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近況(2024年9月12日)

どうも。Mago di Impastatoreのひろしです。ネタ明かしは後半に。

近況の前に今の心持ちを少し。

故あって山を降りて1日Udineで過ごした。Citta Fieraというショッピングモールで数時間かけてエプロンを探して、モール街で新しい靴を探した。イタリアに2年もいてまともなエプロン一つ持っていないという事実に自分で驚く。靴は去年Cogneで買ったのがボロボロ。Gore-texのはずなのにびしょびしょ。自分でもびっくりしたのだけれど、大きなお店に行くと本当に落ち着かなくて、驚くほど疲れる。それが山に戻ってきた途端、すごく落ち着く気持ちになる。「家」に帰ってきた、というのもあるだろうけれど自分のいるべき場所を知った、というのもあるかもしれない。

パンのこと

あれから2週間経ち(当時)、パン酵母が完成した、と思う。

3周目を超えるとライ麦だけでなくTipo 2の小麦粉をハーフで加える。ところが最初は思ったより発酵しなくて。どうやら酵母に加える小麦粉を変更する時は徐々に変えないといけないらしく。10gずつ、20gずつ微調整した。1週間もするとライ麦とTipo 2のハーフでもしっかり発酵するようになる。Tipo 2を使うようになると発酵速度も変わる。ライ麦は酵母が増えやすく、Tipo 2、いわゆるGrano Teneroの小麦は発酵の時間が短い、という印象。
その後もTipo 2の量をちょっとずつ増やし、ライ麦の量を減らしていくとTipo 2だけでも発酵するようになった。

左が僕のパン酵母。右がドリスからもらったパン酵母。左はTipo 2、右は砂糖とセモリナ粉で育てている。僕は水と小麦粉だけでパン酵母を育てたけれど砂糖などの甘味で育てるのも主流の方法らしい。
Mantovana。タンパク質の含有量が多いTipo 0, Tipo 1の小麦粉で作るパン。実家で食べていたパンはこの形が多くてすごく懐かしい。
ライ麦パン。日本でパン屋巡りをしていた時はこの手の重めのパンを好んで買っていたのだけれど自分がこの種のパンを作っているという事実に衝撃を覚えている。ここにナッツや乾燥フルーツを入れたらあの大好きな味になるんだと想像するだけでワクワクする。

レシピは本にあるものをひたすら試している。

パン酵母はできるまでに1ヶ月かかるのだけれど、1ヶ月を待たずにパンを作り始めていたから初めは全然上手く発酵しなくて。上手くいかないパンも何個もあった。中でもバゲットは2種類作ったけれどいずれも上手く膨らまない。味は確かにバゲットで、気泡もしっかりあるのだけど縦方向に立ち上がらない。本のレシピ通りに作るとどうしても水分量が多めで、パン生地が水平方向に広がってしまうのが敗因だと思われる。「夏場だし小麦粉が既に湿度を帯びているはずだから水分量は少なめにしよう」と勝手にレシピを微調整して水を加える量を減らしたら上手く膨らまない失敗もたくさんした。ここら辺は今後の課題。

他にも失敗はたくさんしている。

パン生地爆発事件。パン酵母が完成するまではあまり膨らんでいなかったからパン生地を覆う時にはいつもサランラップを利用していた。膨らみが少ない時はこれでいい。だが膨らみが大きい時はパン生地が容器を飛び出しサランラップに触れてしまう。するとサランラップを剥がす時にパン生地が破れてしまう。せっかく上手く発酵したのに。
この失敗を機に2次発酵の時はパン生地の上に粉をまぶして布巾で覆うようにした。

Baguette integraleの失敗作。どうしたら縦に膨らませられるのか考えていたけれど最近パンの本から着想を得た。
これはパン型に入れていたパン生地が発酵しすぎて覆っていたサランラップに到達し無理やり剥がして残念な形のまま焼いたパン。味は美味しい。見た目が残念。
これはパン酵母を育てている途中でカビてしまった失敗例。「温かいところに保たなきゃ」と固定観念でパスタを茹でている場所のすぐ上に置いていたらカビてしまった。「そりゃ湿度も温度もカビ好みだよね」っていう失敗例。人生はこのような失敗に満ちているので胸を張って失敗を語っていくのは大事。

