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欧州文化首都2024開幕!!!

前職で縁のあった欧州文化首都。2月には3週にわたって2024年の開催都市がそれぞれ開幕式があったので、3都市を紹介しながら欧州文化首都そのものを紹介してみます!! このシリーズにしては珍しく、目次をつけます笑 つまり長い笑


■基本情報■

欧州文化首都(#EuropeanCapitalofCuture / #ECoC

1985年にスタートした欧州文化首都は、EU(当時はEC)が枠組みをつくり、タイトルを獲得した都市が1年かけて文化プログラムを展開するというもの。

目的

European identityを定義し、その要素を与えようとするなら、ヨーロッパ文化についての意識を主張しなければいけないーー欧州議会で、そんな議論が交わされたことから欧州文化首都は生まれました(Calligaro, “From ‘European cultural heritage’ to ‘cultural diversity’?”)。

私の研究していた展覧会プロジェクトとも共通するのですが、二度の大戦を経たあと、ヨーロッパとしてのアイデンティティ、そしてヨーロッパ人として共通の文化を持っているという意識を高めた共同体となることで、悲劇を繰り返さないようにしたいという意図が感じられる側面でもあります。(個人的に、エラスムス制度も背景はここだと思ってます)

現在もその意図は変わらず、クリエイティブ・ヨーロッパのウェブサイトでは下記のように記載されています。

-Highlight the richness and diversity of cultures in Europe
(ヨーロッパにおける文化の豊かさと多様性を強調すること)
-Celebrate the cultural features Europeans share
(ヨーロッパ人が共有する文化的特徴を紹介すること)
-Increase European citizens' sense of belonging to a common cultural area
(共通の文化圏に属するというヨーロッパの市民意識を増幅すること)
-Foster the contribution of culture to the development of cities
(都市発展に対する文化の貢献を促進すること)

“European Capitals of Culture | Culture and Creativity.” (筆者和訳)

実行委員会とテーマ

開催都市はオリンピックや万博のように誘致活動が行われて決定します。ただ、オリンピックや万博と異なるのはEUの文化政策を担うEuropean ComissionはIOCやIBEのような上位組織を構成せず、あくまで開催都市の選考と実施状況の評価を行う専門会委員会(パネル)が存在するだけということ。開催都市は、それぞれに独自の実行委員会や実行財団を組織して、誘致提案書(bid book)で記載した計画・プログラムに沿って実行をしてきます。そのため、「欧州文化首都」というタイトルは同じでも、都市ごとにそのプログラムの特色やハイライトとなる文化・芸術のジャンルも異なります。
*選考については後半でご紹介。

例えば、2007年の欧州文化首都シビウ(ルーマニア)では93年から続くシビウ国際演劇祭が、2009年の欧州文化首都リンツ(オーストリア)ではアルスエレクトロニカのリニューアルオープンとそのプログラムが大きな目玉の1つとなりました。

では、今年開催の都市は一体どんなテーマで取り組まれているのでしょうか?
2024年にタイトルイヤーを迎えた3都市を紹介します!

■2024年の開催都市とテーマ■

Tartu 2024 (エストニア、タルトゥ) - Arts of Survival

#Tartu2024  

タイトルの獲得が決定したのは2019年秋。他の開催を控える都市同様に、準備プログラム展開するタイミングでコロナ禍を迎えたタルトゥは、ロックダウン解除後に新たに屋外での歩行者天国プログラムを実施しました。

🇬🇧 ERR News reports on the analysis carried out into the effect of Tartu's Car-free Avenue (Autovabaduse puiestee),...

Posted by Tartu 2024 on Tuesday, September 29, 2020

このCar-free Avenue プログラムは、2024年も開催されます!

デジタル化の進んでいるエストニアですが、未来の良い生活をにつながる知識・スキル・価値を"Arts of Survival"として4つの軸にそって多様なプログラムを展開します。

Salzkammergut 2024 (オーストリア、ザルツカンマーグート) - Culture is the new salt

#Salzkmmergut2024

サウンド・オブ・ミュージックの撮影地にもなった、アルプス圏初の欧州文化首都であるザルツカンマーグートは、バート・イシュルを筆頭に23の自治体が協働して欧州文化首都を開催します。

ハプスブルク家の塩の御料地であった歴史的特徴から、テーマにも「塩」を盛り込んだものに。誘致提案書段階(“Salzkammergut 2024 Bidbook (Application Book).”)から企画されていた、塩を用いた作品を制作するアーティスト・山本基さんの展示も、開幕式に合わせてオープンしたようです!

