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#15感情はなぜ記憶されるのか

Noteのページにお越しいただき、有難うございます。

ここ数週間は、感情の興奮が交感神経の興奮を導き、それによる筋緊張の亢進が筋出力を低下させるという論理から、「感情」を一つのキーワードに記事を書いてきました。

・感情入力は、ネガティブなワードを見たりするとネガティブな発想になりやすいなどの「環境」による影響を受ける。
・感情表出は、自分の周りにその感情を一緒に共感してくれる人がいるとコントロールしやすくなる。
・感情を日記などに書くことは予防策としては良いが、抑うつぎみな状態ではマイナスな面もある。

前回までの3回分のまとめ

感情コントロールは難しく「○○したらコントロールできる」という単純なものではありません。そのため、一人一人の状態に応じた対応が必要になってきます。自己コントロールが難しいと感じた時は、近くの専門家の方に相談するのがおすすめですが、もう少し自分で解釈するために必要な内容も書いてみたいと思います。

例えば、出産経験のある方はその当時の感情記憶がわりと鮮明に残っていませんか?何時ごろに出産したとか、その当時どんな気持ちだったとか、誰が同席してくれたとか、夫が何もしてくれなかったとか笑。

人生で大きな経験をした時は、強い感情も同時に生じやすくなります。その出来事の記憶が脳裏に刻みつけられることを「フラッシュバルブ記憶」と呼びます。この記憶は、一般の記憶と比較して、記憶の変容が起きにくく一貫性が高いとされています。なぜ記憶の変容が起きにくいかは記憶研究や脳機能から説明されています。

強い感情体験をすると、人はそのことを何度も繰り返し考えたり、話せる他者とは何度も話したりします。これは記憶研究ではリハーサルといわれる行為で、記憶を定着化させる機能があります。そのため、鮮明で一貫した記憶をもたらす。

Brown & Kulik,1977

脳機能研究では、感情を誘導する映像と中立的な映像を見せて、脳機能をPETという機器を用いて検査をすると、3週間後に自由再生テストで扁桃体という感情を司る脳機能が強かったものほど記憶が優れていた。

Cahill et al.1996

感情的な刺激を検出する扁桃体は、記憶において重要な海馬というものの隣に位置し、両者は密な神経経路を有しています。このことからも、強い感情体験は長期的な記憶に結びつきやすいため、最初に説明したフラッシュバルブ効果が生じると考えられています。

話を戻しますが、感情をコントロールすることは、お一人お一人の脳裏に焼きついた感情を知っていかないと難しいという現実があります。つまり、○○法で感情はコントロールできる!みたいな方法は存在しないと思った方が良いです。

皆それぞれの人生の中で、さまざまなことを経験し、色んな感情を体験していきます。その記憶を思い出しながら、自問自答したり、信頼できる人に話して整理したりしながら生きてきています。感情をコントロールするには、これまでにどんな大きな感情を経験したか、どんな感情で自分がコントロールできなくなるか、その辺りを一つずつ整理しながら自分の感情に気づいていくことが必要になります。

自分の感情を明確に気づけたなら、脳裏に焼きついた感情は認知し直すことで新しい記憶を構築していくこともできます。

頭の中をぐるぐると回ってしまう感情がある場合、その感情がどの刺激によって発動されやすいのか少し考えてみることも大切かもしれません。

どんな言葉、どんな環境、どんな状況によって、その感情や記憶は呼び起こされますか?新しい自分の感情や記憶に結びつけるならば、それを少しずつ新しい体験に変化させていく必要があります。

最後に私の実体験も少し書いておきます。
私は、大切な人が家に引きこもってしまった経験をした事があります。家に引きこもってしまうと、より自分の頭の中だけで「反すう」を繰り返してしまい、記憶が定着化しやすくなります。その当時は、たまたまその人が虫歯になり、歯医者にいかざるおえなくなった事が家を出るきっかけになりました。あの時、虫歯にならなかったら、もっと記憶が定着してしまい、慢性化していたのかもしれません。本来なら嬉しくない虫歯も今振り返るとこの当時は人生を変えてくれたきっかけになりました。

感情は、この記事のような観点でもあまり自分の中だけで留めすぎるのかよくないと言えるのではないでしょうか。特に度々考えてしまうネガティブな感情は何らかの方法を用いて自分の外に置く時間をつくっていくことは重要なことかもしれません。

今日は感情と記憶について書いてみました。何かの参考にしてください。今週も良い1週間になりますように。

藤井隆太

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