
詩68/ 終電と始発の狭間
終電ギリギリまで仕事で
何とか終電に飛び乗れたのに
寝過ごして
終着駅まで行ってしまった
午前1時の駅前には
ホテルもネットカフェも無く
タクシーに乗るほど金もなく
どうしようも無いので
始発まで時間を潰すことにする
ひっそり
寝静まった
知らない街を歩く
自分の足音と
息だけが聞こえる
1時半
やっと一軒
コンビニを見つけた
その明るさと温かさに
心から安堵する
2時
牛丼屋もあった
最高だ
ちょうど腹も減ったとこだった
その時
その時々に
ぽつぽつと
居る人達
ジャージ姿の若者
お店帰りらしきお姉さん
遅番終わりのお兄さん
トラックの運転手さん
そして俺
みんな
電車さえも眠る時間に
何の重しにもならない
細かい心の破片を握り締めて
一呼吸おいてから
もう一度
夜露の下に戻るために
今ここに居るんよね
この先
出会うことも無いけど
お互い元気でいましょうかと
心のなかで声を掛ける
午前4時
もうすぐ夜が明ける
街道沿いを歩く
トラック達がもう走り始めている
俺は駅に戻る
始発電車も
もうホームに入線していた
帰ってゆっくり
昼まで寝たいところだが
今日は生憎
午前にも午後にも
業者さんとの打合わせがあるのだ
取り敢えず
予定がある分
定時までは耐えれるかな
キツめの缶コーヒーを買って
俺は
始発駅の始発電車に乗り込んだ
いつもと違って
座れて良いよ
朝の光は音もなく
藤色に街を染め始めていた