![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/149204417/rectangle_large_type_2_733ec64c84f9ecac53d1712211eaab51.png?width=1200)
詩154/ AMラジオ.ノスタルジー
昔
ラジオは
丸いダイヤルのつまみを回して
周波数を合わせるものでした
私は
田舎に住んでいましたから
大手のラジオ局の放送ですら
ノイズ混じりに流れてくるので
流行りの歌や
軽快なお喋りを
つまみを動かして
細かく微調整しながら
耳を澄ませて
どうにかして
聞き取ろうとしたものでした
放送局ごとの
周波数の谷間では
ただただノイズが
吹き荒れているだけでしたが
つまみを回しながら
合わせたい局に辿り着くまでに
特に深夜なんかには
ノイズの嵐のずっと遠くで
本来聞こえるはずのない
遥か遠くの街や国の
局の電波を微かに感知し
人の声が聞こえる時がありました
そこには確かに人がいて
そこには確かに
人の営みがあることを
夜の海の遥か向こうに
感じ取ることができて
その遠い距離感が
眠れない心を鎮める夜風のようでとても心地よいものでした
今は
ラジオも
機械が勝手に選局できたり
どんな街の放送でも
インタアネットで
鮮明に聞けたりして
そこには
もう
ノイズの居場所はありません
あの日
私たちの心の靄を
時の流れの中に掻き消した
ノイズの嵐は
もうどこにも吹いていません
ノイズのない世界で
私たちは
どうやって苦しみを
掻き消してゆけるのでしょうか
どうやって
暗闇や物陰に気配を紛らせて
身を潜めてゆけるのでしょうか
僕達は
その答えを
データコードの音が脈を打つ
電脳の世界の中で
逃げ場所の無い程
距離が近付き過ぎた
双方向ネットワークで
追い追われ
傷つき傷つけられ
24時間
画面から照射される光に
目と心を乾かされ
居場所を炙り出されながら
すがるように
検索し続けている
そんな気がします
ーーーーーーーーーーーーー
ざーーーーーーーーーーーー
「君は」
ざーーーーーざーーーーーー
「未来の解決策ばっかりを」
ざーーざーーーーーーーーー
「あの日の残像ばっかりを」
ざーーーーーーーざーーーー
「いつも追いかけてるね
この部屋にいる
今の自分には目もくれずに」
ざーーーーざーーーーーーー
ざーーーーーーーーーーーー