【映画評】エイドリアン・ライン監督『幸福の条件』(Indecent Proposal, 1993)
どうやら勘違いしている人がいるようなのだが、本作の主人公デイヴィッド(ウディ・ハレルソン、右上図)は貧乏人ではない。たまたま1990年代の不況の煽りを受けて身を持ち崩してはいるが、元々は家持ち土地持ちで、デミ・ムーア(という時代のアイコン女優、右上図)扮するダイアナを妻に持つエリート「建築家(アーキテクト)」なのである。この、いわば没落した階級としての建築家とその妻を——かつて、例えば『摩天楼』(1949)などではこの職業の下に置かれ、建築家を崇拝すらしていた――実業家が、