見出し画像

「最近の若者は~」と哲学

冒頭のご挨拶

突然ですが新入社員と仕事をしていると、時折感じるカルチャーショックを感じることはありませんか?
「最近の若者は~」まさか自分が口に出すとは思ってもみなかった事をうっかり口にしてしまう。

自分が新入社員時代はどうだっただろう。
「仕事とは」「社会とは」
自分の価値観を押し付けてくる上司。古いなと思ってたら「最近の若者は~」と言われ、社会人経験が長い事を理由に自分の方が正しいと言わんばかりに指導されることにうんざり。

いつの時代も終わらないそれぞれの世代間によって終わることのない「最近の若者は~」問題。

問題とまで言うべきか?と悩んだが、間違いなく悩んでいる人はいるだろうと思いあえて使った。チームビルディングだけでなく日々のコミュニケーションを円滑にするヒントがあれば良いと思う。

少しの間お付き合いください。

1. 世代の整理

a. 世代の整理

ここでは日本経済の分岐点である高度経済成長期を支えた世代からグローバル社会が当たり前になった現代までを対象として整理します。

1. 新人類世代(1960年代生まれ)
• 背景: 高度経済成長が進み、安定した時代に生まれた。
• 特徴:
• テレビや音楽といったエンタメ文化が生活の中心に。
• モラトリアム志向が強く、価値観が多様化。
• バブル経済期に就職した世代で、消費に積極的。

2. バブル世代(1970年前後生まれ)
• 背景: 1980年代末から1990年代初頭のバブル経済の影響を受けた。
• 特徴:
• 大量採用や豪華な新入社員研修など、バブルの恩恵を享受。
• バブル崩壊により、不安定なキャリアに直面することも多い。
• ブランド志向や贅沢な消費活動が注目された世代。

3. 団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)
• 背景: 団塊世代の子供世代であり、第二次ベビーブームに生まれた。
• 特徴:
• 学歴社会が強調され、受験戦争を経験。
• 就職氷河期に直面し、正規雇用を得られない人も多い。
• 消費の二極化が進み、価値観がさらに多様化。

4. ロストジェネレーション(1970年代後半~1980年代前半生まれ)
• 背景: 就職氷河期に直面した世代。
• 特徴:
• 非正規雇用が増加し、安定したキャリアを築きにくい。
• 家族や家庭を持つ割合が低い傾向。
• 社会的格差や生涯賃金の差を意識しつつ、堅実な生活を送る。

5. ゆとり世代(1987~1995年生まれ)
• 背景: 学校教育で「ゆとり教育」が導入された時期に生まれた。
• 特徴:
• 詰め込み教育から脱却し、自由な発想を重視。
• 就職活動の改善や新しい働き方を求める傾向がある。
• 「草食系男子」など、価値観の変化を象徴する用語が流行。

6. Z世代(1996~2010年生まれ)
• 背景: インターネットやスマートフォンが普及する時代に育った。
• 特徴:
• デジタルネイティブとして、オンラインとオフラインの融合に慣れている。
• 多様性やサステナビリティを重視する価値観。
• SNSやデジタルツールを活用した自己表現が得意。

7. α世代(2010年以降生まれ)
• 背景: AIやIoTが急速に発展したデジタル時代の子供世代。
• 特徴:
• 完全にデジタルネイティブとして育つ。
• 環境問題や社会課題に高い関心を持つ可能性がある。
• テクノロジーを活用した新しいライフスタイルを構築。

こうして整理されたものを見ると面白いですね。
生きた時代から間違いなく自分は影響され、それは過去から紡がれているものだと実感できるだろう。今この瞬間もこれから見えない未来に繋がっていると思うと不思議な感覚である。

b. バブル経済について

日本経済において、大きな出来事として挙げられるのが【バブル経済】である。読者の方にも経験された方もいらっしゃるでしょうか?
日本を好景気に押し上げ、元気をもたらしました。崩壊後は逆に不景気をもたらし、日本経済の歴史としても重要な出来事として今も語られることが多い。

 それを経験したかしていないかでは確実に仕事に対する考え方やリスク、社会への関わり方も異なります。これが世代間GAPを理解するヒントになりうるかもしれない。


c. 価値観について

バブル経済を軸に世代を区分すると、育った環境はだけでなく社会人になるタイミングでも違う価値観が形成されることが推察される。

ここではバブル経済がもたらした価値観の違いについて見ていこう。

「最近の若者は~」は仕事の場面で使われることもあれば、休日の過ごし方、使われるシーン毎で意味も異なりそうだ。

一つ例を取ると、バブル経済を経験している人は基本的に未来へは楽観的な態度を取り、贅沢品を好むとされている。
明るい時代が長く、未来もこのまま続くであろうという考えが染み付いており曖昧な楽観主義者となり、リスクをリスクと思わない世代になります。
そんな世代と現実志向の Z世代と買い物の話をしたらどうだろうか?
不確実な世の中で、テクノロジーの台頭で職業がどうなるかもわからないため悲観的に物事を考え、それを払拭するために会社外でもSNS活動をしてどうにかしようともがいている明確な悲観主義的な考え。
その世代にとってはブランド品を買うこと、贅沢することよりも”バズる”などの実用的な効果が見込めない買い物はしない。