chi viene e chi va

Wwoof 3人と一緒にハイキング

ローマから、イスラエルから、ドイツから、スイスから、メキシコから。いろんな人が訪れる。

ローマから来たEnricoは中部の訛りが強くてリスニングに少し苦労した。僕の耳は北部に最適化されている。この写真はオーブンを自作するために粘土を探しに行った時のもの。Enricoは僕のパンを美味しく食べてくれたのだが「Leggero(軽い)」と言っていたのが少し印象的。胃に優しいという意味の軽いというニュアンスなら汲み取れるけれど、個人的には自家製酵母を使っていない、全粒粉を使っていないパンなどが軽く映る。
みんなで干草運び。機械で刈り取って、まとめて、それを人力で集めて、荷台に詰め込み、運ぶ。なかなかの重労働。
イスラエル人のカップルが来た。イスラエルで小さなお店をやっている。
初めてきた場所で野草を摘んで料理する様はみていてなかなか面白かった。ニョッキは2人で作りました。
日課の仔羊への牛乳やり。Wwoofの誰かがいるときは任せて、人がいないときは僕が行く。先日久しぶりに行ったら子羊がとても大きくなっていてびっくりした。
羊の生態を観察するのは楽しい。猛暑を避けるためか、羊は草原の穴に埋まっていたりする。
Wwoofのみんなと山を登った。Musiの危険さに比べればどこの山も楽勝。最近は山を登る時に大地を感じながら歩くようにしていて。大地の声を聴きながら最も負担の少ない登り方を研究している。初めて登る山を日本人が先導しているという事実がじわじわ。
暇すぎて始めた生パスタ作り。日本でもオレキエッテは作っていたけれど一通りの作り方しか知らなかった。今はセモリナ粉を入れてみたり、分量を変えたり、パスタの飾り付けを練習したり。
みんなで作ると早い。
グラッシエーラの誕生日にWwoofのみんながホットケーキとプレゼントを用意した。
スイス出身、去年もLA ALEGRAに訪れたラリッサと一緒に山に野生ブルーベリーを探しに行った。今年は猛暑だったので実は一つたりとも見つけられなかった。悲しみ。
道中の家。
雨が降らないから雨水を利用して水を確保する仕組みが残っていた。面白い。
山なんで、最近は髪を伸ばしています。最近結べるようになったので暑い時も安心。
繁忙期の8月を過ぎた頃にスロヴェニアにイカのフリットを食べに行った。美味しかったけれど、なんやかやでグリルに胸キュン。出身地の関係上、海の幸は昔から大好きだけれど自分は結局海の塩が好きなんだ、と確信した。海から離れては生きられない。太古のDNAを感じる。

繁忙期が近くなった頃、食品衛生の観点からキッチン兼オフィスに僕の私物が置けなくなった。が、専用の棚や引き出しをもらった。私物は散らかさなくなったがパンやヨーグルトの発酵やGinger Beerの製造などでいつも僕関連のものは散らばっている。

キッチン兼オフィスの整備のついでに作業机が生まれ、僕はWi-Fiを整えた。Wi-Fiが2台あるのにカバー範囲が一緒でインターネットが使えない範囲が生まれるという意味不な状態だったからLANケーブルを伸ばして問題を解消した。電波が干渉する状況はまだ改善されていないのでいずれ解決したい。イタリアではこの手のお困り相談の解決をよくやっている。

近況諸々

僕の寝床、蜂のお家。ここの屋根裏部屋で寝ている。窓の立て付けがしっかりしていないから偶に空いてしまい、寒すぎたり暑すぎたりと気温の調整が難しい。
上は真っ暗。先日、なぜかスマホの電池が切れてしまって10時過ぎまで爆睡してしまった。

日本を離れてそろそろ2年が経つ。

「何かのきっかけになるかな」とエヴァンゲリヲンの手拭いを日本から持ってきて重用していたのだが、この頃破れ始めた。衣服というのは破れ始めるとすぐにダメになる。ちょっとの破れが広がっていき、とんでもない大きさになる。日本で愛用していたジーンズすべてのポケットがダメになり、片膝に大きな穴が空いた。
日本から持ってきたものが壊れると、自分の中の日本が少しずつ溶けていくような、不思議な気持ちになる。

8月。ハチミツの収穫。
ニンニク
長ネギ
ピーマン
キャベツ。ザワークラフトになる。
トマト
ビーツ
cavolo nero
Udineで自転車のタイヤをフレームに接着する糊を探してUdine内のほとんどの自転車屋を巡った。「入った店で買う」という行為が僕は苦手で、基本的にすべての店を見回ってから購入する。下見を欠かさない。このときは特に下見が必要だったわけではなかったのだがどこにも置いていなかった。最後に寄った自転車修理専門のお店でおじちゃんが分けてくれた糊。イタリアではいつもこんな調子で生きている。
Pradielisの町には女性の画家がいて、こうした絵をあちらこちらで見る。町が絵で彩られているというのはとても面白い。
庭園のお掃除を手伝っていたらすぐ隣でトウモロコシの収穫が始まった。
トラックに乗せてくれて、初めて機械収穫を間近で見た。想像したこともなかったけれどハイテク。
山から降りてくる度に畑の景色が変わっているのが面白い。庭仕事の手伝いに来るときたまたまトウモロコシ畑を見ていて。「収穫が終わったら真っ平らになるんだよ」と聞かされていた。今ならそれが肌でわかる。機械で切って、皮を剥いて、実だけ集めて、出涸らしは捨てる。こんな仕組みだったんだ。
猫たちはたまに蛇を捕まえてきては家の玄関に放置する。
ウサギを捌くところを初めて見た。後学として知っておきたかったけれど屠殺するところを見るのは心にくる。お肉は営業用に調理し、内臓は僕が美味しくいただきました。Agriturismoで買っているウサギはレバーが美味しかったけれど、買ってきたウサギ肉は肺の方が美味しかった。どちらもフリットにした。
お肉はローズマリー、セージ、玉ねぎ、白ワインでマリネして、その後は鍋で火を通す。シンプルだけどとても美味しい。
8月に買ってきたGravner。家族のほとんどがお酒を飲まないから僕かゲストがちびちび飲んでいたのだけれど大掃除の際にグラッシエーラが残りごと捨ててしまった。高いのに。ネットでよく見る大事にしていたプラモデルが捨てられた夫の気持ちを理解した。悲しい。
靴は日本にいた時からニューバランスを愛用している。昨年8月に買った靴が今はもうボロボロ。Gore-texのはずなのに靴下が濡れる。新モデルを見つけて色も気に入ったのだけれど足に合うサイズがない。EU39 - UK6 - US8が僕のサイズ。左足が24.5, 右足が25.0。
ロバ・羊脱走事件(09・11)
ロバたちが脱走して家族総出で探しに行った。幸運にも路上でロバを見つけて僕が誘導して無事囲い直すことができた。

