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映画『哀れなるものたち』を観た

ネタバレあり





ベラは結局最初から最後までずっと好奇心に囚われた人間だったなというのが全体的な感想。

時間が経ったり世界を見たりする事で段々と知識を得ていくベラに対して、自分はずっとヒヤヒヤしたし博士達のように微笑ましくは思えなかった。特に性的な発見や飲食物への興味、貧困民の存在については、ベラの中でも成長が遅いように思えた、人への理解や疑いなどの面、良くも悪くも純粋なその性格故に、それらをベラが知る事に対して積極的にはなれなかった。だからこそダンカンと駆け落ちしようとしている時のベラを止めようとしたマックスの事は理解できるし、結果的にはベラが外の世界に出た事は良い方向に進んだけれど、家の中に留めておきたいというのは間違った考えではなかったと感じる。

外の世界に出たベラは最初、無邪気で純粋で何も知らない状態でありながら段々とダンカンの知らない間に世界を知っていき、そしてその好奇心に従うままにダンカンの側から離れていったけれど、ダンカンにとってベラの不恰好な純粋さや危うさ、自由さが魅力的だったのだろうしそれが独占欲や暴走的な行動に繋がったのだろうと思うから、彼は可哀想ではあるけれどそれを自制できなかった部分で彼は未熟だったし、成長していくベラを制御できるほどの賢さや人間としての中身が無かったように思えた。

その点、船で出会ったハリーは彼女に明らかに魅了された描写もなければ側にいたがるような事もなかったのが良かった。ただハリーも彼女の無邪気さにはきっと羨ましい気持ちもあっただろうし、それ故に彼女を傷つけようとしたのだろうなとも思う。そんな彼にベラが与えた評価が「傷つくのが怖い少年」というのが本質だと思うし、現実主義でその身を守ろうとしている彼にその後少しの変化があれば良いなと思う。

それから船で出会ったマーサや娼婦のスワイニーの、世界を知っている感が溢れた存在はこの映画の中では他の登場人物とは違うように感じた。他の人間がベラに対して大きな矢印を向けている中で彼女達は多くいる人間のうちの一人くらいの感覚のようだった。結果として知識や世界の多様さ、金をベラに与えた人達だとは思うけれど、決して彼女に世界を教えてあげたい、何かを与えたいという意思があったようには思えないのが良いなと思ったし、余裕のあるその言動に私が魅了されるかと思った。

最後に出てきたアルフィーについては蛇足と感じる場合もあるなと思ったけれど、自分はそのシーンがあって良かったと思った。個人的にベラが自分の身元については、今までと同じ様にその身で知る事が必要だと思っていたので、マックスとの結婚を決めた上でアルフィーについて行った事は過去のベラを見ていれば当然だと感じた。

アルフィーは今までの登場人物の中でもダンカンと同じくらいに未熟な人間に思えた。賢さと金と権力があるから厄介な人間だったけれど、ベラが惹かれるような男には思えなかった。最終的に果敢に立ち向かって反逆したベラとそのまま自害を選んだヴィクトリアは違う人間だなと思ったし、ベラも「あれは違う人の物語」と言っていたのには納得する。

最終的にはベラの様な強く自由に生きる人と、マックスの様に強く出られずに結局ベラに家を出て行かれてしまう、そして何があっても彼女を想い続ける事ができる彼の相性は良かったのかもしれないと思えた。
結局、博士もその博士によって考えが少し変わったマックスも、そこから変わる事は無かった様に思えた。勿論、博士は新しく作った実験台の女の子に感情的な行動を控える様にしたこととかは変化だとは思ったけれど、けれどベラに対しての気持ちだとか実験に対する罪悪感の薄さとかは変わっていなくて、それでもってそこにベラが自分の意思で帰ってきたのは嬉しかった。

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