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糖質制限ダイエットはもう二度とするまいと誓った話

僕は過去、16万円をはたいて約10キロ痩せたことがある。

当時、妻がダイエットと運動習慣を身につけたいという切実な願いを持っていたうえに、僕自身もぽっこりと出たビール腹が気になり始めていた。

そんなジムに興味津々だった僕たちに、中学校時代の友人・ユウジがとあるパーソナルジムを紹介してくれた。

ユウジはボディビルの大会を目指していて、そのジムでまるで彫刻のような身体つきを手に入れていた。

彼のシックスパックを見たとき、割れた腹筋のあまりの色気にコロンッと「あ、俺もやったらぁ」と感化されてしまった。

ちなみに僕は、小中高とバスケットをやっていたものの、一番嫌いだった練習メニューは筋トレだ。
高校生のときは、マネージャーに「はい、もう一回!」と言われるたびにニヤニヤしてしまうクセがあって、周囲から気味悪がられた。
しかしこれは決して真性のMというわけではなく、つらい状況をポジティブに乗り切るための“儀式”だったのだ。

そんな話はどうでもよくて、とにかく僕はもともと筋トレが嫌いなのだ。

それでも興味津々になるほど、ユウジのシックスパックは魅力的だった。

そういうわけで、さっそく妻を連れてそのジムで体験レッスンを受けさせてもらうことになった。

***

レッスンでは、妻と一緒にジムの代表・H氏に指導してもらい、バーベルを使ったスクワットやベンチプレスなどを体験させてもらった。

30分のレッスンの結果、
大胸筋の機能を無くし、上着が着れなくなる。
大腿四頭筋の機能を無くし、階段の降りれなくなる。
という現象が発生していた。

僕の感想。
「きんもちいいぃ~。。」

H氏にまだまだいけるよ~!とか言われて、脚がプッルプルになっている状態が気持ちよかった。
高校生の時に、友人から「Mだ!Mだぁ~!」と言われて「ちげーし!」とか言ってたが、多分僕、Mだった。

パーソナルトレーニングのプランは2ヵ月間の短期集中ダイエットコース。16万円なり。

契約した。

これが地獄の始まりだった。

僕についた専属トレーナーは、Y氏という、ボディビルの大会に出場経験がある“ゴリゴリにストイックな黒光りマッチョ”だった。

このプランでつらかったのは、毎食の食事と毎日の体重・体脂肪を写真に撮ってY氏に報告しなければならないこと。

しかも、このジムでは糖質を徹底的にカットする「ケトジェニックダイエット」が方針だった。

ケトジェニックダイエットとは、炭水化物の摂取量を極力抑え、代わりに脂質を多く摂ることでエネルギー源をブドウ糖(グルコース)からケトン体に切り替え、体脂肪をより効率的に燃焼させようとする食事法。

出典:ChaGPT

この方法では、コメやパンなどはもちろん、トマトやコーン、根菜類など糖質を多く含む野菜まで制限される。

ダイエットと言えばサラダである。
ただ、安易に「サラダ食べてます!」と写真を送ると、「トマト入ってますね……あと大根は糖質多いので避けてください」というメッセージが返ってくる。鬼コーチである。

毎食こんなんばっか。

糖質を摂らないと、本当に頭が回らなくてふらふらになるが、それもだんだん慣れてくる。
とはいえ、米やパンを食べたくてしょうがなくなってくる。

一度、ばれないように写真を撮らずに米を食べたことがある。
最高にうまかったのだが、その後、体重と体脂肪をY氏に送ったところ、「何食べました?」というコメントが来たことがある。

怖すぎる。

小心者の僕は、「なにも食べてません!」と送ったのだが、すぐさまY氏から「結局は自分との戦いなのでね。」と返信がきて戦々恐々としたことを今でも覚えている。

そんなこんなで鬼の食事指導と、週1のゴリゴリにストイックなパーソナルトレーニングによって、僕の体重はみるみる落ちていった。

そして2か月のトレーニングも終盤に差し掛かかり、ダイエットプランも佳境を迎えるとY氏から「最終の計測の日は、結果を出すために、前日から水を抜いて、サウナも入っちゃいましょう」というオーダーが入った。

いま振り返れば、そんなボクサーがやるような減量の追い込みを一般人の僕がやることに強烈な違和感を覚えるのだが、その時の僕は完全にY氏の従順な犬になっていたので、「やるワンっ!」と最終計測の前日から水分を摂らずに、サウナに入った(絶対にマネしちゃだめ!)。

そして、最終計測の日、75キロだった僕の体重は65キロに。22%だった体脂肪は16%にまで落ちていた。

←ビフォア アフター→

「うえださん、よくやりましたね!お疲れ様です!」
とY氏からねぎらいの言葉をもらい。僕もこれまでのY氏から鬼のダイエット指導に開放された喜びで泣きそうになっていた。

ひととおりの挨拶を済ませてジムを後にした僕は、完全にムラムラしていた。ムラムラというのは性欲にしか起きない現象かと思っていたのだが、食欲でもおきた。

すぐさま横のコンビニに立ち寄り、イチゴ大福を買ってその場でむさぼった。

こんなにうまいイチゴ大福を食べたことがなかった。
真面目に大号泣した。

野々村県議もびっくりの大号泣を六本木のど真ん中でかました僕は、ダイエットの達成感というよりかは、食事の魅力に取りつかれた。

あれから6年。

僕の体重は93キロ。驚愕のリバウンドっぷりである。

でも、ごはんは美味しい。

あの時と比べると100倍幸せ。

***

思い返すと、あの2ヶ月間は確かに劇的に痩せたが、特別な機会や楽しい食事の時間を我慢し続けてしまった。

一番悔しかったのは、ダイエット中に僕の誕生日でディズニーランドのホテルミラコスタに宿泊したとき。

ほんとはホテルで豪華な食事と美味しいお酒を飲んで妻と幸せなひと時を過ごしたかったのに、その日の夕食は舞浜駅の成城石井で買ったサラダのみ。

ほんとにあの時はつらかった。

実を言うと、僕は料理を作るのが好きで、食べることが人生最大の楽しみでもある。

妻が「おいしい!」と喜んでくれたり、子どもが頬張って笑っている姿を見ると、自分まで救われるような気持ちになるのだ。

それなのに、糖質制限を理由に何度も“幸せタイム”を自分で遠ざけていたのだと思うと、だいぶやるせない。

あと僕は「面白そうだ」と思ったら飛びつくけれど、ストイックさを長期間キープするのは苦手だとわかった。

だから、もし今後「やっぱり痩せたい!」と思ったら、一気に詰め込むのではなく、1年、2年かけて少しずつ無理なく進めたいと思う。

結局のところ、「痩せること」そのものが正義というよりも、「健康的に心まで満たされているか」が大事だと学んだ。

糖質制限ダイエットはもう二度とするまい。

さて、痩せよ。。


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