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アウシュヴィッツの生還者

視聴:2023年8月@新宿武蔵野館

史実に基づくドラマ。

奇をてらうことのないド真ん中なドラマ。このような史実があったことに驚きます。多くを語らない主人公の過去。過酷な選択を迫られ続けた過去。トラウマになってしまった音やシチュエーション。生気のない表情にも魅力を醸し出す主役のベン・フォスター。

このテーマでずっとスクリーンに目を向けさせてくれるのは奇跡です。ずるくない真摯なテクニックで派手でもなく、嫌みもなく、ひとりの男の生きざまを追わせてくれます。

時間軸が3本あります。収容所、渡米後のボクサー時代、家族で青果店を営む時代。この時間とエピソードのつむぎ方が素っ気なくも丁寧。終盤は泣かせに行かない抑えた展開で、観客側が感情をジワリと噛みしめることになります。

明かすことのなかった、友人の存在についてのエピソード。これがダメ押しの感情の波となり、主人公のドラマを色濃く訴えます。見せ方はオフビートですが、描いている中身は衝撃があり、テーマへの向き合い方や観客への信頼感の現れだと思います。

90分ぐらいで描きそうなところを、120分越えでガッチリ語る良質なドラマでした。

▲ベン・フォスター出演。

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