JOG(1376) 文化マルクス主義から社会を守る
人種、女性、LGBT問題などで社会の分断・対立を煽る文化マルクス主義は、我が国の歴史伝統で克服できる。
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■1.LGBT差別も起こっていないのに、、、
弊誌1364号では、アメリカでのベストセラー『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』
の日本での翻訳出版に関して、抗議集会を開いたり、脅迫したりという言論弾圧行為が行われたことを紹介しました。[JOG(1364)]
その実態がよく分かる日本での事例が、福田ますみ著『ポリコレの正体 「多様性尊重」「言葉狩り」の先にあるものは』に紹介されていました。
令和2(2020)年9月18日、埼玉県の春日部市議会は、LGBTの支援団体が、パートナーシップ制度の導入と性自認・性的指向の差別禁止を求めて提出した請願を採択しました。その時、ただ1人、採択に反対したのが、無所属の井上英治市議でした。
井上市議は、この採択の数日前に行った一般質問で、市教育委員会へのLGBT関連相談が過去5年間ゼロだったとする市の答弁を踏まえ、18日の本会議では「請願は市内には実際に存在しない差別があると言っている」と反対しました。
採択から30日以上経った10月21日、突然、共同通信記者が井上市議の自宅を訪れ、市議会でのLGBTを巡る発言を問いただしました。井上市議は「翌日改めて市役所で記者の取材に応じる」と対応しましたが、その記者は翌日はノックもなくいきなり控え室に入り、断りもなく井上市議の写真を撮り始めました。
怒った井上市議が抗議すると、後日、共同通信支局長が謝罪しましたが、市議の発言がLGBT差別であるかのような記事が、全国に配信されてしましました。
■2.「議会は自由に賛否を述べる場だ」
これがもとで、テレビ・新聞の取材依頼が殺到し、当事者支援団体「レインボーさいたまの会」が、「周囲との関係に悩む多くの当事者を、さらに攻撃し自己肯定感を傷つけるものだ」として、謝罪と発言の撤回を要求しました。
井上市議は11月11日に、弁護士立ち会いのもと、合同記者会見を開きました。席上、井上市議は、「差別感や偏見は持っていない」と述べた。また、「私を批判するのは自由だが、言論の自由を認めるべきだ。議会は反社会的でない意見ならば自由に賛否を述べる場だ。謝罪の必要はないし、発言の撤回もしない」と語りました。
この様子をテレビや新聞が批判的に報道すると、井上市議のもとに、抗議の電話やメール、ファックスが殺到しました。「家族もろとも殺してやる」という脅迫電話、「謝罪した方が身のためですよ」という脅しめいたメール、用紙いっぱいに特大の文字で「井上英治辞職しろ」と印字されたファックス、、、。
「レインボーさいたまの会」は井上市議に、公の場での謝罪を求める署名活動を開始。インターネットの署名サイトで賛同者を募ったところ、1025人分の署名が集まったとして、翌年4月にこの署名簿を市議会に提出しました。
ところがこれを井上市議が確認したところ、町名や地番、電話番号、押印がないものや、一見してあり得ない住所を書いているものがあり、とても署名とは言えない代物でした。それでも朝日新聞は、1025人もが井上市議への謝罪要求に賛同したと報じました。
「議会は反社会的でない意見ならば自由に賛否を述べる場」という井上市議の主張こそ正論です。「請願に反対したから、謝罪を求める」という論理は、「言論の自由」を否定し、議会制民主主義を破壊する行為です。本来なら、「言論の自由」を守るべき新聞やテレビが言論弾圧に加担しているのです。
■3.県全体の相談件数LGBT4~5件、児童虐待1万5~7千件
この「当事者支援団体」は「周囲との関係に悩む多くの当事者」と言いながら、誰がどれだけ悩んでいるのか、全く事実を示しません。井上市議は議会での一般質問でも「市内でも学校でも法務局でも医療センターでも差別事案は起きていない」と指摘しています。
県レベルで見ても、さいたま法務局管内のLGBT関連の人権相談件数は、県人口734万人で平成30(2018)年で5件、令和元(2019)年で4件でした。井上市議は「圧倒的多数の市民は、児童虐待や難病支援、防災対策、医療、介護の充実など、他に優先的にやるべきことがあると思っているんじゃないでしょうか」と言う。
たとえば同時期の県全体の児童虐待に関する相談対応件数は1万5千~7千件に達しています。県民の幸福を考えるなら、行政も議会もどちらを優先すべきか明らかでしょう。
