パリで鉄オタ活動していたら白人への偏見に気付いた話
ステレオタイプってなかなか払拭できない。
今回は前回のイギリスに続き、留学から帰る途中でフランスに立ち寄った際のお話。
なんでパリへ?
パリを訪れた理由はまたしても特に無く、ロンドン行くならパリも寄っていかないとねという軽いノリでパリに訪れたのである。
滞在期間は4日間で、丸々観光に使えるのは2日間。ロンドンに比べれば時間はあるものの、あまり余裕はないため観光地巡り、市内散策、鉄分補給にそれぞれ効率的に時間を振り分けることにした。
パリの事前情報
一応観光ルートを計画したり旅費をケチるために現地情報を留学前に集めてあった。
2019年夏時点でのパリの情報としては、2018年末から続くイエローベスト運動が激化しており、4月にはノートルダム寺院が炎上、それに伴いデモもさらに炎上、そして夏になると大熱波が襲い掛かり街そのものが灼熱地獄というまさに世紀末な世界が広がっているというものであった。
そんなわけで、燃え盛る街中をヒャッハーなモヒカンがわちゃわちゃしている光景を楽しみにしながらパリへ向かった。
いざフランス入国
ロンドンのセントパンクラス駅を出発したユーロスターはすぐに長いトンネルに入り、郊外まで走ったところでようやく地上に出る。
そこからは延々田舎景色の中を爆走するのみだが、やはりだだっ広い平原が広がるというのは日本では見られない光景で楽しかった。
しばらくするとまた長いトンネルに入る。景色が見れなくなると少し疲れが溜まっていたのか一瞬寝落ちしてしまった。
。
。。
。。。
意識が戻ったとほぼ同時にトンネルを抜ける。ドーバー海峡を越えフランスに入ったのだ。
列車はベルギー国境付近のリールという街に立ち寄りいくらか乗客を降ろし、すぐにまた大平原の中をパリに向けて爆走した。
しばらく走ると車窓に建物が現れ始め、在来線も合流してきた。列車は速度を落としながらパリ北駅に滑り込む。
ロンドンからは約490kmで2時間半。感覚的にはだいたい東京大阪と同じくらいだ。
せーのっ!ジャンプ!
初めてユーラシアの大地を踏みしめた瞬間である。
当然だがフランスの公用語はフランス語。しばらく英語圏にいたため、周りの会話が突然わからなくなる感覚はかなり不思議だった。
パリの交通網
パリはまたしてもゾーン制の料金体制だが、メトロは全て均一料金で、ゾーン1内であれば国鉄もメトロと同じ切符で乗れるなど地味に親切である。
東京で例えると23区内であればメトロもJRも同じ切符で均一料金で乗れる感じ。
(公式サイトより引用)
しかしながら私は毎度のごとく宿を郊外に取っているため、そこそこ高額な料金が請求される。そんなわけでメトロから郊外路線まで、おまけにバスにも乗り放題になるNavigo Semaineというフリー切符を購入。
ベルサイユ宮殿やシャルル・ド・ゴール空港に行く際も郊外にあたるため有用性は高い。
(公式サイトはフランス語しか対応してないという……)
この切符の厄介なところは有効期限が買ってから一週間ではなくその週の日曜までという点。つまり月曜や火曜に買えばかなりお得だが木曜や金曜だとなかなか渋くなってしまう。
なぜこんなよくわからんシステムを採用しているのか意味不明だが、とにかく私が到着したのは火曜だったため容赦無く購入した。
観光地巡り
パリの観光地はNY同様なかなかボッタクリな入場料を取られるため、パリミュージアムパスというよくばりセット的なフリーパスを使うとよい。
各観光地でわざわざ入場券を買う必要もなく実質的に優先入場となるため効率的。
ベルサイユ宮殿
まずは定番のベルサイユ宮殿へ!
……なんだこれ。
まさかのコミケ並みの待機列!長時間並んでようやく入場。
宮殿の中はかなり広く、映える写真も多く撮れて楽しかった。
ちなみに画角を下げるとこんな感じ。人だらけ。
ルーブル美術館
お次はルーブルへ。
ちなみに私は教養の欠如ゆえに芸術にそこまで興味があるわけではない。中学では美術部だったというのに!
基本的には教科書でよく見る絵画やら彫刻やらをものすごい勢いで写真に収めていくことになり、感覚としては実績解除タイムアタックをしているようだった。
そして一番の難関コースがこちら。
モナリザ。なんでこんなに人気なのか理解に苦しむ。
実績解除。
マップを埋める感覚で虱潰しに全ての作品を見てゲームクリア。だいたい入場待ちも含めて5時間ほどかかった。
凱旋門
ド定番すぎて芸がないが仕方ない。
こちらはシャンゼリゼ通り。端から端まで歩いたがあまりおしゃれな雰囲気は感じなかった。たぶん竹下通りの方がオシャレ。竹下通り行ったことないけど。
日が沈んでから凱旋門を登る。エレベーターとかいった類のものはなし。バリアフルである。
展望。パリは高い建物が全くなく、エッフェル塔だけがそびえ立っている光景はなかなか画になる。
ライトアップが良い感じ。
そしてこちらは昼間のエッフェル塔。
下からパシャリ。フリーパスに含まれていないこともあり登らなかった。
どちらかというと「エッフェル塔の見える景色」が見たいのであって「エッフェル塔から見える景色」が見たいわけではない。
オルセー美術館
フリーパスを有効活用したい乞食根性で訪れた。
駅を改修して美術館にしたようだ。
NYでも探してたドガやマネ、ルノワールなど印象派の絵画が中心となっているが、フランソワ・ミレーの「落ち穂拾い」など写実主義の絵画もあった。
ピカソ美術館
ゲルニカを見に行った。
……が、ゲルニカは展示されていないという罠。圧倒的リサーチ不足。
ロダン美術館
こちらは彫刻中心のためサクッと見て回った。
考える人。
ノートルダム寺院
思っていた以上に損傷が激しかった。
鉄分補給
フリー切符のおかげで今回はどちらかというと乗り鉄中心であった。
車内はこんな感じ。
2階建て車両もバリバリ走っている。都市部ではこの図体で地下に入るなどなかなか面白い。
年代の新しい車両は車内の配色もオシャレ。
先頭にはRERとSNCFのマーク。SNCF(フランス国鉄)によって運行されているパリ近郊の路線をRERという。ややこしい!
