってすごいな、と思います。 すごい作品はいろいろとありますが、ぼくとしては『ブッダ』を一押しにしたいです。 なぜか。 もともと仏教が好きで、いろいろな本を読み漁っているせいかもしれません。 数ある手塚作品のなかで、わりとまとまりの良いほうの作品だからかもしれません。 『火の鳥』は壮大すぎて、ついていけないところがある。 『ブラックジャック』は玉石混交で、おもしろい話とそうでないものがある。 『ブッダ』は、い
ごめんなさい。ちっとも記事を書かないジョンガルです。 NOTEの偉大なプログラムの賜物か、ぽつぽつとスキをしてくれる方がいらっしゃり、人知れず励まされています。 であれば、もっと記事を書きなさい! と自分自身に突っ込みを入れますが、なかなか書けません。恥ずかしくって。 先日も奇特な方が、スキをしてくださったので、「ああ、こんなこと書いたんだなー」と思い出して、うっかり昔の記事を読み返しました。 「エンタメと純文学のちがい」 なんて恥ずかしいお題なんでしょう。 以下のような突っ
こんにちは、ジョンガルです。 前回投稿してからだいぶ月日が経ちました。 不定期投稿といえど、いいかげんにせい、という月日が経っています。 しかし最近、こんなぼくにも、スキをしてくれる人が現れて、それでやる気がでたので投稿してみます。 …で、なぜか村上春樹論 みなさん、村上春樹の小説は好きですか? いままでいろいろな人にこの質問をすると、大好き、という人と、大嫌い、という人がいて、どっちでもない、という人は少ないみたいですね。 嫌いな人はまさに蛇蝎のごとく嫌っているようで、こう