🎬オットーという男 感想
気むずかしく几帳面ゆえに頑固で愛想のない孤独な老人オットー。
実は妻に先立たれすべてを失い自殺を考えていた。
そんなオットーの家のお向かいに引っ越してきた若い家族との出会いがオットーを変えていく。
孤独で頑固な老人の物語と聞くとクリント・イーストウッドの専売特許のようで、紳士的なトム・ハンクスのイメージとは合わないのでは?などと危惧していたが、ハートウォーミング・ストーリーとしてトム・ハンクスの起用が功を奏し見終わったときにはジワリと涙がわいてきた。
当初生真面目で融通が利かないアナログ人間の年寄りとして鬱陶しいほどのオットーなのだが、その心の中に秘めていたのは妻への深い愛。
描かれるのはほとんどが若い日々の回想なのだが、たった二人だけで生きてきて深く愛し合ってきた夫婦の物語として観るとそれだけで心を揺さぶられてしまう。
妻が亡くなり後を追おうと何度も死を考えるオットーのお向かいに引っ越してきた若い夫婦、とりわけ妻のマリソルは人付き合いも嫌いなオットーにグイグイ歩み寄ってきて、いろいろなことを頼んできたり、ちょっとした料理を持ってきてくれたりとフレンドリーなのだが、いつかオットーが爆発してしまうのではないかと当初は心配してしまった。
しかしマリソルをオットーが次第に大切だと思い始め、お互いを尊敬し合う姿のさわやかさは、この手の映画では定石のはずなのに意外にも新鮮で感動的。
妻への深い愛ゆえに死しか考えられないオットーが、過去に失った友情やそれまで迷惑だとばかり思っていた人たちと新たな関係を作り生きるすばらしさを取り戻していく展開はやはり涙を誘う。
お向かいさん、妻の教え子との出会いや友だちとの出来事などの偶然が重なるのだが、その偶然こそオットーに少しでも長く生きてほしいと願う亡くなった妻の思いのあらわれだったのかも?と思うと、夫婦の永遠の愛に再び胸が熱くなった。
深い夫婦愛を、妻はいないのに強く感じさせるトム・ハンクスの演技はやはり納得。
猫好きだけでなく、動物好きにはたまらなく愛おしい映画でもある。
よくあるストーリーのようなのに、なぜかところどころでホロリとさせられてしまう独特のやさしい語り口が他とは違う良作。
個人的には、夫婦二人の愛の物語として記憶に残る映画でした。