CEC TOKYO イベントレポート #3
2020/01/22に東京・渋谷のヒカリエホールでRepro社主催により開催されたCustomer Engagement Conference Tokyoのレポートの3回目だ。noteの記事を書きながら、あらためてセッションを振り返ることでの気付きもあって楽しいのだけれど、今回で書き切りたい。#1と#2のレポートはこちらから。
A-3.顧客の"愛着度"を深化させるブランドコミュニケーション戦略
● ファシリ Comexposium Japan 株式会社 President and CEO 古市 優子氏
● パネル DJ / PRODUCER DAISHI DANCE氏
● パネル ゴディバ ジャパン株式会社 Chief Digital Officer 兼 マーケティングコミュニケーション & デジタル / ITトランスフォーメーション統括本部長 宮野 淳子氏
● パネル 株式会社IDOM デジタルマーケティングセクション 中澤 伸也氏
DJとマーケターが同席するパネルセッションってカオス! 「顧客の愛着度を深化させる」というテーマだからできるの? とやや「???」な感じで拝聴していたのだが、途中DAISHI DANCE氏はDJとして活躍する前にブライダル関連企業でサラリーマン経験を持っていると明かされて「なるほど!」。ジブリ映画楽曲をフィーチャーしたサウンド作りの話からK-popアイドルBIGBANGへの楽曲提供などの裏話を伺うにつれ、真面目なマーケターとしての側面と「バイブス」をつくりあげるクリエーターの側面のバランス感こそががDAISHI DANCE氏個人のブランドコミュニケーションの要諦で、それが卓越しているから国を跨いだ人気DJとして活躍しているのだとハラオチした。(開場から開演までの間にDAISHI氏のDJプレイあったのだが体験できなくて残念。SOUNDCLOUD リンクを貼っておく↓)
ゴディバジャパン 宮野氏
指標とミッション
「ブランドがうまく回っているかを計測する指標は、
(特別なものを使っていると期待されているかもしれないが)売上。
トップシャアのブランドなので市場の拡大もミッションに掲げている。
日本のバレンタインデーの市場がここ数年、縮小している。
バレンタインデー市場の活性化の仕掛けもしている」
バレンタインデー活性化+48周年キャンペーン
「百貨店は地元密着であること、沢山の人が来ることを求めている。
AKB48/ NMB48/ HKT48のグループと組んだのはこうした流れ。
ブランドが顧客を選ぶのではなく、顧客に選ばれるためになにをするか。」
DAISHI DANCE氏
ブランドをどう作るのか?
「ハコでのDJはトレンドが目まぐるしく変わる世界。
一度トラックを自分なりにマッシュアップしてかけるのが最近の流れ。
ただしカラーを出すブランド作りだけではだめ。
今は様々なアーティストと新しいチャネル作りをしている」
ブランドと顧客の接点について
「いまや有名アーティストもSNSで個別レスするのが当たり前に。
音楽サブスクリプションの時代になって、万人ウケよりもコア層に響く活動に
フォーカスするようになってきた」
IDOM 中澤氏
期待を超える体験の提供
「中古車のガリバーの期待値を超える体験設計、と、即査定のアプリを作った。
これまでにないタイムレスでの査定体験」
A-4. 熱狂的なファンはどのように生まれ、育つのか
● アクティブ合同会社 CEO 藤原 尚也氏
● 埼玉西武ライオンズ 二軍監督 松井 稼頭央氏
● デル株式会社 コンシューマー&ビジネスマーケティング統括本部 部長 横塚 知子氏
● 株式会社サンリオ マーケティング本部 ダイレクトコミュニケーション統括部 チーフデジタルオフィサー 田口 歩氏
DJの次は、なんと、元メジャーリーガーのご登場! 西武ライオンズ松井稼頭央二軍監督! 本当、Reproさんいろいろぶっこんで来るな、という意味でも、セッションの中の話題からもとても感動したのがこのセッション。
松井氏が小学生時代に清原・桑田コンビを間近に観てPL学園野球部を目指したという話では「何かのファンになるって、究極、人の人生を左右する出来事なんだな」とゾクゾクしたり、「顧客エンゲージメントを向上する」という言葉は経営者や担当者に閉じて聞こえるけれど、「ファンとの対話を大切にする」は、チームに属する誰にもしっくりくる(ファンにもしっくり来る)と気付いたり。
松井氏
ファンとの近さ
「9歳の時、PLの清原・桑田を見た衝撃体験からPLの野球選手を目指した」
「楽天時代、ファン感謝の松井稼頭央デーでは焼きそばを作って振る舞った。
ファンとの近さは大切」
「米国の球場は選手とファンとの距離が近い。その近さに驚いた。
今度ライオンズ二軍球場ができる。
今まで観覧席さえなかったが、より近くで観覧いただける」
