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アガサ・クリスティ ABC殺人事件(ネタバレあり)

元々、「アガサ・クリスティ」の本は好きで、20代の頃、図書館に通っては読破した記憶がありました。
家に、『ABC殺人事件』の本があり、久々に読んでみました。
「アガサ・クリスティ」の小説は、何度読んでも、ストーリーが頭に残っていなくて、どんなストーリーだったか、犯人は誰だったかいつも
忘れてしまっていて、毎回新鮮に読める楽しさもあります。(笑

『ABC殺人事件』は、エルキュール・ポアロの物語で、「灰色の脳細胞」が事件を解決するストーリーです。
時代は1937年(昭和だと12年)イギリスでは、一次大戦が終わり、不況の最中。
それでも、芸術では「アール・デコ」が流行っており、金持ちと庶民の貧富の差がある時代です。
「アール・デコ」とは、1910年台~1930年台にかけて、ヨーロッパやアメリカ(主にニューヨーク)で流行した芸術様式のことです。
機能的でシンプルなデザインが求められる時代となり、装飾性のある「アール・ヌーボー」(有名なとこではミュシャなど)に代わり、広まったのがアールデコ「Art(芸術)+Deco(装飾)」です。

この物語でも、犯人がポアロにタイプライターで打った手紙の挑戦状を送ってきて、A、B、C、、、と順にAから始まる場所で、Aのイニシャルの女性が、Bから始まる場所で、Bのイニシャルの女性が殺されていきます。
殺害現場には「ABCの列車時刻表」が残されているのです。

ABC列車時刻表
本当にあります!


「列車時刻表」は今やスマホが主流になり、絶滅危惧種といったもので、若い人たちは、使い方も知らないと思うのですが、私の若い頃は、全国どこに行くのにも「時刻表」無しでは列車旅が難しいもので、私も使えました。

これは小田急線のロマンスカーの時刻表


当時のイギリスでも、産業革命後、機関車での移動が容易になり、イギリス中、路線が拡大した為に1839年「列車時刻表」が発売されるようになったようです。
しかし、今や、世界中で、廃版や廃刊が続いており、ウェブサイトに残ってはいるようですが、日本では「JR時刻表」はもうないようです。


Cになった時、Cから始まる場所で、Cのイニシャルの金持ちの男性が殺されて、世間でも騒ぎになります。
被害者家族の会ができ、共通するものを探していきます。
探していくうちにストッキング売りの姿が出てきて、どの現場でも目撃されていました。
その当時、ストッキングは、絹でした。

ハイソックス型で、
パンティストッキングは、
1962年からお目見えします
後ろに接ぎ合わせの線があります


今のナイロン製のストッキングは、発明されたばかりで、まだ、流通までは至っていませんでした。
ナイロン製は、それまでの素材とは違って、強くて、良く伸び、伝線も起こりにくく、履きやすくなりました。
昔はストッキングの伝線を直す専門屋さんがいたそうです。(お金のない人は自分でチクチク修繕したとか)
「戦後強くなったのは、女性とストッキング」などとも言われるほどでした。

ところで、A、Bの女性たちは、その絹のストッキングを購入していて、Cの現場にもストッキング売りは現れていました。
そうこうしている間に第4の殺人が起こります。
Dから始まる場所での殺人❗️
しかし、殺された人はDのイニシャルの人ではありませんでした。

そして、ストッキング売りの男は自分が殺したのではと思い自首をするのですが、、、、

しかし、ポアロは納得できませんでした。
確かにストッキング売りの部屋には、送られてきた手紙を打った、タイプライターがありました。

タイプライターとは、キーボードとプリンター
が合体したようなもので、歴史から言えば、イギリスの“ヘンリー・ミル”という人が特許をとっているのですが、誰がということもなく、改造に改造を加えて世界中で、使われるように工夫したものだそうです。
英文タイプライターは、アームの先にアルファベットがついており、そのアームを叩くと、インクリボンを介して文字を打ち込む事ができます。

こういう風に打つ
英文だと、キーの数がしれているので、
便利です。
この並びは、今のキーボードも
一緒です。


また、個々のタイプライターは、少しずつ文字の形が違っており、文字からタイプライターを識別できるようになっています。

この話でも、ポアロに届いた手紙とストッキング売りが持っていたタイプライターが同一のものである事を発表していました。

ですが、彼には病的な殺人というだけで、なんの得もありませんでした。
ましてBの殺人にはアリバイもありました。

そして、ポアロが暴いた犯人はCのイニシャルから始まる被害者のでした。

周到な計画のもと、兄の遺産を狙い財産を自分のものにする為に、病気であり、余命少ない義姉が死んだ後、兄がお気に入りの若い秘書と再婚でもすれば、いつまでも財産が自分のものになりません。ましてや、子供が生まれでもすれば、益々財産がもらえません。
それで、ストッキング売りを仕立てて、ストッキング売りにスカウトした人物も、大戦での後遺症で、記憶障害のある人に仕事をさせるようにして、また、一般人のポアロ宛で、誤字による手紙の転送での遅れも計算し、前もって手紙をタイプライターで用意して、そのタイプライターは、ストッキング売りに送って使わせて、
ストッキング売りに周る場所も指定し、彼の形跡を残させ、Dの殺人では、犯行に使ったナイフを彼のポケットに入れ、完全に犯人に仕立て上げていました。

しかし、一つだけ失敗したのは、ストッキング売りに送ったタイプライターに犯人の指紋が付いていたのでした。
指紋は、1684年、皮膚紋様を記録した最初の人は、イギリスの「ネヘミア・グルー博士」と言われています。
1880年、「ヘンリー・フォールズ博士」が、日本に来た時、証文に爪印を押すのを見て、指紋の研究を初め、縄文土器の指紋などをネイチャーに発表します。
それにいち早く反応したのがイギリス警察でした。
その後、1901年より、イギリスの警察で指紋による捜査が始まりました。

そんな証拠もあり、ポアロにその計画も暴かれ、無事、事件が解決するのです。

NHKで放送していた『名探偵ポアロ』が好きで、ビデオにも撮っていて、本を読んだ後、ドラマも楽しみました。
映像には、アール・デコの装飾がふんだんに使われていて、見ていても楽しくなるドラマです。
時代背景も楽しめるのが良いですよね♪

名探偵ポアロ
Dから始まる場所の競馬場


「アガサ・クリスティ」は1920年から1976年まで長く、推理小説を発表した人物ではありますが、100年前の時代背景などが現代に至っては逆に新鮮に感じるところが好きなのです。



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