読書感想文【ボッコちゃん】星 新一

道尾秀介の「水の柩」を読むと書いてからすでに約5か月。
忙しさにかまけ、競馬ゲームにかまけ、ようやく第6次くらいの読書ブームがひたひたと私に押し寄せている。

くそが付く程忙しい中での現実逃避的な読書だと自覚しながらも、どうせ読んだなら感想の一つでももう一度書いてみようと思い書くことにした。

感想文の構成すら忘れてしまったので、気に入った短編を羅列・感想を書いていきます。



・印象的だった話1.「ボッコちゃん」

現代で言うなら、精巧なマネキンに異性に思わせぶり風な返答をするAIを積んだロボットがボッコちゃん。
その存在は、男性の異性に求める姿形が分類可能で、形式化できてしまうだろう。というちょっとした現実と、ボッコちゃんの様な理想が体現されているのならば、もはや異性の存在はロボットだろうと構わないのではと思えてしまう、ちょっとしたリアリティも含んだ怖さが面白い。

物語が書かれた当時は空想だったものが、現代では理想の会話はチャットGPTでも再現可能だろうし、理想の容姿はAIの画像生成で何とかなる。

男の望む理想は当時からそれほどズレることなく、現代では機械で代用可能であるのかもしれない。

近い未来ボッコちゃんの様な機械さえいれば人類は充足するだろう。
煩わしい駆け引きや、しがらみや、不安を抱えなくて済む。

人類がいきつく先は、完全ランダムに選ばれた卵子と精子によって生まれた生命を、ランダムな成人に養子縁組させて育てさせる。または、ロボットが育てる。

もうそんな法律が数十年後に出てきてもおかしくないのかもしれない。
ボッコちゃんが一般になった後の世界を想像してみるのも面白い。

・印象的だった話2.「おみやげ」

人類って阿保だよねってお話。
ゲレ星人がおいていった設計図で作った装置とは、現代に置き換えると何だろう。

人によってはX(twitter)かもしれないし、一昔前ならテレビだったかもしれない。人類の成長を遅くさせる装置。

もしかしたら民主主義かもしれないし、恋愛という行為かもしれない。まぁ合理的なことだけが全てではないし、馬鹿らしいものほど、興味を引く。

観測者としての視点で考えると、そもそも人類にとって何が良いことなのか。幸せになることなのか?ではその定義は?安全であることはどうか?安全の定義は?

まぁみんなそれぞれに立場があって全員の利益が等しく分配されることは無い。と思っていることすら観測者の目からすれば、浅はかなのかもしれない。

さてこの先どんな未来になるのやら。私たちは歩みを止め、人類の成長を鈍化させる装置に囲まれながら、先の未来をなんとなく憂いながら呑気に暮らす。

ゲレ星人の思う愚かな人類。それもまたいいんじゃないかと思う今日この頃。

・印象的だった話3.「冬きたりなば」

筒井康隆先生の短編集「くたばれPTA」でも似たような話があった気がする。広告の馬鹿らしさを皮肉った面白い作品だ。

星新一先生の皮肉はさらっとしていて、乾いている感じがする。
その皮肉は特定の人間性や、特定の何かに向けられているにはいるのだが、直接反感を買うでもない。

皮肉る相手との距離感がちょうどいい。毒々しくもなく、僻みっぽくもない。是非小中学生くらいの頃に読みたかった。

ブラックユーモアは日本では主流ではないかもしれないが、アメリカやイギリスなんかのスタンドアップのショーの笑いに通じる面白さがある。

まぁ現実で話しても、何やねんお前会話に冷や水かけるなよと言われそうなので、読んで満足しよう。

・印象的だった話4.「最後の地球人」

構成として一番好きな話だった。
現代に残るオーパーツや神話。理想の社会とその退廃。人類の愚かさ。を全部乗せにした、おなかいっぱい満足定食だ。

しっかりとシニカルで、オチも秀逸。
とにかく読んでいて痛快だった。

・最後に

先日テレビ番組で、窪塚陽介が演じた「処刑」という星新一のドラマがあったが、あれも面白かった。

こういうテイストは読んでいて面白い。

ただ、星新一の作品はその後の多くの作品に影響を与えすぎたのか。
読んでいる最中にオチが見えてしまうものも少なくない。

もっと純真なころに読みたかった。
ただ、一話一話が軽いので読書のリハビリにはもってこいだ。

第7次読書ブームの一冊目には星新一を読んでブームに火を付けようと思った。

次に読む本→ 「銃」中村文則


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