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「人の思い出、他人にとってはただのゴミ」

田舎によくある、大きな家にギッチリものが詰まった義実家で
うっかりと「人の思い出って、他人にとってはただのゴミですよね」
言ってしまった。

しばし固まったあと義母は「おお、怖い怖い」と言い返した。
別に怒ってはいなかったが、本心から恐ろしい嫁だと思ったことだろう。

家で商売を営んでいた義実家には、来客用の無数の食器や、子供たちの思い出の品まで、入る限り詰め込んである。特に義母にとっては優秀で、大学から家を出てしまった旦那の思い出のものは、すべて取ってあるようだ。
結婚当初は、小学生の夏休みの宿題で作った貯金箱や、県知事に表彰された自由研究。町内のマラソン大会の賞状まで見せられた。
そういったものは一度見たら満足する。再び登板することはない。
でもあの大きな家のどこかに仕舞ってあるのだ。

しかも商売をやめて、暇になった義母は自分の年表を作り出した。
それも結構な大きさの折り畳み式の本格派だ。

19○○年、お父さん談合で連行される。
20○○年、▲▲▲、□□入社

みたいな事が、新聞記事やら、資料を貼りつつ綴られている。
一度は見せてもらったが、もう興味がない。
義両親とは関係は悪くなく、一人で行けと言われれば一人でも行けるし、宿泊もできる。二人は田舎の住まいのとても良い人達だ。地域の常識が違うと割り切っているので、大概の事は我慢ができるし、ありがたい事に同居の予定もない。うちの両親に比べ、夫婦仲もとてもよい。老人が暇を持て余して頻繁に連絡してくることもなく、年表を作って楽しく過ごしているのであれば、それは良い事なので嫁の私が口を出す事ではないと思っている。

関東の郊外にあるウチの実家も両親ともに健在だが、父が足を悪くしてから一戸建の家と車を処分して、駅近くの2LDKのマンションに移っている。
その時に姉と私の部屋にあった物は、手伝いに行ったときに大体処分した。
私が実家から持ち帰ったのは、幼少期からの写真アルバム数冊と、学校の卒業アルバム位だ。青春の思い出も、元カレの写真も全部捨ててしまった。
手元にある卒業アルバムも、高校時代ものは私が不細工すぎて、息子から学校生活を心配されたので、死ぬまでには捨ててしまうつもりだ。

いまさら両親のドロドロとした内情を残した品物が出て来ても、気持ちが悪いだけだし、デスノートを書いているのであれば、処分しておいてほしい。
親子関係は悪くないが、今に重点を置いているドライな両親はあまり姉と私の思い出話をしない。顔を出そうかとお伺いを立てると、「予定がある」と断られることも多い。
やはりそれはそれで、楽しいのなら良いと思っている。

一緒に旅行に行く機会があった時、義姉から「義母が先祖代々の墓石を新しくしたいと言ってる。墓守をするのはあなた達なのだから・・・」と言った趣旨の話をされた。聞きながら、私には関係ないなと聞き流した。私の知らない先祖と同じ墓に入る事も想像できないし、墓参りなぞ、今まで2、3回しか行ったことがない。激務な旦那に遠慮して、ワンオペな嫁にも遠慮して、義両親から墓参りのために帰省するように言われたことがないのだ。
旦那も義姉に「一人で墓まで行けないでしょ?」と言われていた。それぐらい旦那は他人に興味がなく、仕事のために生きている。

義母の旦那に対する思い入れは、私にとっては他人の思い出なので、自分達で完結してくれることを祈るだけだ。旦那は仕事以外のやりたくない事は聞こえないふりをするのが常だ。ただ義母の思いだけはこちらにパスされても困るのだ。分別するのも私には無理だ。面倒な事が大量に含まれる、重たい重たい人の思い出。ゴミに出しても揉めるだけ。
夫婦関係をこれ以上悪化させないためにも、お互い自分の周りは自分で掃除をした方が良さそうだ。


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