【後編】1日で長崎市の観光スポットを巡り長崎市電を乗りつぶした話
約22時間半で長崎市内の主要観光スポットを一通り訪問し、長崎市電の全線完乗も達成する大忙しな旅行記その2。
前回は長崎港から上陸し階段だらけの街をぶらぶらと歩いた後、眼鏡橋・中華街・出島などの定番スポットを巡りながら、長崎市電を半分程度乗りつぶしたところまでを扱った。今回はその続きで、グラバー園の観光から開始。
グラバー園を観光
グラバー園を観光する場合、基本的には坂の下の入口から入ってぐるっと周って再び坂の下の出口から出る……といった流れになる。しかし、実は坂の一番上に別の出入り口があり、グラバースカイロードを使ってアクセスすることができる。斜行エレベーターというアトラクションを楽しめる上に位置エネルギーも稼ぐことができるため、けっこうオススメだ。
というわけで上のゲートから入園。イオンカードを所持していたため 100 円の割引が効いた。イオンカードは提示するだけで入館料などが割り引かれる施設が全国にちょこちょこ存在するため、もしイオンカードユーザーなら持ち歩いておくのが良い。
ところで何の前置きもなく始まってしまったが、グラバー園のグラバーとはイギリス人商人として日本の近代化に大きく貢献したトーマス・ブレーク・グラバーのこと。彼の旧邸が建てられていた土地に長崎市内の様々な歴史的建造物が移設され、一般に公開されているというわけだ。
例えばゲートを入ってすぐのこの建物は旧三菱第2ドックハウス。明治期に三菱造船所が建てた船の建造・修理を行う施設だ。
ちなみに、現在の三菱造船所は長崎湾を展望すれば左奥の方に見える。巨大クレーンが乱立している様子はなかなか面白い光景だ。
……と景色を見ていると、ふと真っ赤なバラが咲いていることに気づいたので撮影。冬ということもあり花弁はちじこまった様子だ。というか冬にもバラが咲くの知らなかった。
こちらのちまっとした建物は長崎高等商業学校の守衛所。長崎高商は東京高商(一橋大)・神戸高商(神戸大)に次ぐ第三高商として設立され、現在は長崎大学へ経済学部として合流しているとのこと。
こちらはロバート・ウォーカー邸。正面からの写真を撮り損ねてしまった。
扉や窓など基本的な作りは洋風建築だが、瓦屋根の木造平屋建てという和洋折衷感がなんとも趣深い。
ちなみにグラバー園にある建物のほとんどは内部も見学可能で、当時の様子を再現した内装や詳細な資料を閲覧できる。
どことなく生活感があって、ここで暮らしていた人々の息遣いを感じることができた。
こちらはフレデリック・リンガー邸。リンガーは元々グラバー商会で働いていたイギリス人商人で、長崎ちゃんぽんで有名なリンガーハットは彼にちなんで名付けられたとか。
外壁は石造りで西洋の雰囲気を漂わせているが、ウォーカー邸と同じく内部は木造かつ瓦屋根の平屋建てという和洋折衷な建物。国の重要文化財にも指定されているらしい。
続いてもう1軒、国の重要文化財に指定されているのがこちらのウィリアム・ジョン・オルト邸……と思っていたのだが、絶賛工事中だった。残念。
やや奥まった場所に建っているのは旧スチイル記念学校。白塗りの建物が美しい。
そしていよいよグラバー邸に突入。
こちらも当然ながら国の重要文化財に指定されているが、それだけに留まらず世界遺産の「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産にもなっている。
雰囲気は今まで見てきた2軒と似通っているが、大きさが段違い。
内装も大変豪華。……だが、生活空間として考えると掃除が大変そうだなあと思ってしまった。家って広ければ良いとは限らないからなあ。
建物の玄関側は庭園も含めかなりキレイに整備されているが、個人的には生活感の残っている裏庭の方が気に入った。
こういうの、良き。ちなみに崖の上に建っている白い建物は日本人シェフによる初の西洋レストラン、自由亭。現在は園内の喫茶店として運営しているらしい。
……といった感じで、やや駆け足ながらも園内の建物を巡ることができた。
大浦天主堂へ
続いてはグラバー園のすぐ近くにある大浦天主堂へ向かう。
いかにも The 観光地な道路を下っていき……
グラバー園の入口横を通過。私は上のゲートから入園したので楽々だったが、こちらのゲートは入口にたどり着くまでに斜面&階段でけっこう体力を削られそうだ。
で、大浦天主堂に到着。建設は 1864 年と、現存するキリスト教建築物としては日本最古である。国宝に指定されているほか、世界遺産の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産でもある大変貴重な建築物だ。
正式名称は「日本二十六聖殉教者聖堂」で、前日に訪れた西坂の地で殉教した宣教師と信者 26 名に捧げられている。また、キリスト教禁教令によって約 250 年にわたり潜伏していた隠れキリシタンの存在が明らかになった、信徒発見の地でもある。
内部は撮影禁止のため写真はないが、まさしくカトリックの教会といった感じの内装で、ステンドグラスや豪華な装飾が大変美しかった。ぜひ現地へ行って見学してほしい。
ちなみに拝観料は 1000 円というなかなかの金額だが、隣にある博物館も見学可能だ。ただ、私は五島でキリスト教関連の資料をそれなりに見ていたこともあり、わりとサクッと見終わってしまった。
大浦天主堂の目の前に建っているのはカトリック大浦教会。大浦天主堂の方は観光客が増えすぎてしまったため、通常のミサなどは大浦教会の方で行われているようだ。
