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🎬西部戦線異状なし(2022) 感想

第一次世界大戦、ドイツ・フランス両軍が塹壕戦で睨み合う西部戦線の現実を一人の青年兵士の目を通して描く。

第一次世界大戦中のドイツ、青年パウルは仲間とともに国のためという勇ましい気持ちと自分だけ仲間外れになりたくないという動機で両親の承諾も得ず従軍する。
しかし、パウルが放り込まれたのは想像を絶する近代戦の地獄だった。

人類が初めて経験した近代戦である第一次世界大戦。(日露戦争を初の近代戦という説もある)
膠着した塹壕戦の中、毒ガス、戦車、飛行機など近代兵器が惜しみなく投入された戦争は、過去の戦争とは比べものにならない全てに置いて消耗戦。
人間が情け容赦なくあっけなく死んでいく残酷さは、『プライベート・ライアン』のオマハビーチの戦闘を思い起こさせるほど過酷。
延々と続く塹壕戦の残酷さが150分ほぼ全編にわたって描かれているのだが、身動きできないほどショッキングで一瞬も目が離せない。

登場人物たちの背景はあえて淡白にほとんど描かれないため、次々に死んでいく描写に細かく感情が入り込む余地もなく、それだけに死の虚しさだけが強く残る。
わずかな仲間との語らいのシーンだけが登場人物を人間として扱っていてドラマを匂わせるが、そのシーンも消耗品として扱われる兵士の悲劇を増幅させるためだけに存在している。

有名俳優が登場しないことでよりリアリティが増し、残酷な塹壕戦の現場にいるような臨場感は他の作品にくらべても群を抜いている。

ドイツ軍の大将が全く近代戦を理解していないのは明白で、馬の鞍の話に象徴されるように古きよき時代の武勇で語られる戦争でこの戦争も考えているバカさ加減にはイライラを通り越して怒りが込み上げてくる。

1930年版は若い時に観てラストだけは記憶していたのだが、それとは全く違うテイストで残酷な描写に徹したことで現代の戦争の理不尽さがより強調されているように思った。

第一次世界大戦後、世界は大量虐殺を行う近代戦に突入し日本も太平洋戦争でそれを体験することになる。
残酷な現実しか存在しない戦争という行為の愚かさを、現代だから可能な描写であらためて訴えた映画として記憶に残る。

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