【就活記5】10社の内定から入社先を決めた話
どうにか無事に大学院を退院した新卒社会人のメモ。昨年の4月末から始まった当シリーズも今回が最終回だ。なお、シリーズ物だが最初から読む必要は特にない。
今回は内定が出揃ったあたりから入社先を決めるまでの過程を取り扱う。就活の HowTo 的な内容はあまり含まないため、もし以下のようなコンテンツをお探しの方は過去の記事を参照すると良い。
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この記事で伝えたいこと
結論ファースト原理主義者が心をかき乱しながら読み進めることがないよう、いつも通りエグゼクティブ・サマリーを用意してある。結論、お伝えしたいことは以下の通り。
判断軸の設定でもキャリアビジョンが重要になるため、社会人との会話を通じて解像度を高めていこう
企業比較の際、厳密な定量評価にこだわる必要はない
入社先選びではポジティブな感情よりもネガティブな感情に重きを置くと良い
比較するのは個別の企業同士であってその業界や資本ではない
本記事の構成と前提共有
本記事は前後半の二部構成となっている。前半では入社先を決断するための判断軸をどのように設定していったのか、時系列的に振り返る。後半ではその判断軸を用いて内定先企業をどのように評価していったのかを振り返る。
そんなわけでさっそく本編開始……の前に、前提となる知識を共有しておく。まず、私が内定を頂いた企業の属性・業界と職種、内定出しの時期について以下にまとめた。
このように列挙すると内定コレクター感がバリバリ出てしまうが、内定を得るのはただの手段であり目的ではないので注意したい。私も企業研究や夏インターンへの参加などを通じ、「良さそう!」と思った企業に絞って本選考に臨んだ感じだ。……とはいえ、「内定の数を増やしてニヤニヤしたい」という下衆な動機が 100% なかったかと言われるとちょっと怪しいかも。
ところで、私の就活の特徴として「選考段階では志望順位を決めていない」というのが挙げられる。これは余計な思惑を挟まずに内定が出てからフラットな目線で企業を評価するためで、面接でも正直に志望順位を定めていない旨を伝えていた(まあここは嘘ついても良いとは思うが)。下手に順位を決めてしまうと上位企業の良いところだけを見てしまい、入社後のミスマッチに繋がるリスクがあるだろう。また、大変ネガティブだが「第一志望の企業に落選してゲキヘコみ」となるリスクも多少緩和できる。
一方で、内定が出揃ってからの決断は情報量が多いこともあってかなり大変だ。具体的な流れはこの後に記すが、全体的なスケジュールとしては M1 の3月あたりから判断軸について真剣に考え始め、決断を下したのが M2 の6月となった。最終的に8つの判断軸を設け、各軸の優先順位も付けた。
正直この作業は明確な答えがないため、頭がぐるぐる混乱しかなりの思考リソースを消耗した数ヶ月となった。とはいえ、就活の最終地点として大変重要なプロセスであるためじっくり時間をかけたのは良かったと思う。もし志望順位を明確にしていたとしても、「第一志望に受かって即就活終了!」というのはややリスクが大きい気がする。一度冷静になって自分自身の価値観と企業について見直す時間を設けても良いだろう。
判断軸の設定
ようやく前半部分スタート。まず初めに ES や面接などで使用していた「就活軸」について共有しておきたい。私は以下のような3つの軸をメインにしていた。
社会インパクト:業務を通じて社会に与える影響が大きい(自身が会社に与える影響と会社が社会に与える影響の掛け算)
成長の質:社会人として普遍的に役立つスキル(横)と専門的スキル(縦)が身につく
成長の量:若手のうちから意思決定に携われる頻度が多い
これくらいの粒度感で、根拠となる体験なども具体的に示せれば ES や面接では特に問題ないだろう。一方、内定企業の判断軸を定めるにはこの就活軸を発展させていく必要がある。
で、最初に軸の深堀りをしたのは前述したように M1 の3月となる。これは自主的に行ったというよりは、3月末に内定承諾の期限を設けていた企業がいくつかあったからというかなり受動的な理由だ。もちろん「4月の◯日に内定が出揃うので待っていただけませんか?」などと打診すればわりと柔軟に延長してくれるとは思う。ただ、日系メーカーや商社を受ける関係で6月まで就活やるなどというケースでは難しいだろう。
ちなみに、内定受諾だけしておいて後から取り下げというのも法的には問題ない。たださすがに不誠実かなと思い私は実行しなかった。
3月
そんなわけで判断軸設計がスタートするが、まずは会社で業務を行うにあたって関連しそうな要素を列挙してみた。そこからさらに実現したいキャリアビジョンに何が必要かを考えていった感じだ。キャリアビジョンに関しては前回記した「実現したい世界(What)基準」か「やりたいこと(How)基準」のどちらかで深堀りしていくのが良いだろう。
