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映画におけるジェンダー表象

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映画を手掛かりにジェンダーについて考える際、踏まえておかなければならない基本的な歴史や映画史、各種理論があります。しかし映画を理論的に搾取するのではなく、映画それ自体の在り方とジ…
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記事一覧

【映画評】Y・ランティモス監督『哀れなるものたち』:(1)変奏の「美女と野獣」

『フランケンシュタイン』のパロディだが…  『哀れなるものたち』(Poor Things, 2023)の…

岡田尚文
9か月前
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【映画評】リチャード・リンクレイター監督『バーナデット ママは行方不明』(Where’…

「聖女」バーナデットの奇跡  映画の中の男性建築家は――本当にどいつもこいつも——創造主…

岡田尚文
10か月前
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【映画評】ニア・ダコスタ監督『マーベルズ』(The Marvels, 2023)

 広大な宇宙を一人漂うキャプテン・マーベルの絶対的孤独——ぜひIMAX3Dで冒頭の宇宙遊泳シー…

岡田尚文
10か月前
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【映画評】フランソワ・オゾン監督『私がやりました』(Mon crime, 2023)

 原作はジョルジュ・ベールとルイ・ヴェルヌイユによる1934年の戯曲   "Mon crime!" (直訳…

岡田尚文
10か月前
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【映画評】ポール・ヴァーホーヴェン監督『ベネデッタ』(Benedetta, 2021)。

 17世紀イタリアの女子修道院を舞台とする仏語史劇。冒頭の聖母被昇天劇(足ぱたぱた)は、終…

岡田尚文
11か月前
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【映画評】ジェイ・シェル監督『スキャンダル』(Bombshell, 2019)

 男性的な役を好んで演じるシャーリーズ・セロン。単なる「男並み」で終わらなかった(女性性…

岡田尚文
11か月前
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【映画評】高畑勲監督『かぐや姫の物語』(2013)

 線に命を吹き込む(アニメートする)こと。それは初め、変態や運動(とりわけ飛翔)の愉しみとしてあった。しかし、物語——それはしばしば「結婚」を最終目的とする――を希求するうちに線が人間の身体をかたどることとなり、その身体は物語という名の制度のなかで馴致されることとなる。制度への欲望が先行するうちに変態・運動の自由は奪われ、遂には全てが停止する――結婚を拒絶したところで別の停止装置が作動する。こうしてアニメーションは終焉を迎え、別の物語が希求される。 鳥虫けもの草木花 咲いて

【映画評】犬堂一心監督『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)。

 確かに、これは、「オカマの手なんてきたなくて触れるわけないでしょ!!」と主人公の吉田沙織…

岡田尚文
11か月前

【映画評】サントーシュ・シヴァン監督『ナヴァラサ(Navarasa)』(2005)。

 古来インド映画は外部からの影響・圧力をうけ、つねに外からの視線にさらされてきた。とくに…

岡田尚文
11か月前
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【映画評】デイヴィッド•リンチ監督『マルホランド・ドライブ』(Mulholland Dr., 20…

隠されたあらすじ  生まれ故郷のカナダ・オンタリオ州で開かれたジルバ大会で優勝した(さら…

岡田尚文
11か月前
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【映画評】ジェレマイア・S・チェチック監督『悪魔のような女』(Diabolique, 1995)

 こうして、煙草を吸う女は甘美な女らしさをもって、男の安心のために男によって作られた、控…

岡田尚文
10か月前
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【覚書】ディズニー・アニメーション『美女と野獣』(1991)の同時代史

90年代の「エイズ危機」  ディズニー・アニメーション版『美女と野獣』はエイズ危機のど真ん…

岡田尚文
11か月前
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【覚書】ジェニー・リヴィングストン監督『パリ、夜は眠らない。』(Paris is Burning…

 ジュディス・バトラーの “Gender is Burning” を読む。これは、米ドラッグ・ボール——マ…

岡田尚文
10か月前

【映画評】シドニー・ポラック監督『トッツィー Tootsie 』(1982)

 シドニー・ポラックはハリウッド的な映画作りから距離を取る「ニューヨーク派」の映画監督の一人である。これまでシドニー・ポワチエを主演に据えた『いのちの紐』(65)で黒人問題を、バーブラ・ストライサンドを起用した『追憶』(73)で赤狩り問題を扱ったことなどから「社会派」とも称される。だが、アカデミー賞を初めとする映画賞をいくつも受賞しているわりには、ポラックの「作家」としての評価は高いとはいえない。実際、彼が2008年に死亡した際、『キネマ旬報』(2008年8月上旬号)の組んだ