繁忙期の8月を除いて、7月・9月はよくお店を手伝っていた。レシピはほぼ覚えたのでアレッサンドロがいない時は僕が料理を作っている。完全にセカンドシェフ。イタリアンパセリやセージは必要になったら畑に取りに行く。新鮮なハーブを使うのは楽しい。

春は暖房としての暖炉をよく温めていたが、夏場はシャワー用および洗い物用にボイラーを薪で温める。温めた水の温度はモニタリングできるのだが、意外にボイラーの温度管理がちゃんとされていなくて驚くこともしばしば。薪が適切に足されずに消えていたり、足されすぎて水が過剰に温められていたり。僕はピエモンテの山小屋で薪の足し方、火の起こし方を学んだけれど意外とみんなが持っているスキルではないんだなと感じている。

Friulano、フリウリ語を地道に学んでいる。いろんな物事の合間を縫って学んでいるので全然習得できていない。長女のソフィアは日本で日本語を学んでいたのでイタリア語でわからないニュアンスがある時に質問して理解を深めている。最近はドラマから会話表現を覚えたり。語学学習のステップが一つ上がって楽しい。

Ginger Beerのこと

発酵についてはこちらでまとめた。

Ginger bug / Ginger Beer を作り続ける生活が2ヶ月ほど続いている。

家族に大好評。職場に持っていっても大好評。「次はいつ持ってくるの?」とせがまれる。昨日Udineで一泊する際にドリスの家に泊まったらいつの間にかドリスの夫、太陽光発電のタイルを整備しに来た若者にもシェアされていて大好評。日にボトルが4本開くこともある。誰に飲ませても気に入られるベストセラー。

元の酵母の生成には5日かかる。Ginger Beerを作るのにはさらに3日かかる。週に2回仕込んで、その間も酵母の調子や泡の具合を観察したり、3日目はボトリングしたりで毎日つきっきり。レシピはもう完全に覚えてしまった。

手順にも慣れてきたから遊びも取り入れていて。ミントのシロップの出涸らしを利用してGinger Beer x Mentaを作ってみたり(まあまあ)、水を使わずに白樺の樹液やジュニパーベリーのお茶でGinger Beerを作ってみたり(美味しい)、ニワトコの実やビーツで田舎ワインを試してみたり。

白樺の樹液やビーツを使うと発酵の速度がぐんと上がる。アルコール度数も上がりがちですぐにお酒や酢になってしまう。Ginger Beerは3日経って炭酸が適度な状態になったら冷蔵庫に入れるのだけれど、ビーツは3日経って冷蔵庫で冷やした後に開けても溢れ出てしまうほど発酵する。冷蔵庫に入れていてもまだ発酵してしまう。「お酒づくり」ってこんななんだ、という新鮮な気づき。何気なく買ったSLOW DRINKという本が本当に面白い。オライリーの発酵の技法に予め目を通していて本当によかった。ちな昨夜はノーマの発酵ガイドという本を買いました。人生に楽しみが尽きない。

そんな発酵ドリンクを作り続けてある気づきを得た。ナチュラルワインが好きな理由、ヨーグルトが好きな理由、そして料理への向き合い方。今あるものにどうしても満足できない飢餓感。それらすべての理由が発酵や酵母にあるんじゃないか、という仮説。

sambuco、エルダーフラワー、ニワトコ。春は白い花が咲き、秋には味がなる。味が濃くて渋い。甘さは控えめ。
左がサンブーコ、右がビーツのkvas

語学学校のこと

僕がイタリアに来たのは9月末なのでそろそろ更新の手続きをしなければならない。

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不定期連載。実験的に始めます。買い切り。

イタリア滞在期(2022.10~)を連載中です。イタリア料理、ナチュラルワイン、日々のこと。エッセィ。

Grazie per leggere. Ci vediamo. 読んでくれてありがとう。また会おう!