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個人的 2024年上半期 鑑賞映画ベスト10 (新旧問わず観た映画から)

次点は泣きの2本で

ベスト10
(次点は泣きの2本です…)

1 夜明けのすべて
2  キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
3 オッペンハイマー
4 落下の解剖学
5 関心領域
6 アメリカン・フィクション
7 ミッシング
8 デューン 砂の惑星 PART2
9 福田村事件
10 ゴジラ−1.0/C

次点 aftersun/アフターサン
次点 せかいのおきく


今年の上半期は健康上やいろいろな理由で鑑賞本数は一気に失速していますが、映画としてはオールタイムベストに入るような作品にも出会えた、かなり収穫のあった上半期となりました。

くわしい感想はnoteのアーカイブをお読みいただけるとうれしいです。


寸評(ネタバレありです)

1 夜明けのすべて

やさしい人だけが登場する「やさしい映画」との感想が多かった本作ですが、私は「人間の壮絶な人生」を描いた作品として強く心に残りました。
「やさしい人たち」の描写からその人たちやいなくなった人の壮絶な人生と葛藤に思いをはせること…それは実は鑑賞した人が他者に対してどれほどの想像力を働かせることができるか、それが試されているような映画だと思いました。
しかし映画としては、病気や障害のある人たちはもちろん、これから人生を生きていくすべての人たちに「今日は絶望しても、明日は違う夜明けがくるかもしれない」という生きる希望を与えてくれるメッセージにあふれていると思いました。
2024年のベスト1として動くことはほぼないし、個人的にはオールタイムベストに入るすばらしい映画でした。


2 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

マーティン・スコセッシ監督の新たな代表作と言っていいクライム・サスペンスの秀作でした。
犯罪とその根底にあるアメリカでのネイティブ・アメリカンへの差別という社会的問題、さらにそこにいた複雑な生身の人間ドラマには長尺を感じさせない力強さがありました。
愛と義理、欲の間で価値観を見失っていく主人公を演じたレオナルド・ディカプリオの名演は彼のフィルモグラフィでも特に印象深い作品として記憶されるべきだと思います。
最近好々爺になってしまった感のあったロバート・デ・ニーロが「隠居?バカ言うな」とばかりに悪魔のような人物を飄々と演じていて、これも代表作と言っていい名演でした。
長尺でも迷わずおすすめできる間違いなく記憶に残る犯罪映画です。


3 オッペンハイマー

「2位かな?」と迷いましたが、3位に。
今まで観た映画の中でも感想に半月もかけた数少ない映画の一つになりました。
「原爆の父」という日本人にとってはナーバスなテーマを扱いながら、原爆投下に世界中の人々の視線を向けさせ、その功罪の悲しみだけでなく、これから世界を担う世代が作る未来への期待を描ききったクリストファー・ノーラン監督の志しと新たな試みに共感しました。
ここではとてもすべてを書ききれませんので、私の思いが詰まったnoteの感想を小説並みの長さですがよければご一読ください。


4 落下の解剖学

個人的にはキテレツ解釈ゆえにラストで仰天した映画でした。
常に事件のヒントとミスリードが共存する脚本は見事としか言いようがありません。
「結末は曖昧」との感想が多い本作ですが、私はしっかり真相が描かれていると解釈しました。
なぜ犬は必要なのか?など細かい設定は、鑑賞者として観るより作り手の目線で観ると本当におもしろい映画だと思います。
また「子どもは無垢に違いない」というような人を個人ではなく"あるカテゴリー"で考えてしまう先入観は、逆にその人に「こうあるべき」を強要する考えであることだとも思いました。
余談の域ですが、多様な感想があって当たり前の作りの映画なのですが、ある創作者の方の感想に、明らかに本作の登場人物を個人ではなくやはり"カテゴリーの中の人"として見ることから脱していない感想があり、創作者が観る人に働かせるべき、「夜明けのすべて」と共通する"他者への想像力"とは何か?を考えさせられてしまいました。


5 関心領域

ヒトラーのキャラクターとマンガチックなほどの威圧的な制服ゆえに、過去、創作物だけでなくすべての人類のイメージとして常に「悪のアイコン」として扱われ認識されてきたナチス。
この映画でナチスを「猟奇的集団」と特別視することの危険性に気づきゾッとしました。
この映画で描かれているアウシュビッツでのナチスの虐殺という表層の「関心」ではなく、そこから本当に連想しなければいけない現代社会の現実への「関心」を独特の視点で気づかせてくれた作品として驚きがありました。