経験した時代によって未来に対する考え方が違うため、価値観が異なるのだ。

ピーターティール:「ゼロ・トゥ・ワン」より

2. 流行曲について

これまではバブル経済と絡めながら整理をした。ここからは世代での流行曲について見ていこう。
その時代に生まれた少年少女がアーティストとなり、世の中へ発信していく。それが社会へ影響を与えていく。そんなループで社会はこれからも続いていくのだろう。
「歌は世につれ、世は歌につれ」とはよく言ったものだ。

「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉は、歌と社会の関係性を示す表現です。このフレーズは、歌がその時代の社会や文化、価値観を反映し、一方で社会もまた歌によって影響を受けることを意味しています。

各部分の解釈

• 「歌は世につれ」
歌はその時代の風潮や人々の感情、社会的出来事を映し出すものです。例えば、戦争の時代には勇ましい歌や慰めの歌が生まれ、不安定な時代には希望を歌った曲が流行することがあります。
• 「世は歌につれ」
逆に、歌そのものが社会や人々の考え方に影響を与えることもあります。歌の持つメッセージや雰囲気が社会のムードを作り出したり、価値観を変化させる力を持つこともあります。

a. 流行曲について

ここからは社会と歌は本当に深い関係があるのか?
それぞれの世代で流行した歌を整理して検証していこう。
検証方法はシンプルで整理した世代の学生時代、青春であり、多感であり全ての出来事が新鮮だった年代で代表的な曲を抽出し、その時代の社会情勢の関係性を見ていく。

1. 新人類世代(1960年代生まれ)

• 流行曲
• 山口百恵「いい日旅立ち」(1978年)
• 松田聖子「青い珊瑚礁」(1980年)
• サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」(1978年)
• 背景・特徴
• 高度経済成長期が進行し、家電や車などが普及。
• テレビやラジオが中心的な娯楽となり、歌謡曲が家庭で親しまれる。
• 消費文化が広がり、エンタメの多様化が進む。
• 山口百恵のような「人生」を語る歌詞が支持された一方、サザンのようなコミカルで自由な曲も人気を博した。

2. バブル世代(1970年前後生まれ)

• 流行曲
• チェッカーズ「ジュリアに傷心」(1984年)
• 久保田利伸「Missing」(1986年)
• TM NETWORK「Get Wild」(1987年)
• 背景・特徴
• バブル経済期で、高級ブランドや贅沢なライフスタイルが流行。
• ディスコや夜遊び文化が象徴的で、ノリの良いダンスミュージックが人気に。
• 一方で、久保田利伸のような都会的で感傷的な曲も、感情豊かな時代を反映。

3. 団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)

• 流行曲
• 小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」(1991年)
• 米米CLUB「君がいるだけで」(1992年)
• DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」(1995年)
• 背景・特徴
• バブル崩壊後の不況期に突入し、安定志向が強まる。
• フジテレビの「月9ドラマ」が全盛期で、ドラマ主題歌が多くヒット。
• 恋愛や心の内面にフォーカスした楽曲が人気を集め、受験戦争を経験した世代の心に寄り添う形となった。

4. ロストジェネレーション(1970年代後半~1980年代前半生まれ)

• 流行曲
• 宇多田ヒカル「First Love」(1999年)
• 浜崎あゆみ「SEASONS」(2000年)
• SMAP「世界に一つだけの花」(2003年)
• 背景・特徴
• 就職氷河期で非正規雇用が増加。社会的不安が広がる中で、自己を見つめる歌詞が共感を呼ぶ。
• 宇多田ヒカルや浜崎あゆみは、失恋や自己探求をテーマにし、多感な時期を過ごす若者に響く存在となった。
• 一方、SMAPの曲は「多様性」や「個性」を肯定する社会の動きと一致。

5. ゆとり世代(1987~1995年生まれ)

• 流行曲
• コブクロ「蕾」(2007年)
• EXILE「Ti Amo」(2008年)
• GReeeeN「キセキ」(2008年)
• 背景・特徴
• 社会全体で「詰め込み教育」から脱却し、個性や感情を大切にする方向へ。
• 社会は依然として経済的な不安定さがあるものの、希望や前向きな感情を歌った曲が支持される。
• 恋愛をテーマにした楽曲が多い一方、GReeeeNのような青春や仲間意識を歌う曲も人気。

