見出し画像

🎬イングロリアス・バスターズ 感想

タランティーノ作品としては『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を先に観てしまったが、あの痛快なラストシーンの萌芽は本作にあったのかと納得。
第二次大戦時ナチ統治下のフランス。
「ユダヤ・ハンター」と呼ばれ恐れられているナチス親衛隊ランダ大佐は情け容赦なくユダヤ人の殺戮を繰り返していた。
一方膠着した西ヨーロッパ戦線の奥深く潜入しドイツ軍を撹乱するため組織されたアルド・レイン中尉率いる秘密部隊「バスターズ」もナチハンターとしてドイツ兵を片っ端から惨殺し、その話はヒトラーの耳にも届いていた。
ランダ大佐の虐殺から生き残ったユダヤ人女性ショシャナが正体を偽って経営するパリの映画館を舞台に、英国と「バスターズ」が画策するナチ高官殺害作戦とショシャナの復讐、そしてランダ大佐の知的駆け引きがスリリングに描かれる。
印象的なのはオープニングの『アラモ』の主題曲からはじまり全編を彩るエンニオ・モリコーネなどのマカロニ・ウェスタン映画や戦争スペクタクル映画のBGMたち。この時点で映画がマカロニ・ウェスタンや戦争スペクタクルのような勧善懲悪作品だということが明確に示されている。
映画に登場するナチスはランダ大佐をはじめ残酷で傲慢なので同情する余地はまるでなく、殺されても仕方ない存在だと印象付けられるので「バスターズ」の活躍は痛快に感じる。
アルドがアパッチの末裔で皮剥ぎをするというのは、古い西部劇では悪者扱いだったインディアンを正義の側にするという皮肉を込めた演出か。
デビッド・ボウイのCat People もいいところで流れるが妖艶で印象深く、そのシーンのショシャナはナスターシャ・キンスキーを彷彿とさせる。
唯一地下酒場のシーンはアルドもランダもほとんど登場しないのだが、全く違う映画のような緊張感に満ちていて異質な出来。
史実ではヒトラーとゲッベルスはベルリン陥落時に拳銃自殺しているのだが、彼らやナチスのしたことを考えると罰としては軽すぎるように思えていて、相応の罰を受けるべきなのでは?と思ってきた我々の鬱屈した気持ちにクライマックスでタランティーノがしっかり答えを出していることには拍手しかない。
どこまでもしたたかなランダ大佐にアルドが伏線回収し死ぬよりもきびしい罰を与える展開も秀逸。
無慈悲なランダ大佐をクリストフ・ヴァルツがメジャー映画初出演とは思えない存在感でキャラ立ちさせていることのすごさは言うまでもないのだが、冒頭の酪農家での尋問シーンでちょっとだけレア・セドゥも出演していて、後に『スペクター』でブロフェルドとマドレーヌとしてしっかり共演しているのはボンド映画ファンとしてはトリビア的でうれしい。
タランティーノ監督作品は次作が最後になりそうだが、こんな映画を「もっと作って」と言いたくなる痛快アクション快作。

#映画
#映画感想
#イングロリアス・バスターズ
#映画感想文

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?