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村上春樹「 騎士団長殺し 」と、川上未映子によるインタビュー「 みみずくは黄昏に飛びたつ 」について【 本の紹介 】

もう3年前になりますが、村上春樹の長編「 騎士団長殺し 」が発売する前に、神戸新聞(2月22日付朝刊)に、ボクのインタビューコメントが載せられました。ともかく、予想が外れないで少し安心しました(笑)


「 文章のリズムや心地よい音楽性が村上作品の魅力。新作はいつも過去の作品を超えてくるので、どんな世界が見られるか 」

「 新作の題名から想像すると、劇中で騎士団長が殺されるモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』が登場するかも 」

以下は、単行本を読んだ感想と、文庫で再読したときのメモ書きです。ネタバレには気をつけていますので、参考程度にお読み下さいね。

作品に関連した対談本の感想も最後に載せています。


「 騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編 」村上春樹


はやく読みたい。もったいないから、まだ読みたくない。もっと味わいたい。だから、少し寝かす。先が気になり、読まざるを得ない。でも、読むと終わりがくる。終わって欲しくないから読まない。葛藤の繰り返し。相反する気持ちが、至福の読書を可能にします。

★★★★★


「 騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 」


ささやかな日常に、彩りと歓びのひとときを与えてくれた十日間でした。今はまだ物語について語る言葉は持ちません。一言だけ述べるなら「 騎士団長殺し 」についての、「 顕(あらわ)れるイデア 」と「 遷(うつ)ろうメタファー 」についての話であったということ、語る(語られる)べき事柄はすべて、この二冊の本の中にあるということ。とにかく今は読了後の、豊かな沈黙の余韻に浸りたいです。

★★★★★

「 騎士団長殺し1 第一部 顕れるイデア編 上 」


再読。Book 1/4。

単行本と文庫本は、佇まいが異なります。だから、読みごたえも違ってきますね。同じオペラ音楽でも、レコードに針をのせて聴くのと、iTunesでダウンロードしたのを聴くのとでは、印象が違うように。

作中の、西洋音楽を日本画に翻案するという行為は、フィツジェラルドを村上作品に翻案(昇華?)することのメタファーでは、「 あらない 」? 

屋根裏のミミズクに訊いてみるか、それとも、絵の中の「 顔なが 」に訊いてみますか。


「 騎士団長殺し2 第一部 顕れるイデア編 下 」


「 ワインの能書きを並べるのが、私はあまり好きでありません。何によらず効能書きみたいなものが苦手です。ただの美味しいワインーそれでいいじゃないですか 」と免色さんは言った。

「 ただの面白い小説 」とボクが、思った。

以下、自分用のメモ。
ドン・ジョヴァンニ。プジョー205。阿部一族。アリスのうさぎの穴。シューベルト弦楽四重奏曲、作品D八〇四、ロゼムンデ。


「 騎士団長殺し3 第二部 遷ろうメタファー編 上 」


再読している内に、無性にスケッチを描きたくなってきました。小説が、読み手に能動的な何かを促すというのは、相当なものだと思います。

以下、自分用のメモ。
1939年、アンシュルスとクリスタル・ナハト(一方で、1938年の南京大虐殺)。秋川笙子が、読んでいた厚い文庫本のタイトルは何だろう。ディランの「ナッシュヴィル・スカイライン」。シュトラウスのオーボエ協奏曲。

ところで、エイハブ船長は鰯を追いかけるべきだったのかもしれません。


「 騎士団長殺し4 第二部 遷ろうメタファー編 下 」


今が時だ。


「 みみずくは黄昏に飛びたつ 」村上春樹×川上未映子


生粋の村上主義者でもある作家・川上未映子がインタビュアーとして、村上春樹に、訊く。緊張感と意気込みが伝わってきます。新作や過去の作品や、村上さん自身のことについてはもちろん、そうそう、それが訊きたかった!と膝を打ちたくなるような質問まで。矢継ぎ早に、鋭く、ときに執拗なくらいに。川上さん、良い仕事したなあ。

そして、村上さんが、その質問たちに、豊かでシンプルな語彙と、巧みな比喩とユーモアをもって、誠実に答えます。本人いわく、二年分くらい語り尽くしたようです(笑)。作家としての器の大きさ、キャビネットの引き出しの多さは言うまでもなさありません。

何というかマスターヨーダが、弟子にフォースの極意を伝授しているような感さえありました。

★★★★★

(完)

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