#11感情の捉え方が身体に影響する
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先週、地球上で生活する上では筋肉量が必要になるという内容と筋肉量があって筋出力は必ずしも一致しないという内容を書きました。
このギャップが出る部分には、単純に生理学的に身体に痛みがあるから出力が低下するということもありますが「心の状態」も少なからず影響します。
これまで「心」は、単体で捉えるのではなく、社会環境との繋がりのこと、デカルトの二元論や健康の定義の変化、痛みの定義の変化、レジリエンスの問題、ストレスとそのサポートなど様々な見方によって捉えていくことを書きました。
さまざまな切り口により「心」は説明されますが、今日は「感情」と身体の繋がりを少し書いてみたいと思います。
まず、結論から書きます。
「感情の興奮→交感神経(自律神経)の興奮→筋緊張の亢進→筋出力の低下」が起こります。基本的には自律神経系が関わり、その活動が過剰になることで筋肉の緊張が高まり、筋肉の微調整が難しくなり、筋出力は低下します。
このように考えると、大切なところは「感情」をどう捉え、どうコントロールするかという部分がになってきます。今日はこの感情と身体との関係性を少し掘り下げてみます。
感情は、感情心理学という領域でも明確な定義がないようなあいまいなものです。言葉で表すならば、
「感情とは、自分自身を含めてあらゆる対象について、それが良いものか悪いものかを評価したときに人間に生じる状態の総体」
と説明されています。つまり、人間が何らかの対象に対して良し悪しを評価した際に生じるということになります。
この感情を望ましい方向へ変えようとする認知活動のことを自己統制といいますが、自らの意思で制御しようとする動物は人間だけだろうと言われており、簡単にポジティブな制御ができるわけではありません。
これに対して、より積極的な認知的活動による感情制御方略として「認知的再評価」というものもあります。
具体例をあげると、失恋をしたときに「この失恋はこれからの自分の恋愛に意味のあるものになる」と考え直すことなどが当てはまります。
しかし、私たちは常に冷静に自己統制して認知的再評価をしながら感情を感じ取ることはできません。失恋をしてもすぐに立ち直れる人や状況もあれば、長年考えてしまったり新しい出会いがない場合などもありますよね。
そこで調べられたのが自動的な感情制御機構です。
この実験で重要なのは、この研究の感情制御群の参加者は自らの意思で「怒りを制御しよう」とは思っていないことです。たまたま与えられた単語が不快感情を引き起こしにくかったという環境面での違いということになります。この研究者の考えは、私たちが行う行動のかなりの部分は周囲の環境の手がかりによって自動的に動機づけられた結果であると主張しています。
自動的な感情制御の研究はまだ始まったばかりで、さまざまなことを断定するには至りませんが、本人の感情コントロールだけでなく、周囲の環境の影響を受けることは明らかになりつつあります。
私たちの感情は、自分でコントロールしないといけないとどこかで思っていませんか?実は自分だけで処理しようとすると自律神経系をより興奮させることに繋がりますし、過去の捉え方を変えるという方法だけでも限界があると言われ始めています。周りの環境がどれほど影響するかはこれから明らかになってくると思います。
これだけ情報が多くなっている時代ですから、ネガティブに物事を見すぎずにポジティブな情報に触れようとする事は感情コントロールする手段として重要になってくるかもしれません。特に身体的なパフォーマンスを向上させたいときには自分の考え方だけでなく環境もそのように調整して感情を統制していきたいですね。それがより良い心身の連動へと繋がって、筋肉量に見合った筋出力へと繋がっていきます。
今週も良い1週間になりますように。
藤井隆太