そもそも、真の「当事者」たちは、こういう騒ぎを望んでいるのでしょうか? 令和5(2023)年にLGBT団体法案が国会で審議された時には、LGBT当事者4団体が拙速な法案審議を避けるよう求める共同要請書を岸田首相に出しました。
記者会見では「性別不合当事者の会」の森永弥沙氏は、「(立法の)理由はない。女性として普通に働いている」と述べ、同会の美山みどり氏も「医療機関や金融機関、行政などで一切差別を感じたことはない。本当の(LGBT)当事者の声を聞いてほしい」と訴えました。[産経、R030405]
■4.「活動家が普通のLGBTから嫌われるわけ」
前述の『ポリコレの正体』では、当事者たちからの、もっと生々しい声がいくつも紹介されています。
「活動家さんたちは、口を開けば『LGBTは生きづらい』という。でも私たちは、毎日普通に楽しく暮らしてますよ」
「〝反差別チンピラ〟が加わることによって、LGBT運動は露骨な政権叩きに利用されてしまった。活動家が普通のLGBTから嫌われるわけですよ」
「活動家さんたちの最大の問題点は、当事者の意見を一切聞こうとしないこと。うちの相方はいろんな活動家さんのツィートに、『同性愛者に対する差別とは何か?』と質問しまくっていますが、誰も答えてくれない。それどころか、彼らの主張に反論するとすぐ逆ギレしてブロックする。対話ができない」
「みな独り者で子供もいないから経済的にも余裕がある。毎週末、ホームパーティやバーベキューをやったり生活を楽しんでいる。僕は生まれ変わってもゲイになりたいですね」
「私はLGBTの運動なんて関わりたくない。権利を声高に主張するのは大嫌い。こういうことは秘め事でいいのよ。私が弱者? バカ言うんじゃないわよ。お店(伊勢注: ゲイバー)も繁盛して世界中を旅行してまわって楽しかったわよ。私はこの日本国に生まれて幸せだった。差別されたことなんかありません」
「活動家さん」たちの「反差別」活動で、一番、迷惑を受けているのは、LGBTの当事者たちのようです。
■5.「文化マルクス主義」が狙う「革命前夜」
「活動家さん」たちの狙いは何なのでしょうか?
マルクス主義は「搾取・抑圧された労働者階級」の「資本家階級」への憎悪を燃え上がらせ、階級闘争によって社会を転覆させ、革命をもたらそうとしました。しかし、ほとんどの国では労働者階級も経済成長の恩恵を受け、階級闘争は不発に終わりました。
そこで出てきたのが、ドイツのフランクフルト大学を中心としてユダヤ人の哲学者や歴史学者からなるグループでした。彼らはナチスに追われて、多くが米国に亡命しました。当時の米国は世界一豊かな国でしたが、国内は人種対立、女性差別などの火種を抱えていました。
そこで彼らは米国社会のモラルの源泉であるキリスト教を攻撃し、人種問題、女性差別問題に火をつけて、米国社会を分断・混乱させ、革命前夜の状況を作り出そうとしたのです。
キリスト教に対しては、たとえば学校での祈りは政教分離に違反するとして裁判を起こし、禁止させてしまいました。公共の場に十字架があると、いちいち文句をつけて、撤去させます。さらに「メリークリスマス!」も排除して、今では「ハッピー・ホリデイズ!」と言わなければなりません。
同様に、女性差別も厳しく糾弾されました。2021年からは、米議会で「父」や「母」「兄弟」「姉妹」、彼(he)、彼女(she)など、性別を含んだ言葉の使用は許されなくなりました。トイレを男女共用にしよう、などというのも、この一環です。
■6.「ブラック・ライブス・マター(黒人の命も大事だ)」が黒人の命を奪っている
文化マルクス主義者たちが、アメリカでの最大のターゲットとしたのが、黒人差別問題です。その中心となった団体が、「ブラック・ライブス・マター(黒人の命も大事だ)」(以下、BLMと略)です。BLMが一躍、有名になったのは、2020年、コロナ禍の最中で起きたジョージ・フロイド事件でした。
フロイドが偽札を使った疑いで、警察官が尋問しようとした処、激しく抵抗したので、地面にうつぶせに倒し、その首の部分を9分ほど膝で強く押さえつけました。フロイドは苦悶の表情で、「息ができない。助けてくれ」と何度も懇願したが、警官はそのまま首を圧迫し続け、フロイドはそのまま息絶えてしまいました。その様子が動画で全米に流され、大きなショックを与えました。
その翌日、現場となったミネソタ州ミネアポリスで大規模なデモが行われ、翌々日には群衆が暴徒化して、警察署の焼き討ち、店舗の略奪、投石、略奪、駐車している車への放火が始まりました。そして、その暴動は瞬く間に全米の大都市に広がりました。「ブラック・ライブス・マター(黒人の命は大事だ)」というスローガンとともに。