で、私の場合ロジックツリーの最上段として「業務」と「環境」に分けて考え、それぞれ3つの要素を設けた。「業務」では社会インパクトの大きさ・成長の質・業務自体への個人的な好感度の3つ、「環境」では成長の量・居心地の良さ・コミット度の高さの3つだ。
就活軸で特に触れていなかった要素について、具体的には以下のような感じだ。
コミット度:仕事に対するコミット度が高い人の多い環境・文化である
居心地の良さ:競争が激しくなくお互いに協力し合う文化でありながら、感情よりは論理性を重視する環境である
好感度:業務を通じて世に出したプロダクトやサービスが好きである
前回述べたように秋以降は社会人と 1on1 で話し合うことを継続しており、そこでのやり取りから得た知見を自身の価値観と照らし合わせて具体化させた感じだ。特に環境に関しては、過去の体験から「どういった環境であればモチベーションを維持できるか」「逆にどういった環境だとシワシワになってしまうのか」を洗い出した。
私はわりと怠惰な人間なのでやる気のない人ばかりの環境だと一緒に怠けてしまうが、周りがガンガン走ってて最下位の状態では必死になって走り出すことができる。その一方で相手を蹴落としてまで勝ちにこだわるような性分ではない……といったような感じだ。
こういった洗い出しも、その粒度感や判断軸への落とし込みが適切か否かは学生の立場で考えるのは難しい。社会人との会話を通じて解像度を高めていくことの重要性を改めて強調しておきたい。
4月
そんなこんなで上記の判断軸を用いて内定企業を評価した結果、3月末を承諾期限としている企業2社については内定を辞退させていただくこととした。比較の際は企業と判断軸でマトリクスを組み、各項目に◯△☓くらいの粒度で評価とその理由を記載した。徹底的に定量評価し、合計得点の一番大きい企業を選ぶ……などできたら美しいのだが、ロジックの及ばない感覚的な部分も大きいため実際には難しい。あまり定量評価にこだわりすぎるのも危険だ。
で、その後も周りの社会人に「この判断軸どう?」とぶつけまくって FB を貰っていた。この FB を通じてやったことが、判断軸の優先順位付けだ。それぞれの軸同士を比較し、どちらがより重要かを考えてソートしていった感じだ。
ただし、順位付けはめちゃくちゃ厳密にやるというよりは直感的に考えて良い。繰り返すが定量評価は難しいため、順位に応じて重み付けして比較……なんてこともあまり意味がない。どちらかと言うと順位付けによって軸をさらに深堀りすることが重要だと思う。
私の場合、順位付けを通じて「成長の質」において専門性よりは普遍性の方に重きを置いていること、社会インパクトに対する拘りが強いことなどが判明した。ここからさらに「社会インパクトって具体的にどういうこと?」といった感じで深堀りを続けていった。
5月
そんなこんなで内定が完全に出揃った5月。社会インパクトについて反芻しながら随所で吐き出して FB を貰った結果、最終的にこの要素も量と質に分割することで腑に落ちた。
量に関してはほぼ今まで通りで、プロダクト(or サービス)が顧客に届くまでのプロセスで自身が関わった割合と顧客の人数の掛け算だ。質に関しては業務を通じて満たされる顧客ニーズの重要度で、私は「イシュー度合い」という表現をしている。こちらはかなり主観的な判断軸になるが、いろいろと考えた結果最も優先順位の高い軸となった。
というわけで、8つの判断軸を設けて残りの企業から入社先を決めていくことになった。各判断軸の優先順位と詳細について、以下にまとめた。
判断軸による評価
で、後半スタート。3月以降、上述した判断軸の設定と並行して企業の評価を進めていた。やっていたことは主に2つで、1つは内定先企業の社員さんと会話すること、もう1つが同期候補と会うことだ。なんかこうして振り返ると就活後半はお話してばっかりだな……。
やっていたこと
まず社員さんとの会話についてだが、これは前述した評価軸・企業のマトリクスで不明な部分を洗い出して尋ねてみるということをしていた。以前の記事で触れたように多くの企業は内定者に対してメンターをつけたり面談の機会を与えたりなどでフォローを入れてくれる。社員さんと接触できるタイミングを活かして確実に疑問点を解消していき、判断軸の解像度を上げていくことが重要だ。
もう1つの同期候補との顔合わせについて、これは職場の環境・雰囲気・空気感について理解を深める良い機会だ。インターン経由での選考であれば雰囲気もなんとなく掴めるものだが、そうでなければ入社前に同期と会える機会は非常に貴重なため積極的に活用したい。対面での顔合わせ会を開催してくれる企業も多いはずだ。
意識したいこと
ここで意識しておきたいのが、ポジティブな感情よりもネガティブな感情に重きを置くということだ。「え、何言ってんの?普通逆じゃない?」と思うかもしれないが、実際初めて顔合わせして数時間で「この同期最高!!」となることは非常に稀だろう。その一方で「あ~……この環境は居心地悪いなあ」というのはすぐわかる。
