🎬サマー・オブ・84 感想
1984年の夏、15歳の少年デイビーは友だち3人と好奇心から街で起こっている少年連続失踪事件や一家惨殺事件の犯人探しを始める。
'84年という時代を背景にした少年たちのひと夏の冒険をノスタルジックに描く映画………のはずだった……。
デイビーは宇宙人やUFO、未確認生物などに興味を持っている'84年ごろの普通の少年。
友だちたちとエロ話で盛り上がり、年上の女の子ニッキーに特別なモヤモヤした感情も抱いている思春期真っ盛りで、どこか思い出せるところがあってニヤけてしまう。
友だちたちとは夜中に、携帯がないので、トランシーバーでやり取りをしながら連続少年失踪事件にのめり込んでいくのも好奇心旺盛な少年らしい。
'84年らしくロス五輪をソ連がボイコットすることを表明した事件や「熊がスピーダーを操縦する⁈ありえない!」という『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(あえて)』のネタ、『未知との遭遇』の話題などが出てくる展開はこの手の映画のあるある。
音楽も実際の'84年ごろの歌曲を使い、BGMもなんとなく'80年代っぽい。
サスペンス部分の劇伴は、少しだけズレるが、『ニューヨーク1997』のジョン・カーペンターみたいで懐かしく思えるが、これもよくあるパターンと言ってしまえばそれまでかな?
話はそれるが、スピルバーグが『フェイブルマンズ』であえてセルフ・オマージュや過去の映画ネタを前面に押し出さなかったのは、もうこの手法が本当に使い古されているからだと申し訳ないがこの映画で再確認できた。
ご近所の警官マッキーを犯人と信じ込んで友だちたちといろいろやってしまい、両親に叱られるのも「ひと夏の少年たちの思い出」をテーマにした映画ではお約束で、『スタンド・バイ・ミー』という名作があるがゆえにいろいろなシーンで既視感がついてまわり退屈な感じは避けられない。
そんな、なんとなく消化不良なシーンがズルズルと続いていくのだが……。
突然暗転する衝撃展開に映画から目が離せなくなる。
しかもラストに向けて精神的にはかなり残酷でキツい展開が続き、今までの退屈はそのためだったのかと気付いたときにはもう手遅れ。
映画全体がそれまでとは全く違う顔を見せ、救いようのない鑑賞後感におちいってしまった。
ネタバレ厳禁で観ていただきたいが、少年たちの「ひと夏の思い出づくり」の代償としてのあのラストはあまりにも残酷。
幼く無垢な好奇心が人生を悲惨なものにしてしまうことの恐怖を十分感じさせる精神的暗黒ホラー。