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【映画評】ルネ・クレール監督『沈黙は金』(Le silence est d’or, 1947)
散々セクハラを働いた初老の男(映画監督)が若い男(俳優)に娘の様な歳の女(踊り子)を譲ってなお、別の若い女にセクハラをしようする(そこで fin)、という現代の価値観からすると非常にどうしようもないダメ親父の話なのだが、笑わずには、かつ涙なしには見られないこれは傑作である。
つまり、クレールは、自らの(マッチョな男性)監督としての立場を(時代の制限はあるので「ある程度」にとどまるにせよ)早晩去り行く存在として相対化してみせるのだ。そういう当時のホモソーシャルな社会の機微とその限界を示す、あるいはその様な社会に翻弄される/そこで強かに生きようとする女性を描く作家としてクレールを見直してみたい。
それとは別に、スコセッシの『ヒューゴの不思議な発明』で再現されたメリエスの撮影所は、この映画のそれ(メリエスの、ではないが、20世紀初頭のパリの映画撮影所をセットで再現している)を参考にしているのかもしれない。
ということで、初期の映画作りの様子を知りたい人も必見の一作。