6 アメリカン・フィクション

笑いと皮肉に満ちていると言いつつ、実はある脚本家個人をとおしてアメリカ社会のやるせない悲哀を描いた作品でした。
結末は個人的には、この映画全編が主人公の脚本家が不本意でも職業として書いた、アメリカのリベラル派が望む全く現実とは違うアフリカ系アメリカ人の物語だったというオチと解釈しました。
劇中でも触れられていた今や映画になんでもいいから出しとけと思われているゲイの存在もしかり。
ラストに流れるマイルス・デイヴィスの『枯葉』には、時代でうつろう差別の価値観とそれに翻弄され寄り添わなくてはいけない差別される側の人々の悲哀が込められているように思いました。


7 ミッシング

石原さとみと青木崇高の夫婦の無間地獄に安直な救いを感じることはできませんでした。
映画は夫婦を主体に描きながら、そんな様々な苦しみを抱えた人たちに映画を観た人が、ささやかでもどんなふうにやさしい視線を送ることができるのかを問いかけているように思いました。
テレビはそんな視線の逆説的なあり方だと思います。
人間臭すぎる石原、青木、中村倫也の演技ゆえ説得力のある映画であると思いました。


8 デューン 砂の惑星 PART2

PART1よりもアクション、スペクタクルの部分でドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしさが十分出ていた映画だと思います。
リアルなサンドワームとそれによる要塞戦の迫力はPART1で物足りなかった部分を十分満足させてくれました。
銃火器や砲撃の重量感はドゥニ監督らしく圧倒的です。
個人的には『ボーダーライン』シリーズのファンですので、PART1での活躍があまりなかったジョシュ・ブローリンが彼らしい活躍をしてくれたことに拍手。
後から気づきましたが、ブローリンとハビエル・バルデムは『ノーカントリー』で共演してましたね。
線の細かったティモシー・シャラメが見違えるほどたくましく貫禄がついたことも驚きでした。
原作が有名なSF大作でありながらあまり馴染みがなかった本作ですが、今後の展開に十分期待の持てるPART2でした。


9 福田村事件

ドキュメンタリー映画の森達也監督ゆえに惨殺シーンのリアリズムには恐怖を感じました。
映画は、事件が歴史的な事実ゆえの説得力を持っているのですが、この被害者たちが実は日本人だったため人々は後悔している、しかしその背景には関東大震災の後歴史に忘れられた名もなき人々の犠牲があった恐ろしい事実をしっかり匂わせていることが実は大きなテーマだと思いました。
差別意識からくる他者を排除しようとする感覚、そこに至る様々な情報や憶測の氾濫、集団心理の暴走という決して過去のこととして片付けてはいけない事実が直球で描かれていました。


10 ゴジラ−1.0/C

モノクロになったゴジラの存在は、まるで記録映画を観ているようなリアリティが感じられ驚きました。
特に銀座破壊シーンのリアリティは、こんな惨劇が実際にあったのか?と錯覚させるほど。
停泊している駆逐艦のリアリティもモノクロのほうが強く感じることができました。
ドラマ部分は当然現代的なのでセリフ回しなど古い映画を観ているような感覚になるまでには至りませんでしたが、田中美央と山田裕貴の往年のスター俳優を思い出させる存在感にはビックリしました。
明らかに『ゴジラ−1.0』カラーとは別モノとして観たい映画だと思います。


次点 aftersun/アフターサン

過去の人に対する記憶と想像が今の自分を認め救うことを描いた作品として、静かで抑揚はないのになんとも言えない鑑賞後感を残す作品でした。
映画はある男性の最後のバカンスを描いていますが、すべては本当の主人公である彼の娘の記憶と想像で、はっきりと描かれていないのですが、主人公の娘がそれによって自己肯定感を持つというスタイルはおもしろい発想だと思うとともに、実は誰しもが無意識にしているリアリティのある行為であるようにも思いました。
ベスト10入りに最後まで迷いました。


次点 せかいのおきく

ベスト10に入れたかったというのが本音ですが、泣く泣く次点に。
排泄物のリアルさ以外記憶に残らないのでは?などと思って観ていましたが、青春ドラマとしてしっかり完結していました。
映画でハッキリとは描いていませんが、既存の理不尽な権力に対する主人公たちの恨みを「時代の転換」というかたちで歴史が復讐を遂げるという物語の妙にはうなずかされました。
阪本順治監督が、今の時代にも置き換えられる恫喝をぶち込んだ気概に胸がすく思いでした。
黒木華の可憐さだけでも観る価値ありの映画です。



以上、長くなりましたが、2024年上半期の新旧問わず私の観た映画のベスト10と寸評をを書いてみました。

最初にも書きましたが、それぞれの映画の長い感想についてはnoteの過去をさかのぼっていただくか、フィルマークスを読んでいただけたらうれしいなーと思っています。


実はこれから他にしなくてはいけないこともあり、映画の鑑賞本数は減っていくかなー?と思っています。
少なくなっても映画を観て感想を書いたら、長文が多いですが、ご一読いただけるとうれしいなんて思っています。

これからもお付き合いください。

読んでいただき、ありがとうございました。


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