……といった感じで大浦天主堂の観光は終了。この時点で予定よりもだいぶ時間を使ってしまっているが、ひとまず次へ向かう。
オランダ坂散策
で、まずは石橋電停の方へ坂を下っていく……と、何やら面白いスポットを発見。中央奥に見える四角錐の薄緑な屋根が先ほどの大浦教会で、右手にはお寺、左手には神社と3つの宗教施設が至近に集まるという多様性溢れる地だ。祈りの三角ゾーンと呼ばれているらしい。
さらに細い階段を下っていく。奥の方で急斜面を横切っている建物は前回乗ったグラバースカイロードの斜行エレベーターだ。
さらに歩いていくと傾斜が下りから上りに変わり、突如激坂が出現する。勾配 20 %という街中ではなかなか見られない傾斜。これがオランダ坂だ。
とはいえ傾斜の激しい区間はあまり多くない。散策している観光客もいるが生活道路としても活用されているようで、一方通行だが車の通りはそこそこあった。
ふと横を見ると、先ほどまでいたグラバー園や大浦天主堂がチラ見え。手前の中華な建物は長崎孔子廟・中国歴史博物館。今回は旅程の都合でスルーしてしまったが、また機会があれば訪れてみたい。
下り坂と上り坂に分岐するY字路ってなんか良い。坂の上には活水女子大という大学があるらしく、坂を上り下りする大学生をちょこちょこ見かけた。登下校だけで足腰が鍛えられるなんてオトクだなあ。
……と余裕ぶっていたものの、運動不足の私は前日からの蓄積もあってこのあたりで足が悲鳴を上げ始めた。というわけで一旦近くの観光スポットを見学しながら休むことに。
こちらは東山手甲十三番館。外国人居留地の代表的な建物で、無料で見学できるほか1階はカフェとして運用されている。
こちらはお隣の東山手十二番館。内部は資料館になっており、無料で見学できる。建設は 1868 年と大浦・東山手地区に現存する洋館としては最も古く、国の重要文化財に指定されている。
というわけで資料を眺めながら足を回復させ、再び坂を下っていく。
オランダ坂が終わると海岸まで真っ平らな土地だ。
長崎市電乗りつぶし
で、ここからは長崎市電でまだ乗車できていない区間を一気に回収していく。新地中華街で1番系統に乗り換え、長崎駅を経由しながら北上。
終着駅の赤迫電停は1面1線という大変簡素な電停だ。ちなみに路面電車の停留所としては日本最西端である。
他の鉄道路線に接続するわけでもなければ繁華街があるわけでもない、普通の道路の途中でいきなりぶつ切りにされたような感じだ。
というわけで長崎市電の全線完乗を達成し、その後は周囲を散策することもなく折り返した。
ちなみに大浦天主堂の観光を終えた時点でだいぶ時間がやばいと述べたが、その後も遅れを取り戻すことはできずむしろ拡大していたため、長崎を出る便を1本遅らせることにした。
平和公園へ
続いては平和公園へ向かう。予定変更によりなんとか時間を捻出できたものの、滞在できるのは 20 分ほどしかないため大急ぎ。
こちらの噴水は平和の泉。水を求めながら亡くなられた被爆者の霊に水を捧げて冥福を祈っているとのこと。厳かな雰囲気で静まり返った園内に響く水の音が印象に残った。
奥にはお馴染みの平和祈念像。思っていたよりもだいぶ大きかった。
近づくと構図的に難しかったので、引きで1枚撮影。
続いて爆心地公園へ。
平和公園に比べると至近の大通りから車の音が聞こえてくるため、どちらかと言うと街中の普通の公園といった雰囲気。
なお近くには原爆資料館や浦上天主堂などもあるため、合わせて見学してみるのも良いだろう。私は時間の都合上、これにて退散。
浦上地区はまた機会があれば散策に訪れたいところだ。
長崎脱出
というわけでかなりドタバタしながら長崎駅に到着。駅前は絶賛工事中という感じ。
で、次の目的地は……佐賀!ギリギリ 100km を超える距離のため、学割が効いた。
長崎湾に面した行き止まり駅となっているため、端には車止めが。終着駅感があってエモい光景だ。
ちなみに学割乗車券なので特急券を課金すれば西九州新幹線にも乗れるが、トンネルばかりで景色がつまらなそうなので普通列車を利用することに。
で、諫早で乗り換え。諫早~佐賀は大村やハウステンボスを経由する大村線・佐世保線ルートと、有明海沿岸をぐねぐね走る長崎本線(有明線)ルートがあるが、今回は後者を選択。……というか長崎~諫早でも、長与経由の旧線とトンネルで突き抜ける新線の2つがあってちょっとややこしい。
で、ボックスシートに座ってのんびりと有明海の景色を拝もうと思っていたのだが……
長崎出発が遅れたこともあって日が暮れてしまった。
それにしても海岸ギリギリを走り抜けるのはなかなか面白い。
有明線は地域輸送というよりは長距離輸送のための短縮ルートとして敷設されたという背景から、沿線人口は少なめ。日が完全に暮れる頃には車内も貸し切りになってしまった。
で、終点の肥前浜に到着。ここで佐賀方面の列車に乗り継ぐ。
佐賀に到着。本日はここに宿を取った。通り道として素通りされがちな佐賀だが、今回の旅ではちゃんと観光していく。
というわけで長崎編はこれにて完結。長崎は魅力的な観光スポットが多く、1つ1つの充実度も高かった。たった1日で主要スポットを巡るのはだいぶ無理があったが、各スポットが比較的集まっており交通の便も良いためなんとか実現できた感じだ。今回訪れることができなかったスポットもいくつかあるため、また機会があればリベンジしたいところだ。
……といったところで今回はここまで。次回、佐賀編に続く!