映画『BLUE GIANT』を観た
ネタバレあり
正直ジャズに詳しくなければ楽器も分からない人間で音楽素人だけど、この映画は知識がなくても分かるし面白かった。沢辺や大がどれだけ凄いのかなんて自分には分からなかったけど、その分彼らの演奏を聴いた人の反応でそれを示してくれたので理解できたし、よく考えればこれは原作が漫画で音が聞こえない中で進むので、その表現を怠ってる訳ないよなと。JASSの初めてのライブで、「もしかして玉田のドラムズレてるんじゃないか」と思ってる所でそれを観客が言ったから、その後聴いていても「やっぱりズレてるんだ」という事に確信を持ちながら聴けたし、玉田の二人に置いていかれてる感じが分かりやすかった。
勿論、沢辺の「どれだけ練習したんだ」的な発言によって大が努力の天才であることは分かっていたけれど、それでもこの映画から感じた大への印象は"周りを置いていってしまうほどの天才"というものだった。更に沢辺に言われる前から、自分はただ進み続ける事が正解という事を分かっていてそれを実行する人に見えた。ある意味、人間っぽくない感じ。二人のためにもっと上手くなりたいと練習する玉田や、落ち込んで音楽に再び向かい合おうとする沢辺の方が人間味があると思った。
JASSというチームの話をすれば、ずっと「ジャズのチームは永久に組むものじゃない」と言われていたのに、いざ解散となると寂しいものだった。ただ最後まで三人の音楽をする理由が異なっていた事と、一方でJASSとしての目標が一緒だった事が凄く良かった。特に玉田のドラムをする理由が二人と一緒に音楽、ジャズをやっていたいからというのが良かった。
唯一の音楽未経験者で、映画のシーンの中で未来の玉田が「今でも営業先とかで『あの宮本大と一緒にバンド組んでた』って自慢する」という言葉からも分かるように玉田は音楽を続ける訳でもないのだから、そんな彼が実力のある二人と共にジャズを続ける為に練習していたというのは良いなと思った。
未来の登場人物が語るシーンで言えば、確か該当する沢辺のシーンはなかったなと思う。彼は事故で右手を壊してしまうのだから、未来のシーンで登場させるとネタバレになってしまうというのならばその通りだが、もしかしたら彼の手が治ってプロではないにしてもまたピアノを弾けるかもしれないと希望を持てて嬉しい。沢辺の事故のシーンはショックだったけれど、正直分かれる前に大に「ソロで自由に弾くのも憧れてたけど、音楽を作るのが楽しい」と話した時に、もしかしてこの後、コイツ手がダメになるのでは…と思ったら本当にそうだった。原作勢の父によれば原作では最後の演奏で沢辺は戻ってこないそうで、じゃあ映画の展開の方が好きかもなと思った。
ラストのシーンで大が旅立つ前に「俺はお前の音楽が好き、早く治せよ」と言っている所で、序盤から沢辺が言っていた「同じチーム内で互いを踏み台にして上がっていくのがジャズ」という台詞を思い出した。大にそんなつもりがなくても、沢辺が踏み台にされたなんて思ってなくても、それでも事実として大は順調に上がっていって、沢辺はジャズの演奏家としては立ち止まってしまったという事実がそこにはあって、これがジャズのバンドなんだなとも感じた。
最後に、宮本大はやっぱりただ努力して前に進み続ける事が最善策だし、玉田の大学の単位を犠牲にしてでも人生の一瞬を彼らとの音楽の為に費やしたのは間違いではないし、沢辺は、お前が一番人間臭くてダサくて辛い人生で好きだよ、早く手治るといいな!!