6. Z世代(1996~2010年生まれ)

• 流行曲
• 米津玄師「Lemon」(2018年)
• YOASOBI「夜に駆ける」(2020年)
• Official髭男dism「Pretender」(2019年)
• 背景・特徴
• インターネットやSNSが普及し、音楽の聴き方がストリーミング主体へ。
• 個人の感情やストーリー性を重視した楽曲が人気。
• 米津玄師のように「人生の儚さ」や「喪失感」をテーマにした歌詞が共感を集める。

7. α世代(2010年以降生まれ)

• 流行曲
• Ado「うっせぇわ」(2021年)
• King Gnu「白日」(2019年)
• Vaundy「怪獣の花唄」(2020年)
• 背景・特徴
• AIやIoTが浸透し、テクノロジーに囲まれた環境で育つ。
• サステナビリティや多様性への関心が高く、社会問題をテーマにした曲も増加。
• Adoのように自己主張が強い曲が若者のアイデンティティと合致。

時代背景や技術革新、文化の変遷が音楽に大きな影響を与え、それぞれの世代に特有の特徴を作り出しています。

皆さんにも青春の思い出曲の一つや二つ、あるのではないだろうか?
上記の通り、世代で影響が与えられた曲が異なることがわかる。

b. 流行曲と価値観形成

ここまで整理すると、曲によって価値観が形成されるというよりも、社会背景→音楽へ反映→価値観形成というループが絶え間なく行われているとわかるだろう。

つまり、流行曲は社会背景を映し出し、その時代を生きる人々の共感を得ることで広がる。
例えば:
•高度経済成長期 → 希望や夢、努力をテーマにした楽曲(例: 山口百恵「いい日旅立ち」)
•バブル期 → 贅沢や華やかさ、恋愛をテーマにした楽曲(例: TM NETWORK「Get Wild」)
•バブル崩壊後 → 喪失感や現実的な感情を表現する楽曲(例: 宇多田ヒカル「First Love」)
•社会的な成功や挫折の経験が、人々の心に響く曲調や歌詞を形作り、価値観の形成に影響を与えます。


流行曲が時代の空気を反映しているだけでなく、個人がその曲を通じて「自分が置かれている社会をどう感じるか」を学び、価値観の土台を築くプロセスが踏まれるのである。

同世代に生きる者たちは価値観を共有するためにコミュニティを形成する。昔であれば街やバー、ナイトクラブ。今であればインターネットを介した発信やオンラインコミュニティ。

手法は変わっているが、本質は変わっていないのである。
そして形成された価値観は世代を超えると理解されにくい。そのような構図がこれまで繰り返されて来た。

では、どうするか?

ここまでは、世代間で異なる価値観が存在しており、価値観の違いをどう乗り越えるべきか?ということをに対して答えを出したいと、試みました。

そこで、ヒントになりうるのがフランスの哲学者、サルトルの実存主義の考え方です。

a. サルトルの実存主義

サルトルの実存主義は、「人間は自分の行動を通じて本質を作り上げる」と主張します。したがって、世代や社会情勢が価値観を決定づけるのではなく、個人がその影響をどう解釈し、行動するかが本質的に重要と考えます。

社会背景や流行曲の影響を受けることは避けられないにせよ、それを受け入れるかどうか、またどのように受け取るかは個人の自由な選択に委ねられます。

同じ時代に生きた人々でも、流行曲に共感する人と無関心な人がいるのは、個々人の解釈や選択の違いを示しています。
例えば、ある人が「米津玄師のLemon」に深い共感を覚える一方で、同じ曲に対して「単なる流行り」と割り切る人もいます。
この違いは、世代間の価値観ではなく、個人の実存的な選択によるものと解釈できます。

実存主義の視点では、個人は枠組みの中にあっても、それを乗り越える自由を持つとされます。

世代間で価値観を定義してしまうと、「自分はこの世代だからこのように行動する」という決定論的な思考に陥る危険があり、実存主義では、こうした決定論を否定し、「自分の人生は自分の選択で作り上げる」という能動的な価値観を重視します。

これによって世代や社会情勢の影響を越えた価値観の形成が可能となります。

まとめ

序盤から中盤まで、世代を整理しその世代の価値観について考察し、終盤で哲学者サルトルの考えを紹介しました。

「最近の若者は〜」という問題は世代を区切り、その枠組みで考えることで起こる問題であると結論付け、その解決策として実存主義の考え方を採用しました。

世代に限らず、他者も自由な存在であるといこうとを自覚し、その選択や行動を評価することを通じて、世代間の相互理解を深める。
そして、流行曲や文化を世代の枠を超えた共通の価値観(愛、希望、悲しみなど)として捉え、それを通じて理解をしていく。
それぞれが、そうした自由な発想を持つことで「最近の若者は〜」問題も解決されることを祈り、締めたいと思います。


拙い文章ながらも、最後までお読みになってくださり、ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!