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読書メモ『SINGLE TASK 一点集中術』

SINGLE TASK 一点集中術の読書メモです。

本書はシングルタスクを実践するためのテクニックを中心に書かれている印象ですが、ここでは「なぜシングルタスクにすべきなのか」「なぜシングルタスクを実践できないのか」というところを重点的に解説していきたいと思います。

生産性を上げたいならシングルタスクしかない

SINGLE TASK 一点集中術

なぜシングルタスクにすべきなのか。その理由はマルチタスクよりシングルタスクの方が生産性が上がるからです。

ハーバード大学の研究によると、忙しなく働いている社員たちは1日500回も注意を向けるタスクを変えるのに対し、最も能率の高い社員たちは注意を向けるタスクを変える回数がむしろ少ないそうです。
つまり、タスクからタスクへと注意を切り替える頻度が高いほど、生産性が低くなってしまうということです。
また、マルチタスカーはシングルタスカーよりも外部からの刺激に影響されやすいそうです。外部からの情報を受け入れてしまうと、もともと取り組んでいた作業の能率を落としてしまうので、これも生産性を下げる要因になりますね。

ところで、そもそもマルチタスクとはどのような状態のことを指すのでしょうか?
会議中にメールの返信をしたり、資料を作りながら同僚と雑談したり、家族と会話しながらスマホをいじったり、食事中にテレビを見たり…といった、複数のタスクを同時進行している状態のことです。
このような状態では、注意散漫になって生産性が下がりますし、対人関係まで壊してしまいかねません。

ちなみに、マルチタスクなどというものは、そもそも存在しないと言われています。なぜなら、人間の脳は一度に複数のことに注意を向けられないからです。
「私はマルチタスクをしている」と言う人は、実際にはタスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしているだけなのです。こうした行動を続けているとマルチタスクをしているような気分にはなるものの、現実には脳は一度に2つのタスクに注意を向けられないので、注意散漫になって効率を落としてしまうのです。

ここで補足として、2つのタスクが脳の同じ部位を使わない場合は、例外的に同時処理ができるそうです。つまり、2つの無関係な作業があったとして、そのうち1つが意識的な努力を必要としない場合は、効率を下げずに済むということです。しかし、これはマルチタスクとは呼べません。
例えば、大半の人は車を運転しながら同乗者と会話したり、ラジオを聴いたりできますよね。ただし、これは意識的な努力を必要としないからこそできるのであって、免許を取りたての初心者であれば、運転に完全に集中しなければならないでしょう。

抗いがたいマルチタスクの誘惑

SINGLE TASK 一点集中術 (1)

これだけシングルタスクが大事だとわかっているのに、なぜ私たちはマルチタスクをしてしまうのでしょうか?
それは、マルチタスクの誘惑に負けてしまうからです。

現代人は、おびただしい量の「邪魔物」に取り囲まれていると筆者は言います。その典型がスマートフォンです。常時インターネットに接続されていて、電話やメール、SNSやゲームなど、様々な形で私たちの注意を奪っていきます。こうした外部からの刺激には、身を任せてしまう方がラクなので、つい反応してしまうのです。

私たちの脳が目新しさを求めてしまうことも、マルチタスクの誘惑に負けてしまう原因の1つです。
外部からの刺激があると、そうした変化が良いものか悪いものかに関係なく、アドレナリンが血流を駆けめぐります。そうすると、人は目の前にあるタスクより、新たなタスクの方に注意を向けたくなってしまうのです。
さらに、人には1つの思考にじっくりと向き合うのを避けたがる性向がある、とも言われています。

私たち自身の思考にも問題があります。
誰しも、他人の期待や要求に応えなければならないという義務感や、相手に高く評価されたいという欲求を持っています。
こうした感情は悪いことではないのですが、正しくコントロールできなければ、本来優先したいと思っていたことを後回しにして、タスクに埋もれてしまうことになります。
さらに、現代の文化には「より多くのものごとをこなす」ことを重視する風潮があります。人によっては、自分を疲弊させ、すり減らすことで「自分は重要な人間だ」と思いたがることもあるでしょう。

「いまここ」に集中できる環境をつくる

マルチタスクの誘惑に打ち勝つのは簡単ではないことはわかりました。
それでは、どうすればシングルタスクを実践できるようになるのでしょうか?

先に述べたように、人間の性質上どうしても外部からの刺激には反応してしまいがちなので、そうした刺激に対して予め予防線を張っておくことが重要です。特に、スマートフォンやパソコンのような多機能デバイスは、私たちの注意を奪う天才なので、うまく距離を取る必要があります。
例えば、帰宅後1時間はスマートフォンを玄関に置いておくとか、食事中はカバンにしまっておけば、SNSのメッセージに気付いて返信し始めることもありません。
パソコンを使わずに仕事することはもはや無理だと思いますが、ウェブサイトは見終わったらすぐに閉じるようにして、通知音やポップアップをオフにすれば、1つの作業に集中しやすくなるでしょう。

ただし、相手に対する心遣いは忘れないようにしましょう。例えば、作業に集中するためにチャットツールの通知を切る場合は、「作業に集中するため一時的に通知をオフにしています」と周知しておき、いつ対応できるのかも示しておきましょう。
個人的に、シングルタスクを実践する上で最も難しいのが断るというところだと思いますが、相手に敬意を示した上で、こちらの意図を伝えれば、相手の期待をコントロールできるようになるはずです。
逆に、シングルタスクは相手の時間を大切にすることにも繋がります。スマートフォンを置き、相手の話にしっかり耳を傾けていれば、あなたの敬意はしっかり伝わり、より良い人間関係を築けるはずです。

まとめ

なぜシングルタスクにすべきなのか。それは、マルチタスクよりもシングルタスクの方が生産性が高く、対人関係、ひいては人生を豊かにできるからです。
なぜシングルタスクを実践できないのか。それは、人間の性質や環境、文化など様々な要因により、マルチタスクの誘惑に打ち勝つのが難しいからです。
シングルタスクを実践するためには、環境を変えましょう。特にスマートフォンは集中力を奪う邪魔物の典型なので、意識的に距離を取るようにしましょう。また、相手を尊重した上手な断り方も身につけましょう。

私自身、もともとマルチタスクが得意ではないと感じていましたが、それが人間として当たり前の状態であり、シングルタスクこそが正しいのだとわかって安心しました。
とはいえ、そんな私でもマルチタスクの誘惑に負けてしまうことは日常茶飯事です。この読書メモを書いている最中も、何度もLINEやTwitterを開きたい誘惑に駆られました。やはり、意識しないとすぐ外部からの刺激に溺れてしまいがちです。
スマートフォンと距離を取る、通知を切る、メッセージにすぐ反応しない、食事中は食事に集中する、会話中は相手の話に耳を傾ける、といったところは、これまでも意識はしていましたが、気を抜くとすぐ誘惑に負けそうになってしまうので、より一層気を付けていきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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