少し郊外の方では路面電車も走っていた。
メトロはこんな感じ。あまり地上に出ない上ホームドアが整備されてないため写真はほとんどなし。
市内散策
セーヌ川周辺の景色がパリらしくて良い感じ。
郊外の方の住宅地も美しい。
ちなみに、ほとんどのフランス人は英語話せるのに加えて、都市部の方ではレストランなどでも英語メニューが出てくるためフランス語が一切わからなくても困ることはない。
実際私も「めっし!」と「ぼんじょあ!」しか喋らなかった。
郊外の方では当然英語メニューなんてものは存在しないのだが、店員さんがカトコトの英語で説明してくれるという素晴らしいホスピタリティ。
そして白人がカタコトの英語を喋っているという状況は新鮮で、面白みがあった。
……とここで、私の中に「白人は英語ペラペラ喋れる」といった強烈なステレオタイプが存在することに気付いた。
大学でステレオタイプや偏見については散々学んで頭では理解していたつもりなのだが、実際に遭遇してみるとそういった意識は拭いきれていないことが実感できる。
というかよく考えたら「白人」という括りも広すぎる。欧州で見ても英語が第一言語でない国が圧倒的に多いというのに。
数日前にお世話になったスペインのご家族との会話で「あなたは日本人、中国人、韓国人を見分けられる?」と聞かれたのを思い出した。
「髪型とか、服装とか、所作でだいたいわかるかな」と返したところ、「私達も同じで、スペイン人、イギリス人、フランス人って顔のパーツだけじゃ判断は難しいけど髪型とか仕草である程度わかるんだよね」とのことだった。
とはいえ、当事者でなければその違いを見分けるのは難しいだろうし、私も当然「東アジア人」というレッテルを貼られるわけだ。もしくは「アジア人」というレッテルかもしれない。そしてたとえ「日本人」だとわかったところで私の行動が完全に理解できるはずもない。
しかしながら、やはり相手を理解するためにステレオタイプは必要である。一般的なアメリカ人がどんな行動を取るのか、フランス人はどうか、事前にある程度の予測が付かなければコミュニケーションすら成立しないかもれない。だからこそ、差別や偏見にならない範囲においてステレオタイプは必要とされている。
とはいえ、やはり型に完全に当てはまる人なんていないし、必ず何かしらのギャップが存在する。
これは人に限らず都市にも言えるだろう。私はパリを世紀末の世界だという謎なステレオタイプを持っていたが、花の都で美しい都市という考えを持っている人は多いと思う。
たぶん、想像の中のパリと現実のパリには大きなギャップがあるはずだ。
この世界にはそういった複雑性が存在する。そして、そのままではどうにも理解しようがないため、自分勝手に基準軸を設けて世界を切り分け、切り捨てていくのだ。
そしてしばしば必要な要素を捨ててしまったり、よくわからんものを含んでしまい正確なものではなくなってしまう。特にわかりやすく、大雑把に切り分けた場合は顕著で、わかりやすさを重視すると正確性は失われてしまう。
より正確に世界を切り分けるには、わかりづらくても理解する力、すなわち知識や経験が必要になってくる。
私はまだイギリス人もフランス人も区別はつかない。だからこそ、もっと知識を得てこの世界をより善く、より正確に切り分けていきたい。
今回、自分の中にある常識という名の偏見に気付いたのはとても貴重な体験であった。
最終日
そんなこんなであっという間に最終日。お昼過ぎにパリ東駅へ。
TGVなどの長距離列車はパリ北駅やパリ東駅といったターミナル駅に発着する。
ちなみにパリ北とパリ東は隣接しており普通に歩いていける距離である。
予約したチケットを引き換え、↑この機械で打刻。後から判明したのだが、TGVの場合は乗る列車が指定されているため打刻しなくていいらしい。
そして乗車!
そんなわけで、有名観光地を何も考えずに巡りまくる脳死トラベルながらも、ステレオタイプを自覚する体験をするという有意義な旅になった。
そして完全に失念していたが、結局世紀末は微塵も感じることがなかった。気温はジャスト20度くらいで超快適の上、デモも全く行われておらず、ストライキに遭遇することもなかった。全くもって平和のそのものであった。
……といったところで今回はここまで。
次回はフランス地方都市編。
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