詩156/ 世界地図
最初は真っ白で
希望に満ちていた
世界地図には
いつしか
手垢がつき
泥がつき
油がつき
灰がつき
火薬がつき
血がつき
混ざり合わない
くすんだ色で
埋め尽くされている
ならばいっそのこと
地図を
墨で染めて
すべての色を掻き消して
紙ごと真っ黒にしてしまおう
国境線も見えないように
肌の色も見えないように
紙幣の金額も見えないように
苦しみや憎しみに満ちた顔が
誰からも一切見えないように
世界を漆黒の夜に統一しよう
それから
ただの黒い紙になったその地図に
白い絵の具を
落として滲ませる
1滴目の白は
月の光
月が出ているならば
やがて再び夜明けが来るという
その希望を
夜の世界に灯す
さらに
2滴目
3滴目と
白を滲ませ続けて
朝ぼらけとともに
また新しく始まる世界に
改めて
好きなように
海岸線を描き
山を描き
街を描き
そこに立つ
僕の姿を描くのだ