一般的な日常生活であれば、「ネガティブな側面よりもポジティブな側面に目を向けよう」というのはよく分かるし実際私もそうしているが、入社先選びとなると話は別だ。下手したら今後数十年も同じ空間を共にする同期や職場環境について、懸念事項がある場合はかなり重く受け止めるべきだろう。
ちなみに私の場合も「この会社けっこう面白いぞ!」と思っていたら、同期がパッション 100% ゴリゴリベンチャータイプばかりでシワシワになってしまったことがある。その一方で最終的に選んだ入社先の顔合わせにおいて何か「ビビっ!」とくるようなものは感じなかった。初対面においてポジティブな感情というのはあまり表に出てこないものなのだろう。
最後にもう1つ、企業の比較において重要なことをお伝えしたい。それは比較するのは企業同士であってその属性ではないということだ。例えば「事業会社かコンサルか」みたいな比較はよく耳にするが、入社先選びでは個別の企業同士を判断軸で比較していくため、こういった属性で考えるのはあまり意味がない。もちろん業界や内資・外資の比較なども同様。個別企業の理解度を高めて確実に比較していこう。
6月
そんなこんなで社員さんとの面談や同期候補との顔合わせを終え、6月になってようやく最終的な決断を下した。内定を大量に獲得すると辞退の連絡を入れるのも一苦労だが、失った時間労力よりは確実に得たものの方が大きいため問題ないだろう。ちなみに、内定辞退に対する引き止めや説教などは一切なく全てメールで完結した。「オフィスに直接出向くよう言われて行ったらコーヒーぶっかけられた」みたいな話もネット上では耳にするが、都市伝説じゃあないか?
ちなみに、最終的に入社した企業に関する情報はトップシークレットとさせていただきたい。そもそも内定先も一切明かしていないためバレることはない……と思いたいが、今後社会人の新生活について note で書くこともあるだろうから、勘の鋭い方は察してしまうかもしれないなあ。
結論
最後に改めて本記事で伝えたかったことをまとめておく。
判断軸の設定でもキャリアビジョンが重要になるため、社会人との会話を通じて解像度を高めていこう
企業比較の際、厳密な定量評価にこだわる必要はない
入社先選びではポジティブな感情よりもネガティブな感情に重きを置くと良い
比較するのは個別の企業同士であってその属性ではない
おわりに
というわけで、約1年にわたって続いてきた本シリーズだがこれにて完結となる。
改めて自身の就活について振り返ってみると、得たものが非常に多かったと感じる。正直なところ私は「働く」ということに対して元々拒絶感を持っており、就活というイベントも大変な苦行だと認識していた。院進したのも深層心理ではひとまず就活を避けたいという思いがあったかもしれない。
しかしながら実際に就活へ放り込まれると、必死になって選考対策やインターンなどに取り組む中で PDCA を全力でぶん回し、様々な学びを得た。特に人にわかりやすく伝える力・論理的思考力・チームで協働するコミュニケーション手法など、今後社会で生きていくにあたって必要なスキルに磨きをかけることができた。また、業界・企業やビジネスモデルに関する知識を得ることで世界の解像度が高まり、他の就活生や社会人との接触を通じてキャリアに対する理解も深まった。
もちろん楽しいことばかりではなく、時間のない中で迫りくる締め切りや詰め込みすぎた夏インターンなど大変なこともたくさんあった。とはいえ、選考通過の嬉しさ、落選の悔しさ、グループワークで良い発表に仕上がったときの高揚感など、就活に取り組んだ1年間で青春っぽい経験を数多く重ねることができた。この1年で得たスキルやキャリアに対する考え方は今後の人生においてもきっと役に立つだろう。
……と、ここまで書いてしまうとなんか宗教臭くなってしまうが、本当に就活というのは自身を成長させる良い機会だと感じる。受験勉強や学校の試験と違って明確な答えがない分苦労する面はあるが、実践を重ねながら自身に合った攻略法を見つけていくというのも楽しいものだ。私の就活記5本が少しでも後輩の役に立てば幸いである。
最後に、選考対策にお付き合いいただいたメンターの皆様、企業や自身のキャリアについての様々な有益な情報を提供いただいた社会人メンター・OB の皆様、グループワークで協働した同期のみんな、選考内容など貴重な情報を残していただいた先輩方、面接やインターンなどでご対応いただいた社員の皆様、夏インターンでぽっかりと空いた穴を埋めていただいたバイト先・長期インターン先の皆様、そして日常生活を支えてくれた両親と猫に深謝の意を表したい。
感謝感激雨あられ!!
……といったところで今回はここまで
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