BLMの暴動により、25名の警官が死亡し、2000名の警官が負傷しました。総被害額は2000億円に上ります。その中には黒人所有の商店も多数、含まれています。しかし、BLMは自らを批判する声をすべて「黒人への差別だ」と吊るし上げ、そうした人々を駆逐します。結局、政治家も市民もBLMを批判できなくしてしまったのです。
BLMは「警察は黒人弾圧のための暴力組織」と主張し、各地で警察が段階的に縮小されていきました。警察官も犯罪発生の緊急無線が入っても、すぐには現場に駆けつけなくなりました。そのため、各地で犯罪が急増しています。たとえば、オレゴン州ポートランドは殺人が60%増、ワシントン州シアトルでは41%増です。
犯罪が多発する地域は、主に黒人が多く住んでおり、犯罪に巻き込まれて殺害される黒人の90%以上は、黒人によって殺されています。結局、BLMによる暴動や警察縮小で、被害を受けているのは黒人なのです。BLMの目的は、黒人の生命を大事にすることではなく、単に社会的混乱を激増させて、革命前夜の状況を作り出すことを狙っているのです。
アメリカは建国以来、人種差別問題で苦しみ、その解消のために様々な努力を続けてきました。現在の米国の黒人は約45百万人でそれを一つの国と見れば、国内総生産(GDP)は世界第18位で、ポーランドなどよりも大きいのです。その歴史を一切無視して、黒人の貧困層の命と財産を犠牲にしているのが、BLMの活動です。
日本の「LGBT活動家」が、「LBGT当事者」の迷惑も顧みずに差別反対を煽るのは、同じ文化マルクス主義のアプローチです。
■7.文化マルクス主義者たちによる社会の分断を防ぐには
「LGBT活動家」が、議会での言論の自由を踏みにじって、自分たちの請願に反対する議員に「謝罪した方が身のためですよ」などと脅迫まで行うことが横行すれば、議会での自由な議論はできなくなり、公正な多数決も選挙も期待できなくなります。
そこに訪れるのは、国民の分断と闘争の社会です。現在のアメリカの共和党と民主党の争いは、すでにその次元に足を踏みこみつつあるように見えます。『アメリカは内戦に向かうのか』という本まで出版される事態となっています。
そして、自由民主主義陣営のリーダーであるアメリカが内戦で混乱すれば、ほくそ笑むのは中国、ロシア、北朝鮮などの全体主義陣営です。それこそ文化マルクス主義者たちの最終目的でしょう。
我が国を文化マルクス主義から守るには、二つの戦術が必要です。第一に、ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス、政治的妥当性)を楯とした言論弾圧を許さないこと。春日部市議会での井上市議の真っ当な議論を「差別」だとして謝罪・取り消しを求めるような言論弾圧を許してはなりません。あくまでも自由な議論を通じて、物事を平和的に決めていこうとするのが議会制民主主義の根幹です。
第二は、もともと差別の少ない我が国の国柄をよく知り、それを守っていくことです。文化マルクス主義は欧米社会の階級差別、女性差別、同性愛差別などの問題点を煽りたてることによって、ポリコレを武器に、社会の分断と転覆を謀ってきました。
我が国には、こうした差別はもともと少ないのです。それはすべての人間は等しく「神の分け命」という生命観があり、そのうえにすべての人間を「大御宝(おおみたから)」として、その処を得させようという皇室の祈りが、我が国の歴史を貫いてきたからです。
LGBTの人々も大御宝です。彼らが「私はこの日本国に生まれて幸せだった。差別されたことなんかありません」と言える国柄を守らなければなりません。ネット上でもこんなコメントがあり、賛同意見が相次ぎました。
すべての人々が、それぞれの悩みを抱えつつも、処を得て助け合い、皆で社会を支える。それが真の多様性尊重であり、誰一人取り残さない我が国の伝統的理想です。それを思い出すことが、社会の分断対立を目論む文化マルクス主義者たちへの最強の防衛策なのです。
(文責:伊勢雅臣)
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■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
・産経新聞R050405「LGBT法案、当事者からも慎重論『本当の声、聞いて』」
・福田ますみ『ポリコレの正体 「多様性尊重」「言葉狩り」の先にあるものは』★★★、方丈社、R03