読書感想文「ななつのこ」加納朋子
やさしいミステリー。日常の中に潜む謎を解いていく感じで、前に読んだ作品で言うと、米澤穂信先生の「氷菓」にも似た雰囲気だった。
「ななつのこ」という作中作の各話が、駒子が遭遇する日常の謎とシンクロし、作中作の著者との文通のやり取りの中で真相が明かされるという流れが7話続いており、最後には軽い「はぁ、そうだったのか」と思わせる様な展開と、温かなある家族の風景が描かれる。
ミステリー作品でこんなに優しい世界を感じられたのは初めてだ。
言い回しに毒が無く、ちょっとユーモアがあって、読んでいてストレスが全くない。氷菓の時はラノベ的なキャラクターの輪郭を際立たせる為の、無理目な言い回しが、少しくどいな…と感じたものだ。
しかし、ミステリー作品という分類である以上、感想らしいものは特にない。今後のためにも、ミステリー作品の感想のフォーマットを考えてみようと思う。評価基準をいくつか出して5段階くらいの☆で表すのでいいか。
ミステリー作品の評価軸
Google様にお尋ねしたところ、
・文章の質
・キャラクターの描写
・ストーリーの展開
・アイデアや独創性
・読者の納得度
・カタストロフィの描写
との回答がAIから帰ってきた。
誰が元の記事を書いたか知らないが、最後の「カタストロフィの描写」は、ちょっと刺激ジャンキーの人向けな気がする。
ミステリジャンキーにも色んな方向性があるだろう。「どんでん返しゾンビ」や「真実相当性ジャンキー」みたいな嗜好を持った人もいるだろう。
私はそれほど読み慣れていないので、上の5つで星を付けていきたいと思う。
評価
・文章の質 ★★★★★
・キャラクターの描写 ★★★☆☆
・ストーリーの展開 ★★★★☆
・アイデアや独創性 ★★☆☆☆
・読者の納得度 ★★★☆☆
評論家でもないのに恐ろしく傲慢な気がするが、こんな感じかな。
文章は先にも書いた通り、くどくないのにユーモラスで読み心地が良い。
キャラクター評価は殆ど駒子に依存するが、素直で明るいし、擦れていない。サラッとしていてじめじめしていないくせにちょっと自虐的。
なんだか友達に居て欲しい可愛げのあるキャラクターだ。
ストーリー展開については、おぉと思うほどタイトルと、小説内の入れ子構造のギミックとが絡み合い、綺麗な終わり方をしている。しっかり練り込まれた世界観と物語構造があり、一個の作品として纏まっていて高評価だ。
アイデアや独創性については、ミステリーなので「トリック」としてのアイデアだと考えると、日常系なので派手さは無い。しかしそもそもこの物語に大掛かりな仕掛けは不要なので、星2つでも悪いというわけじゃない。
読者の納得度については、おそらく仕掛けられたトリックに対して描写が公平なのかということなのだろう。謎解きは手紙形式で語られる安楽椅子探偵的な推論が提示される形なので、検証が行われるわけではない。まぁ3つくらいなのかな。
最後に
勝手に評価軸を作り、偉そうに評価までしてしまった。
無理にミステリーに感想文を書こうとしても苦しくなりそうなので、今後もこの形でやっていこうと思う。
気に入ったので、次回作も買っておいた。
この作者さんは信頼できる。と思いました、まる。
次に読む本→「ななつのこ」→「こ」→傲慢と善良 辻村深月
辻村深月先生の作品は本棚に溢れているくせに一作品も読んでいなかった。妻にいい加減あんたも読めと言われたので、そろそろ読もうかな。