Kulturhauptstadt 2024 on Instagram: "→ sudhaus KUNST MIT SALZ UND WASSER → Ausstellung / Exhibition 𐊾 „sudhaus“ ist die zentrale Kunstausstellung von #salzkammergut2024. Aufbau: @yamamotomotoi @mikiko_sato_gallery 𐊾 Mit internationaler und überregionaler Beteiligung renommierter Kunstschaffender wird ein höchst breites Themenspektrum präsentiert, das durch Dokumente aus der regionalen Geschichte eingeleitet wird. 𐊾 Mit unterschiedlichen Facetten und Zugängen werden die Themen Salz und Wasser in Form von Objekten, Skulpturen, Installationen, Film-, Foto- und Klangarbeiten präsentiert. 𑀩 Ort: Sudhaus Bad Ischl, Salinenplatz 1b, Bad Ischl 𑀩 Dauer: Jänner bis Oktober 2024 𑀩 Eröffnung: 20. Jänner 2024, 14.30 mit Anmeldung (Eintritt frei) 𑀩 Öffnungszeiten: Ab 21. Jänner 2024: 10.00 -18.00 Uhr 𑀩 Tickets: An der Tageskassa erhältlich → Alle Infos: Link in Bio 𑀩 Künstlerinnen: Hicham Berrada (Paris), Christine Biehler (Hanau), @‌marioneichmannart (Berlin), Caterina Gobbi(Courmayeur/Berlin), @‌norbertwhinterb (Berlin), @‌anouk_kruithof (Brüssel), @‌sigalit_landau (Tel Aviv), @‌radenkomilak (Banja Luka), Wolfgang Müllegger & Georg Holzmann(Obertraun), @‌lucyjorgeorta (Paris), @‌kati_roover(Helsinki), @‌michaelsailstorfer (Berlin), @‌eva_schlegel (Wien), Nicole Six & Paul Petritsch (Wien), Simon Starling (Glasgow/Copenhagen), @‌annaruntry (Reykjavik), @yamamotomotoi Motoi Yamamoto(Kanazawa), Wenting Zhu (Shanghai/NY) 𑀩 Kurator: Gottfried Hattinger 𑀩 Projektleiterin: Elfi Sonnberger → Herzlichen Dank an @salinen_austria → Mit Unterstützung von: Arbeiterkammer OÖ @‌ak_oberoesterreich → Find the english version in the comments below" 433 likes, 4 comments - salzkammergut.2024 on January 4, 2024 www.instagram.com

→ sudhaus KUNST MIT SALZ UND WASSER → Ausstellung / Exhibition 𐊾 „sudhaus“ ist die zentrale Kunstausstellung von...

Posted by Salzkammergut 2024 on Thursday, January 4, 2024

Bodø 2024 (ノルウェー、ボードー) - ARCTICulation

#Bodo2024

数年に一度、EU加盟国ではないものの、EEA所属であったり、EUの加盟候補国の都市が立候補できる制度があります。その制度で、北極圏初の欧州文化首都タイトルを勝ち取ったのはノルウェーのボードー。
実はロックフェスのメッカでもあるボードーは、軍専用飛行場だった施設を文化施設へと転換する計画とともに誘致提案書を作成していました(Bodø Municipality and Nordland County Government, “Bodø 2024 European Capital of Culture Candidate City.”)。
コロナ禍では、国際ダンスデーにあわせて市民が楽しめるダンスをダンサー
と共に展開。警察官や消防士、さらには文化・平等大臣までも含めたダンス動画は、会えないなかでも人々をつなぐ取り組みとなっていました。

渦潮のある街ということで南あわじ市と姉妹都市にもなったボードー。どんなプログラムが展開されるか楽しみです!

