『まともじゃないのは君も一緒』

吉高由里子主演『婚前特急』(2011年公開)による衝撃の監督デビューから早幾年の前田弘二監督。この間、『夫婦フーフー日記』(2015年公開)、『セーラー服と機関銃 -卒業-』と作品を定期的に出すが『婚前特急』のインパクトが強すぎてピリッと来なかった。そして、今回の『まともじゃないのは君も一緒』だが、『婚前特急』以来、ようやく前田弘二監督、高田亮脚本によるイキイキとしたラブコメディを堪能!!

 

 

コミュニケーション能力が低い予備校教師の大野康臣を恋愛経験こそはないがコミュ力と女子高生目線の女ゴコロで康臣をコーチングする女子高生の秋本香住。本来の予備校教師と女生徒の関係が逆転し、しかも大人の策士顔負けのあの手この手で恋愛に奥手な大人を指南する女子高生という図、会話が実に痛快。

 

その指南の結果が思わぬ方向に行く面白さと、後半・終盤の修羅場のシーンに二転三転の展開と脚本が秀逸。中盤から終盤における二組のカップルを絡ませる手法は成瀬巳喜男監督の『驟雨』(しゅうう:1956年公開)にも通じるものがある。

また、香住も康臣も悪口や観察する対象者にズイッと行く大胆で、思い切りがいい行動が多い。こうしたテンポの良さ・大胆さは『婚前特急』に通じるな、と思ったら企画の段階で『婚前特急2』というタイトル案があったぐらいだから、ずば抜けた面白さに納得。

テーマに「普通」、「恋愛」、「結婚」など決して目新しさはないが、より深く掘り下げ、監督や脚本らの意見も作品を通して見える。

 

 

数々の長ゼリフやコメディエンヌ演出に主演女優の清原果耶のポテンシャルを最大に引き出し、不器用な青年を演じた成田凌と見事に噛み合っている。それと小泉孝太郎が演じたちょいワルな男もこれまでの小泉孝太郎では見れなかった一面を垣間見る。ベストは『婚前特急』と言いたいが、それに続く前田弘二監督・高田亮の脚本による傑作ラブコメである!!

 

 

評価:★★★★★

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