DELL 横塚氏
アンバサダープログラムについて
「アンバサダープログラムを始めた頃、あのDELLがなぜ? と言われた。
様々な分析の答えは、短期的な投資だけでなく中長期的な投資が必要と決めた。
・マス広告の再開
・アンバサダープログラム実施
何がいいことあるのか、効果をどう証明する?と考えてた。」
「TVでリーチすれば?と考えていたが、リーチは単なる数ではない。
そこに重さもある。その関係性を築く仕組みをどう作っていくかが大切。
3年経ったいまアンバサダーは現在11,800人。」
マス対話とアンバサダー対話
「これまでの施策は数字と短期的投資対効果に向きすぎた。
アンバサダープログラム導入と同時に中長期的な視点から
ブランドヘルススコア(市場調査)を軸に様々な分析を実施して、
どうしたら温まるかを検証。
フェイストゥフェイスでブランド物語を伝えている。
帰る時の満足度は99%以上」
「アンバサダー50人に対して社員はマーケ部以外の方々30名。
喜んで金曜日夜に参加する。
すぐに成果は出ないので、仕組みつくり・チーム作りが大変だし、大切。
最初は心折れる気持ちになった。
企業がファンと向き合うためには社員の共感が絶対に必要」
サンリオ 田口氏
ファンが生まれる瞬間
「わたし自身、9歳の時にドラゴンズのジャイアンツ10連覇阻止の
星野投手に痺れてドラゴンズファンに。
ピューロランドでキティにハグされた経験がきっかけ、
という声をは多く聞く。
囲まれて育つだけでなく、衝撃的な体験がキッカケになる」
ファン対話の取り組みがピューロランドを生んだ
「1975年からいちご新聞パーティというイベントを開催してきた。
その後サンリオ社員全員が百貨店に繰り出す「サンリオフェスティバル」開催。
ピーク時は年間10万人を動員した。
90年にピューロランドが作られたのはその流れから。
現在デジタルへの対応という点ではリアルイベントの補完として、
投票やオンラインライブ中継を実施している」
ひとりのアンバサダーの影響力
「ひとりのアンバサダーは、ピューロランド行く時は何人もの人を連れてくる。
行ってみたら楽しい、と広がってゆく。
体験を伴うアンバサダーは熱狂度が違う」
→これに対しては松井氏も「球場も同じ」と相槌。
→ファシリの藤原氏が「ファンがファンを作ることの熱狂ある」と相槌
"中の人"イベントの人気とファンとの共創
「キャラとの交流会だけでなく、キャラデザイナーのサイン会が盛況。
トータル年間300回以上のイベントを開催している。
お客様の生の声を聞くということがヒットを作るきっかけにもなる。
お客さんと一緒に人気キャラクターをつくってゆく」
このセッションのメモは読み返してもゾクゾクする気持ちになる。
デジタルツールを使ったユーザーの行動ロギングやユーザー対話はどんどん進化している。実装されればすぐに効果が出るしROI算定も容易だ。
一方で顔と顔を合わせてファンと対話するスキルやノウハウを得るには横塚氏のような「心折れる体験」を通過しなくてはならないし、従来は効果や効能の算出が難しかった。しかし顧客中心の企業文化創造、ファンによるファンの開拓など、中長期的に得られる利得は相当なもの。そしていまこそその測定が必要だと感じた。
ファンとの対話については二の足を踏んでいる企業は多いと思う。
「リーチを広げるのは安価にできる。けどブランドにロイヤリティを持っていただくためにはそれで弱い。けど深く、重く行こうとすると、リーチが小さく予算がかかる。誰か答えがあれば教えていただきたい」というTweetへの反応があって、それに返信したのだけれど、こういう悩みは多い。
顧客アンバサダープログラムの立ち上げからイベント運営・ROIの計測までをサポートするようなサービスを立ち上げたらニーズはあるのだろうか?(立ち上げから何回かまではサポートを実施、ある程度回数をこなしたところで自律運営できるようにするプログラム) サービス企画、ぜひ前向きに考えたいと感じた。
A-5.Wrap up
~次の時代を彩る“Customer Engagement”~
このセッションは「内容はオフレコで」とのことだったので割愛。
After All...
ほんとうに素晴らしいイベントだった。
主催のReporoの皆さん、準備に奔走された関係者のみなさん、かなりギリギリのことまでお話してくれた登壇者の皆さん、また、スポンサー企業のみなさんにも感謝申し上げたい。
顧客エンゲージメントはマーケティングの話であると同時に、従業員エンゲージメントを作る。ひいては企業が社会に喜びや信頼を生み、生きやすさ・心理的安全性を提供する取り組みだ。弊社はCXやEXのコンサルティングを仕事にしているが、もっともっとその輪を広げてゆきたい、と感じさせてくれた。
イベントからの総括については、もう一回記事を書く予定。