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詩162/ 蒸気

僕らが居るのは
こんな表面温度が0度や50度の
生ぬるい世界だから
僕らは其々に与えられた
凝固点や融点や沸点に従って
固体や液体や気体に
忙しく変化しなくてはならなくて混じり合って一つになれないのだ恒星のように
常に何千何万度の世界になれば
否応なく僕らは皆
其々異なる沸点など遥か超えて
蒸気になってしまうことができる
そこには
体の概念も
心の概念も
死の概念もない
憎しみもない
悲しみもない
出会いも別れもない
ただ全てが
気体として混ざり合う世界
もちろんそこには
液体も無いから
涙も存在しない

そうだ
そうだよ

この涙も
瞳が決壊して
どこまでも溢れて止まらぬ涙も
その概念すら要らなくなるのだ
ねえ
行こうよ
この星を
皆で押しやって
太陽に近づけて
燃やしてしまおうよ
そして僕らは
蒸気になって
星を覆う大気の成分として
激しく渦巻きながら
一つになって
永遠に生きるのだ




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