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🎬KCIA 南山の部長たち 感想

1979年、韓国から驚くべきニュースが飛び込んできた。朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺。
今では考えられないだろうが、当時の韓国はパク大統領の軍事独裁政権が支配していて、日本人にとっては謎めいた、近いが"遠い"隣国だった。
パク大統領はカンボジアのポルポト政権と並ぶほどの独裁者として世界的にも恐れられていたと思う。
そのパク大統領があっさりと暗殺され、しかも実行犯が大統領の片腕で国民を力で支配していたKCIA(中央情報部)の部長だったことがさらに驚きを持って受け止められた。

映画では事件の40日前から実行犯のKCIAキム部長の動向を追うかたちで展開していく。

独裁者として誰も信用できず力だけで国民や側近たちをも支配するパク大統領。
大統領側近の座をめぐって諍いの絶えない取り巻きたち。
腐り切った当時の政権内部が生々しく描かれている。

キム部長には18年続き軍事独裁色をさらに強めているパク政権を米国がすでに見限っているという情報も入ってくる。
そんな米国の意図と大統領の板挟みとなり、しかも民主化運動に一定理解を示すキム部長だが、気まぐれに側近たちを扱う大統領に振り回されてしまう。
革命当時は同志だったパクだが、長期政権の中でおのれの利得と権力におぼれる亡者と化していた。

それにしても、映画でこの政権のやっていることはもはや"ならず者"で、政治劇のはずがヤクザ映画を観ているような気分にさせられてしまう。

映画は友人まで殺して大統領に尽くそうとしたキム部長にある程度の同情をしながらも、暗殺の背景にあったのが米国からも見限られた"裸の王様"パク大統領の人格の破綻とヤクザまがいの側近たちの権力闘争だったことにため息をついているように思える。

国民を抑圧してきたパク大統領が側近に暗殺されてしまうという情けない最期を迎えるのは自業自得なのだが、当時の韓国政権の腐敗ぶりには呆れ果ててしまった。

その後軍事独裁政権を引き継ぐチョン・ドゥファンも登場し、救いようのないほど薄汚れた人間として描かれているのだが、そこに韓国国民の長く続いた軍事政権への怒りが垣間見える。

そんな近くて遠い国、韓国のイメージを大きく転換する映画が2000年1月日本で公開された。
映画のタイトルは『シュリ』。
エンタメなど育ってないと思い込んでいた韓国でこんなにおもしろい映画が作られていたことには驚愕した。
その後BoAが日本デビューし『冬ソナ』ブームとなり、韓国は日本人にとって近くの隣人となっていく。
その後の韓国エンタメの躍進はご承知のとおり。

映画に戻るが、本作は韓国近代史を語る上で避けて通れない大事件をスリリングに描きつつポリティカル・サスペンスのみに偏らず人間臭いドラマとして仕上がっているのはエンタメとしてさすが。
結末はわかっているのだが、それに至る人間の葛藤と禍々しさがしっかりと描かれていて独特の緊張感が漂い続け目が離せない。
イ・ビョンホンが、さまざまな状況に翻弄されボロボロになるキム部長をなりふり構わず演じ印象に残る。

私は子どもの頃驚いた大事件の全容を初めて知られたので、スッキリした。

#映画感想文
#映画好きと繋がりたい
#映画好きな人と繋がりたい
#南山の部長たち

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