■選考基準と誘致活動■

欧州文化首都は、開催国は欧州委員会で決定されていきますが、その国でどの都市が開催都市になるかは立候補制。選考基準も公表されており、誘致提案書は公開されている質問項目(“Call for Applications Template, European Capital of Culture | Culture and Creativity.”)にしたがって記述されていきます。

アーティスティック面でも、コンセプト上も地元アーティスト・団体・市民・行政との協働が必要であるとされる一方で、ヨーロッパ性も大きな質問項目として問われている欧州文化首都の選考。
都市としてのユニークさを強調するだけでは欧州文化首都のタイトルを獲得する
ことはできないため、過去の開催都市はもちろん、立候補都市同士での連携、姉妹都市を通じた国際的な取り組みも欧州文化首都の取り組みにはいってきます。

開催都市が決定するのは、開催年の5年前。そして、選考にむけて立候補都市はその5年ほど前から準備とプレプログラムの実施をはじめます。

つまり、準備期間は開催年までにおよそ10年!!

こちらは昨年、2028年の欧州文化首都タイトルを勝ち取ったフランスのブールジュのFacebook投稿。歓喜の瞬間です。

🎉 Bourges, Capitale européenne de la Culture 2028 ! 🇪🇺 65 000 MERCIS ❤️ « Vous devez comprendre que ce qui se passe...

Posted by Bourges 2028 on Wednesday, December 13, 2023

2024年の間に、2029年にポーランドとスウェーデンで開催する都市が決定します。

今年の開催都市も、それぞれスタートはおよそ10年ほど前から。長い年月をかげて協働団体・アーティストらと関係を築き、準備されてきた欧州文化首都なので、ぜひ機会があれば開催都市(現在だけでなく、過去・未来の都市も)を訪れてみてください!!

■メモ■

欧州文化首都リスト

EcocNews.

https://www.ecocnews.com/

欧州文化首都マテーラ2019(イタリア)のメンバーが立ち上げた欧州文化首都情報を発信するメディアサイト。ジャーナリストの彼らだからできる取材記事で、当該年の欧州文化首都はもちろんのこと、タイトルイヤーに向けて準備プログラムを展開する都市や、レガシープログラムに取り組む都市の記事も盛りだくさんです。
英語ですが、ぜひ読んでみてください!

■レファレンス■

久しぶりにしっかり調べたから書きたくなってしまった笑 いまだにマニュアル解説noteの閲覧数が多いzoteroさんに活躍してもらいました。

“A Guide for Cities Preparing to Bid - European Capitals of Culture 2020 to 2033 | Culture and Creativity.” Accessed February 6, 2024. https://culture.ec.europa.eu/document/a-guide-for-cities-preparing-to-bid-european-capitals-of-culture-2020-to-2033.

Bodø Municipality, and Nordland County Government. “Bodø 2024 European Capital of Culture Candidate City,” n.d. https://bodo.kommune.no/les/ECC/.

“Call for Applications Template, European Capital of Culture | Culture and Creativity.” Accessed March 9, 2024. https://culture.ec.europa.eu/document/call-for-applications-template-european-capital-of-culture.

Calligaro, Oriane. “From ‘European cultural heritage’ to ‘cultural diversity’?The changing core values of European cultural policy.” Politique européenne 45, no. 3 (2014): 60–85. https://doi.org/10.3917/poeu.045.0060.

“Designated European Capitals of Culture | Culture and Creativity.” Accessed February 6, 2024. https://culture.ec.europa.eu/policies/culture-in-cities-and-regions/designated-capitals-of-culture.

“European Capitals of Culture | Culture and Creativity.” Accessed February 6, 2024. https://culture.ec.europa.eu/policies/culture-in-cities-and-regions/european-capitals-of-culture.

European Comission. “European Capitals of Culture 2020 to 2033 A Guide for Cities Preparing to Bid,” March 3, 2021. https://culture.ec.europa.eu/sites/default/files/capitals-culture-candidates-guide_en_vdec17.pdf.

“Salzkammergut 2024 Bidbook (Application Book).” Stadtgemeinde Bad Ischl c/o Büro Salzkammergut 2024, 2019. https://www.salzkammergut-2024.at/wp-content/uploads/2022/11/kulturhauptstadt-salzkammergut-bewerbungsbuch-englisch.pdf.

“Tartu 2024 Bid Book.” Tartu City Government Department of Culture, 2019. https://drive.google.com/file/d/1MhGFdsgqHtDdoosjSg4kmusQTIc1feh-/view.



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