詩159/ フレームイン フレームアウト

世界は
美しくもなく
醜くもない
優しくもなく
厳しくもない
ただ
土くれと
水と
空のある空間に
蜜を吸う虫
他者を食う虫
命を繋ぐため歌う虫
なきがらを土へ還す虫が
ただ
それぞれの居場所に
居るだけのこと
それ以上でも
それ以下でもない
貴方が
悲しみの中で
失ったと思っているものは
貴方の世界の
フレームから離れただけで
皆
それぞれ
自分の世界の
自分のいるべき場所にいる
そして
貴方のフレームの中で
空いた場所にはまた
風に乗って
川の流れに乗って
何かが流れ着いて
そのうち
そこに居着くだろう
だからもう
何も振り返るな
もう流れ去った
下流には目を遣らず
上流を窺い
やがて貴方の立つ川の畔に
流れ着く流木を掬い上げよう
その流木を
貴方のフレームの中に
美しく飾るといい
そうすれば
あなたの世界は
また美しさを取り戻す
ただそこに
在るだけの世界を
自分のフレームの中で
美しく彩れ
やがて
それが枯れて
去っていっても
また
そのフレームを
自分の世界を
美しく彩ることができるのは
自分だけ

ただ
それだけのことなのだ