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🎬Gメン 感想
キネマ旬報2023年読者選出日本映画ベスト10第1位。
痛快。
マンガ原作のようだが、昭和をピークに絶滅危惧種になったと思っていた「青春友情ケンカ映画」が令和で十分通用したことはうれしい限り。
童貞で、しかしケンカ無双の高校生・門松勝太を中心に、個性的なキャラたちが自由に動きまわる展開はスピーディー。
モテたいために転校してきた勝太と同じ落ちこぼれクラスの友だちたちの「昭和枯れススキ」、「馬面」、「キモヲタ」が笑わせる。
それに加わるモテモテなのにド天然の拓実のキャラがいい。
勝太の人間としての魅力に惹きつけられて仲間が友情を育むのは昭和ツッパリドラマの王道なのだが、そんな映画やマンガで育った世代としては十分共感できる。
担任の雨宮先生役の吉岡里帆のサイコパスぶりがおもしろい。
伝説の"Gメン"メンバーで、勝太に好感を持つ先輩・伊達役の高良健吾が頼りになり、かつ繊細で印象に残った。
その他、車の運転がめちゃくちゃな田中圭、ラスボスの尾上松也もしっかり脇を固めている。
物語は、主役の勝太が童貞でモテたくて仕方がないのだがケンカは無双の強さ、そして人間としてはしっかり筋を通す、いささかアンバランスだがすこぶる好漢であるところが肝なのだが、そんな勝太を岸優太が実にうまく血の通った人物として自然で嫌味のない演技で魅せているのは見事。
個性的過ぎるキャラが次々に登場するので、ともすればチグハグになってしまう危険性のある映画なのだが、中心にいる岸がすべてのキャラをしっかりストーリーと接着させていて、作品としての安定感を生み出している。
ゲイとのやり取りは最近いろいろな映画やドラマにあふれ過ぎていて、一つ間違えると「何でもかんでもゲイを出せばいい」という無責任な描写になってしまうのだが、勝太の人として誠実な姿を岸が手堅く演じていて後味がいい。
岸に関してはテレビのバラエティー番組で見る姿とは全然違っていて、深いところで演じていると感じられたのは意外だったが、これからの活躍が期待できる原石を発見した思いすらする。
いずれにせよ、あまり理屈っぽく語るのも野暮というもの。
ちょっと心が辛いときに、熱いドラマで笑って泣いて楽しむことをおすすめします。