「最近の若者は~」と哲学
冒頭のご挨拶
突然ですが新入社員と仕事をしていると、時折感じるカルチャーショックを感じることはありませんか?
「最近の若者は~」まさか自分が口に出すとは思ってもみなかった事をうっかり口にしてしまう。
自分が新入社員時代はどうだっただろう。
「仕事とは」「社会とは」
自分の価値観を押し付けてくる上司。古いなと思ってたら「最近の若者は~」と言われ、社会人経験が長い事を理由に自分の方が正しいと言わんばかりに指導されることにうんざり。
いつの時代も終わらないそれぞれの世代間によって終わることのない「最近の若者は~」問題。
問題とまで言うべきか?と悩んだが、間違いなく悩んでいる人はいるだろうと思いあえて使った。チームビルディングだけでなく日々のコミュニケーションを円滑にするヒントがあれば良いと思う。
少しの間お付き合いください。
1. 世代の整理
a. 世代の整理
ここでは日本経済の分岐点である高度経済成長期を支えた世代からグローバル社会が当たり前になった現代までを対象として整理します。
こうして整理されたものを見ると面白いですね。
生きた時代から間違いなく自分は影響され、それは過去から紡がれているものだと実感できるだろう。今この瞬間もこれから見えない未来に繋がっていると思うと不思議な感覚である。
b. バブル経済について
日本経済において、大きな出来事として挙げられるのが【バブル経済】である。読者の方にも経験された方もいらっしゃるでしょうか?
日本を好景気に押し上げ、元気をもたらしました。崩壊後は逆に不景気をもたらし、日本経済の歴史としても重要な出来事として今も語られることが多い。
それを経験したかしていないかでは確実に仕事に対する考え方やリスク、社会への関わり方も異なります。これが世代間GAPを理解するヒントになりうるかもしれない。
c. 価値観について
バブル経済を軸に世代を区分すると、育った環境はだけでなく社会人になるタイミングでも違う価値観が形成されることが推察される。
ここではバブル経済がもたらした価値観の違いについて見ていこう。
「最近の若者は~」は仕事の場面で使われることもあれば、休日の過ごし方、使われるシーン毎で意味も異なりそうだ。
一つ例を取ると、バブル経済を経験している人は基本的に未来へは楽観的な態度を取り、贅沢品を好むとされている。
明るい時代が長く、未来もこのまま続くであろうという考えが染み付いており曖昧な楽観主義者となり、リスクをリスクと思わない世代になります。
そんな世代と現実志向の Z世代と買い物の話をしたらどうだろうか?
不確実な世の中で、テクノロジーの台頭で職業がどうなるかもわからないため悲観的に物事を考え、それを払拭するために会社外でもSNS活動をしてどうにかしようともがいている明確な悲観主義的な考え。
その世代にとってはブランド品を買うこと、贅沢することよりも”バズる”などの実用的な効果が見込めない買い物はしない。
経験した時代によって未来に対する考え方が違うため、価値観が異なるのだ。
2. 流行曲について
これまではバブル経済と絡めながら整理をした。ここからは世代での流行曲について見ていこう。
その時代に生まれた少年少女がアーティストとなり、世の中へ発信していく。それが社会へ影響を与えていく。そんなループで社会はこれからも続いていくのだろう。
「歌は世につれ、世は歌につれ」とはよく言ったものだ。
a. 流行曲について
ここからは社会と歌は本当に深い関係があるのか?
それぞれの世代で流行した歌を整理して検証していこう。
検証方法はシンプルで整理した世代の学生時代、青春であり、多感であり全ての出来事が新鮮だった年代で代表的な曲を抽出し、その時代の社会情勢の関係性を見ていく。
時代背景や技術革新、文化の変遷が音楽に大きな影響を与え、それぞれの世代に特有の特徴を作り出しています。
皆さんにも青春の思い出曲の一つや二つ、あるのではないだろうか?
上記の通り、世代で影響が与えられた曲が異なることがわかる。
b. 流行曲と価値観形成
ここまで整理すると、曲によって価値観が形成されるというよりも、社会背景→音楽へ反映→価値観形成というループが絶え間なく行われているとわかるだろう。
つまり、流行曲は社会背景を映し出し、その時代を生きる人々の共感を得ることで広がる。
例えば:
•高度経済成長期 → 希望や夢、努力をテーマにした楽曲(例: 山口百恵「いい日旅立ち」)
•バブル期 → 贅沢や華やかさ、恋愛をテーマにした楽曲(例: TM NETWORK「Get Wild」)
•バブル崩壊後 → 喪失感や現実的な感情を表現する楽曲(例: 宇多田ヒカル「First Love」)
•社会的な成功や挫折の経験が、人々の心に響く曲調や歌詞を形作り、価値観の形成に影響を与えます。
流行曲が時代の空気を反映しているだけでなく、個人がその曲を通じて「自分が置かれている社会をどう感じるか」を学び、価値観の土台を築くプロセスが踏まれるのである。
同世代に生きる者たちは価値観を共有するためにコミュニティを形成する。昔であれば街やバー、ナイトクラブ。今であればインターネットを介した発信やオンラインコミュニティ。
手法は変わっているが、本質は変わっていないのである。
そして形成された価値観は世代を超えると理解されにくい。そのような構図がこれまで繰り返されて来た。
では、どうするか?
ここまでは、世代間で異なる価値観が存在しており、価値観の違いをどう乗り越えるべきか?ということをに対して答えを出したいと、試みました。
そこで、ヒントになりうるのがフランスの哲学者、サルトルの実存主義の考え方です。
a. サルトルの実存主義
サルトルの実存主義は、「人間は自分の行動を通じて本質を作り上げる」と主張します。したがって、世代や社会情勢が価値観を決定づけるのではなく、個人がその影響をどう解釈し、行動するかが本質的に重要と考えます。
社会背景や流行曲の影響を受けることは避けられないにせよ、それを受け入れるかどうか、またどのように受け取るかは個人の自由な選択に委ねられます。
同じ時代に生きた人々でも、流行曲に共感する人と無関心な人がいるのは、個々人の解釈や選択の違いを示しています。
例えば、ある人が「米津玄師のLemon」に深い共感を覚える一方で、同じ曲に対して「単なる流行り」と割り切る人もいます。
この違いは、世代間の価値観ではなく、個人の実存的な選択によるものと解釈できます。
実存主義の視点では、個人は枠組みの中にあっても、それを乗り越える自由を持つとされます。
世代間で価値観を定義してしまうと、「自分はこの世代だからこのように行動する」という決定論的な思考に陥る危険があり、実存主義では、こうした決定論を否定し、「自分の人生は自分の選択で作り上げる」という能動的な価値観を重視します。
これによって世代や社会情勢の影響を越えた価値観の形成が可能となります。
まとめ
序盤から中盤まで、世代を整理しその世代の価値観について考察し、終盤で哲学者サルトルの考えを紹介しました。
「最近の若者は〜」という問題は世代を区切り、その枠組みで考えることで起こる問題であると結論付け、その解決策として実存主義の考え方を採用しました。
世代に限らず、他者も自由な存在であるといこうとを自覚し、その選択や行動を評価することを通じて、世代間の相互理解を深める。
そして、流行曲や文化を世代の枠を超えた共通の価値観(愛、希望、悲しみなど)として捉え、それを通じて理解をしていく。
それぞれが、そうした自由な発想を持つことで「最近の若者は〜」問題も解決されることを祈り、締めたいと思います。
拙い文章ながらも、最後までお読みになってくださり、ありがとうございました。